判例時報 No.2095
平成23年1月21日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
労働審判方式を取り入れた民事紛争解決方式(L方式)について――民事調停を利用した試行的実施のレポート……浅見宣義
カルテル・入札談合における審査の対象・要件事実・状況証拠partⅢ
多摩談合事件・郵便区分機事件・ポリプロピレン事件東京高裁判決の総合的検討(下)
―-情報交換活動の評価と公取委の事件処理の在り方
……越知保見
現代型取引をめぐる裁判例(270)……升田純
海外刑法だより(308)スペインの陪審制度(上)……森下忠
◆判決録細目◆
▽障害等級二級の認定に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給を受けていた者につき、その後、同等級に該当しなくなり、再び同等級に該当するに至ったとの認定に基づいて社会保険庁長官がした一定期間の障害基礎年金の支給を停止する処分が、当該期間の障害も同等級に該当するとして取り消された事例
(東京地判平20・10・2)
○産院で取り違えられ生物学的な親子関係がない夫婦の実子として戸籍に記載され実親子と同様の生活実体を長期間形成してきた兄に対して、両親の死後、遺産争いを直接の契機として戸籍上の弟らが提起した親子関係不存在確認請求が権利の濫用に当たるとされた事例
(東京高判平22・9・6)
▽送電線切断事故により電力会社からの送電が停止し、列車の運行が一時不能となり、旅客への払戻し等の損失が発生した場合において、事故と損害発生との間の相当因果関係が否定された事例
(東京地判平22・9・29)
▽洋菓子チェーン・フランチャイズ事業のフランチャイザーが消費期限切れ原料使用問題を引き起こした場合について、ブランド価値維持義務違反が認められたものの、損害との因果関係が否定された事例
(東京地判平22・7・14)
▽税理士によるリース契約であっても、「営業のために若しくは営業として」締結されたものかどうかは、当該事業、職務及び取引の実態、物件の活用状況等から個別具体的に判断されるべきであるとされた事例
(大阪地判平21・10 ・30)
▽けん銃、実包を携帯していたとして実刑判決を受けた外国人が、警察の違法なおとり捜査及び警察官の偽証等により実刑判決を受けたとして求めた国家賠償請求について、おとり捜査の違法性は認めなかったものの、警察官の偽証等を認め、賠償請求が一部認容された事例
(札幌地判平22・3・19)
○特許無効理由として、刊行物に記載された引用発明に周知技術を適用して容易に得ることができる発明に、別の刊行物に記載された発明を適用することによって、本件発明を容易に想到することができると主張することは、主張自体失当である
(知的財産高判平22・5・12)
○一 左から順に青系色の長方形、赤色の円及び緑色の二等辺三角形を配置した図形部とその下部に配置した「HASEKO」の文字部分とから成る商標が周知性を有するものであっても、その図形部分のみから成る商標が周知性を有するとは認められないとされた事例
二 左から順に緑色の二等辺三角形、赤色の円及び青系色の逆二等辺三角形を配置した図形部分とその下部に配置した「NANYO」の文字部分とから成る商標並びに当該図形部分のみから成る商標の使用につき、前記一の周知性を有する商標との関係で、役務の出所の混同が生じる具体的なおそれがあるとは認められないとされた事例
(知的財産高判平22・1・13)—
〇一 株主総会決議により株主の地位を奪われた株主の当該決議取消訴訟の原告適格
二 株主総会決議により株主の地位を奪われた株主が控起した当該決議取消訴訟について、決議後の会社の吸収合併による消滅等により訴えの利益が消滅したとされた事例
(東京高判平22・7・7)
○会社の組合員に対する職能資格等級の格付け及び人事考課の査定の不当労働行為該当性が問題となった事案において、活発な組合活動を行っていた原告ら六名が同期・同性・同学歴者の中で著しく低い職能資格等級と賃金に置かれている場合には、経験則上、組合活動を行っているがゆえに不合理な人事考課がなされたのではないかとの推認が働き、会社としては、当該推認を揺るがす立証(反証)が必要となるところ、かかる反証がないとして、不当労働行為の成立が認められた事例―-昭和シェル石油昇給・昇格差別訴訟控訴審判決
(東京高判平22・5・13)
◎警察署の塀の上部に上がった行為について建造物侵入罪の成立が認められた事例
(最一決平21・7・13)
◎北海道開発庁長官が、下部組織である北海道開発局の港湾部長に対し、競争入札が予定される港湾工事の受注に関し特定業者の便宜を図るように働き掛ける行為について、賄賂罪における職務関連性が認められた事例
(最一決平22・9・7)
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律一八条の二第一項の意義
(福岡高判平22・8・5)
◆最高裁判例要旨(平成二二年一〇月分)