判例時報 No.2080
平成22年8月21日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
老朽化マンション(特に団地)の建替えを巡る諸問題と課題
――千里桃山台事件(最判平成21・4・23本誌二〇四五号一一六頁)の検討を通じて
・・・・・・吉田邦彦
現代型取引をめぐる裁判例(260)・・・・・・升田純
海外刑法だより(303)
執筆三〇〇回に寄せて――愚直、わが道を行く(4) ・・・・・・森下忠
判決録
◎市議会の議員に交付する政務調査費の使途基準を調査研究に必要な経費と定めるかすみがうら市議会政務調査費の交付に関する規則(平成二七年かすみがうら市規則第五号。平成二〇年かすみがうら市規則第一七号による改正前のもの)の下で、議員らが交付を受けた政務調査費から物品を購入するためにした支出につき、その支出が調査研究のための必要性に欠けるものであったことをうかがわせる上告人主張の事実の存否等について十分に審理することなく、単に上記物品の品名を認定するなどしただけで直ちに上記支出が上記使途基準に反するものとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判平22・3・23)
○競売手続における建物の売却につき借地権の不存在を理由とする畷庇担保責任が否定された事例
(大阪高判平21・5・28)
○賃料の滞納を理由とする賃貸借契約の解除に対して賃借地上の建物の抵当権者が代払許可を得て滞納賃料の全額を供託するに至った場合の当該解除の効力(消極)
(名古屋高金沢支判平21・10・28)
▽賃料額に関する不動産鑑定評価書を作成した不動産鑑定士に対する文書提出命令の申立てが、賃貸事例に関する資料の一部が職業の秘密に該当するものであるとして、却下された事例
(東京地決平22・5・11)
▽弁当宅配業のフランチャイジーにフランチャイザーに対するフランチャイズ契約終了後の競業避止義務違反があるとして、フランチャイザーのフランチャイジーに対する同一市内における三年間の同種業務の差止め及びロイヤリティー相当額の三人か月分の約定損害金支払の請求が認容された事例
(大阪地判平22・1・25)
▽ホテル経営業者が、建築確認申請に添付された構造計算善に耐震偽装があることを府の建築主事が看過したため損害を被ったとして求めた、府に対する国家賠償請求が棄却された事例
(京都地判平21・10・30)
▽ 一方的に暴行を受け死亡した被害者の遺族が、警察の喧嘩による死亡事故との誤った発
表により、精神的苦痛を被ったとして求めた国家賠償請求が認容された事例
(松山地判平22・4・14)
○名称を「化粧用パッティング材」とする発明において、発明の解決課題が当業者にとって
自明又は周知であったということはできず、また、引用例その他の刊行物には化粧用パッティング材から剥離される各層にウォータジェット噴射による表面加工を施すことを動機付ける旨の開示又は示唆がないとして、審決の進歩性の判断に誤りがあったとされた事例
(知的財産高判平21・10・22)
〇一 商標「SIDAMO」について、商標法三条一項三号(「その商品の産地又は品質を普通に用いられる方法で表示する商標」)には当たらないが、商標法四条一項一六号(「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」)には当たるとされた事例
二 コーヒー・の輸出入・卸売を業とする者等を会員とする社団法人に商標登録の無効審判請求人適格が認められた事例
(知的財産高判平22・3・29)
▽原告による特許の無効理由回避の主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下された事例(東京地判平22・1・22)
▽大型貨物船(フェリー)が漁労中の小型漁船に衝突し漁船が沈没した海難事故につき、双方の見張り義務違反の過失を認め、その過失割合をフェリー側八〇に対し漁船側二〇を相当として、被害者のフェリー所有者に対する損害賠償請求が認容された事例
(宮崎地判平22・3・12)
▽一 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律九条一項に私法的強行性を肯定する解釈は成立しないとされた事例
二 同条一項二号の継続雇用制度は、六五歳までの安定した雇用機会の確保という同法の目的に反しない限り、各事業主がその実情に応じ、同一事業主に限らず、同一企業グループ内での継続雇用を図ることを含む多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解すべきであり、その場合の賃金、労働時間等の労働条件についても、労働者の希望や事業主の実情等を踏まえた多様な雇用形態を容認していると解するのが相当であるとされ、被告が定めていた六〇歳定年以降の勤務措置は同条一項二号の継続雇用制度に該当しないということはできないとされた事例
(東京地判平21・11・16)
◎殺人、現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第一審判決及びその事実認定を是認した原判決に、審理不尽の違法、事実誤認の疑いがあるとされた事例
(最三判平22・4・27)