判例時報 No.2476*
2021年5月21日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
海外判例研究──第11回──
大林 啓吾 カライスコス アントニオス
胡 光輝 ダン ローゼン・西口 元
小池信太郞 仲道 祐樹
■書評
山浦善樹『お気の毒な弁護士』
評者 加藤新太郎
■判例特報
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰と司法審査
──岩沼市議出席停止処分事件(最大判令2・11・25)
■特集
岩沼市議出席停止処分事件
①岩沼市議会議員出席停止処分事件に関する最高裁
大法廷判決の意義……人見 剛
②岩沼市議会議員出席停止処分取消等請求事件
──昭和35年最判の判例変更に至る経緯と今後の課題……十河 弘
■判決録
<民事> 4件
<知的財産権> 1件
<刑事> 3件
◆記 事◆
海外判例研究──第11回──
・憲法
トランプ大統領が下院の議席数を算定する際に国勢調査の数から不法移民の数を除こうと企図したことの違法性が争われた事例……大林啓吾
不法移民の援助を禁止する法律違反の罪で逮捕された刑事事件において、当事者の申立てがなかったにもかかわらず原判決(連邦高裁)が表現の自由の問題に関するアミカスを募って過度広範ゆえに無効としたのは裁量を逸脱しているとした事例……大林啓吾
・民法
ウィーチャット(微信)投稿による名誉毀損事件……胡 光輝
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の幼児の「常居所」の認定については、両親の共有の意図は必要ではなく、当該事案の「状況の全体(totality of circumstances)をみて決めるものであるところ、控訴裁判所は、幼児の「常居所」についての第1審裁判所の判断が明らかに間違っていない限り、その判断に従わなければならない……ダン ローゼン・西口 元
・消費者法
タクシー利用者とタクシー運転手をつなぐスマートフォン・アプリは、情報社会サービスの域を超えた運輸サービスを提供するものであるとはいえない……カライスコス アントニオス
・刑法
交際相手等から受け取った自画撮り画像を流出させる行為……小池信太郎
他人のデビットカードを用いた非接触型決済による商品購入の可罰性……仲道祐樹
◆書 評◆
山浦善樹『お気の毒な弁護士』
評者……加藤新太郎
◆判例特報◆
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰と司法審査
──岩沼市議出席停止処分事件(最大判令2・11・25)
◆特 集◆
岩沼市議出席停止処分事件
①岩沼市議会議員出席停止処分事件に関する最高裁大法廷判決の意義……人見 剛
②岩沼市議会議員出席停止処分取消等請求事件
──昭和35年最判の判例変更に至る経緯と今後の課題……十河 弘
◆判決録細目◆
民 事
◎請負人である破産者の支払の停止の前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が、破産法72条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たり、前記違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例
(最三判令2・9・8)
◎財産の分与に関する処分の審判において当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき当該他方当事者に分与しないものと判断した場合に家事事件手続法154条2項4号に基づきその明渡しを命ずることの許否
(最一決令2・8・6)
▽消費者庁が原告名を明示した消費者被害に関する注意喚起情報を同庁ホームページ上に公表し、当該消費者被害を生じさせた預金口座が原告名義の預金口座であるとの通知を消費者庁から受け取った金融機関が、同口座につき預金取引停止の措置を講じ、これを継続していることは、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律3条1項に基づく措置として相当なものであるとされた事例
(東京地判令2・8・6)
▽1 検察官の再審請求権限不行使の違法を理由とする国家賠償請求を棄却した事例
2 被告人がハンセン病にり患していることを理由として国立ハンセン病療養所等を開廷場所としたことが裁判所法69条2項に違反し、同開廷場所の指定及びこれに基づく刑事事件の審理が、被告人がハンセン病にり患していることを理由とする合理性を欠く差別に当たり、被告人の人格権を侵害したものとして、憲法14条1項、13条に違反するとした事例
(熊本地判令2・2・26)
知的財産権
○意匠に係る物品を検査用照明器具とする登録部分意匠に類似する意匠を備える製品を製造等して意匠権を侵害したとして、製品の製造、販売等の差止請求、及び損害賠償請求を一部認容した原判決を維持し、控訴を棄却した事例
(大阪高判令1・9・5〈参考原審:大阪地判平30・11・6〉)
刑 事
○被告人の自白調書について、客観的事実との整合性と供述経過の両面から問題点を指摘してその信用性を否定し、自白調書に基づいて赤信号を殊更無視したとして危険運転致死罪の成立を認めた1審判決を破棄して、予備的訴因である過失運転致死罪の成立を認めた事例
(大阪高判令2・7・3〈参考原審:大阪地判令1・10・3〉)
○1 生後2か月の乳児が急性硬膜下血腫等の傷害を負い脳機能不全により死亡したのは、被告人(乳児の祖母)による揺さぶり等の外力によるものではなく、内因性の脳静脈洞血栓症とDIC(播種性血管内凝固症候群)であった可能性が否定できないなどとして、原判決(懲役5年6月)を事実誤認を理由に破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(①事件)
2 生後1か月半の乳児が回復見込みのない遷延性意識障害を伴う急性硬膜下血腫等の傷害を負ったのは、被告人(乳児の母)による揺さぶり等によるものではなく、長男に落下させられて生じた可能性を否定できないなどとして、原判決(懲役3年・5年間執行猶予)を事実誤認を理由に破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例(②事件)
(①大阪高判令1・10・25〈参考原審:大阪地判平29・10・2〉、
②大阪高判令2・2・6〈参考原審:大阪地判平30・3・13本誌2395号100頁〉)
※訂正箇所
●本誌18頁・1段・12行目(情報欄3行目)
誤 …刑集74巻6号1643頁登載
正 …民集74巻6号1643頁登載
●本誌143頁・3段・1行目、同4段9行目
誤 …喜多山
正 …嘉多山