講話民事裁判実務の要諦―裁判官と代理人弁護士の方々へ
タイトル:講話民事裁判実務の要諦―裁判官と代理人弁護士の方々へ
発刊日:2024年1月15日 第1版第1刷発行
40年にわたる民事裁判官としての経験・法曹として培ってきた素養を基に、
民事裁判実務の具体的手法にとどまらない、司法に携わる者としての矜持を伝える若手・中堅の法曹に向けた一冊。
「手続の基礎」「事実認定」「法解釈」「判決書」「和解」まで網羅。
裁判官、代理人弁護士にとって訴訟実務の参考やヒントとなることを実例を基に詳細に解説。
判例時報好評連載、待望の書籍化。
書籍化に伴い、本文の加筆・補足資料の追加などによりバージョンアップ。
目 次
序章 はじめに
第1章 手続の基礎
第1節 訴訟物の特定
1 複数債権の請求
2 1筆の土地・1棟の建物の一部
第2節 証拠調べ
1 書証(文書)の提出
⑴ 文書の単複と成立の認否の在り方
⑵ 偽造文書としての提出
⑶ カルテ等の外国語の文書の提出
2 準文書の提出
⑴ 録音テープ等
⑵ 写 真
⑶ ビデオテープ等の録画物の静止画
3 証拠説明書の記載の留意点
⑴ 「写し」の提出
⑵ 電磁的記録の文書
⑶ 偽造文書
⑷ 原本の作成者等の記載の重要性
⑸ 立証趣旨の記載の重要性
⑹ 手続上の写しによる証拠説明の補充
⑺ 書証の写しの郵送による送付
⑻ その他の要望事項
4 文書送付嘱託等
⑴ 文書送付・調査嘱託の申立て
⑵ 記録提示の申出
第2章 民事訴訟の目的と裁判所の釈明の意義
第1節 民事訴訟の目的と裁判所の役割
1 民事訴訟の目的
2 裁判所の役割
第2節 裁判所の釈明の意義
1 基本的な最高裁判例
2 弁論主義との関係
3 積極的釈明の重要性
4 訴訟物の法律構成の釈明
第3節 現行法における釈明の位置付けと新提起の議論
1 現行法における釈明の位置付け
2 現行法下における新提起の議論
第3章 事実認定の手法及び在り方
第1節 民事事件の事実認定の難しさと対策
1 証拠が心証に結びつく過程による原因の分析
⑴ 証拠方法
⑵ 証拠資料
⑶ 証拠原因
2 人為的ミスを無くす対策
3 対策の具体的手法
⑴ 仮説の効用
⑵ 記録の読み方・証拠の見方
⑶ 一期一会の精神
⑷ 手控えの工夫
⑸ 経験則の蓄積
第2節 書証重視論について
第3節 心証の取り方
1 客観的な(動かし難い)証拠と事実
2 不利益陳述等
3 弁論の全趣旨
第4節 心証の程度
1 心証の程度の相対性
2 規範的観点による認定判断
3 規範的な認定判断を要する一般的な例
4 損害額の証明度の軽減
第5節 事実認定の留意点
1 現在の詳細な供述による過去の動かし難い事実の軽視の危険
2 処分証書の軽視の危険及び疑問の解消の重要性
3 口頭による合意認定の誤り
4 先入観の排除の必要
5 専門的意見の慎重な評価の必要
6 固い認定により事案の真相(事案の筋)を見誤る危険
7 事実認定の核となる「事案の筋を構成する事実」の認定の必要性
8 立証責任の再確認と検討の必要性
第4章 判決書の手法及び在り方
第1節 新様式の判決書の留意点
1 事案の概要欄の機能
2 争点と請求、争点の判断と主文の各結び付きの必要性
3 前提事実と認定事実のバランスと判断
第2節 認定事実とこれに基づく判断の重要性
1 認定事実と判断型と、直接証拠比較判断型
2 認定事実と判断型の本質
⑴ 客観的事実認定の探求
⑵ 認定事実の省略の危険
⑶ 争点ごとの事実認定の分断の危険
第3節 認定事実と判断における留意点
1 真の争点の見過ごしの有無の検討
2 控訴を誘発する主張排斥の理由と紛争解決の目的
第5章 法解釈の手法及び在り方
第1節 方法論
1 基本書の復習
2 判例・学説の調査
3 自分で考える
第2節 具体例
1 先例のない法律問題の解釈
⑴ 拘置中の死刑囚の死刑の時効消滅
⑵ 川崎市ヘイトデモ禁止仮処分の発令
2 自分で考える─基本から考える
⑴ 製造物責任法における欠陥の要件事実
⑵ 複製権と翻案権の関係及び侵害の基準
⑶ 休業による労務提供不能の場合の賃金請求の立証責任
3 正義・公平の理念(条理)の観点
⑴ 小学校女性教諭殺害後自宅床下遺体隠匿と除斥期間の適用
⑵ いじめ自殺訴訟
第3節 当事者主義の活用
第6章 和解の手法及び在り方
第1節 最良の解決と、全人格と誠実さ
第2節 和解の利点
第3節 裁判所の公的見解の明示の要望に対する方策
1 裁判所の所見の表記と公表
2 当事者の意見の表明の調書記載
第4節 和解の具体的な手法
1 訴訟上の和解の位置づけ
2 裁判所の立場から
3 道南じん肺訴訟の和解を終えて─信念をもって
4 代理人弁護士の立場から
第5節 和解条項上の注意点
第6節 民事訴訟はだれのためにあるのか
1 和解勧告の不実施に対する不満
2 人証調べの不実施に対する不満
第7章 裁判所からの代理人弁護士への要望
第1節 誠実な主張・立証活動
第2節 本人との距離と法廷での態度
第8章 最後に─自戒をこめて
資料編