判例時報 No.2462
2021年1月11日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
コロナ禍社会における法的諸問題(6)
コロナ禍と民事司法……園尾隆司
■書評
三木浩一=山本和彦=松下淳一=村田渉編
『民事裁判の法理と実践―加藤新太郎先生古稀祝賀論文集』
評者 伊藤 眞
■判決録
<民事> 5件
<刑事> 3件
◆記 事◆
コロナ禍社会における法的諸問題(6)
コロナ禍と民事司法……園尾隆司
◆書 評◆
三木浩一=山本和彦=松下淳一=村田渉編
『民事裁判の法理と実践―加藤新太郎先生古稀祝賀論文集』
評者……伊藤 眞
◆判決録細目◆
民 事
◎強制執行の申立てをした債権者が債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することの許否
(最三判令2・4・7)
○インターネット上のウェブサイトを運営するプラットフォーマーを被告として原告の逮捕歴を記載した当該ウェブサイト上の投稿記事の削除を請求した事案について、事実を公表されない法的利益が投稿記事を一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情よりも優越することが明らかであるとはいえないとして、削除請求が棄却された事例
(東京高判令2・6・29〈参考原審:東京地判令1・10・11掲載〉)
▽2筆の土地にまたがって建てられた1棟のマンションについて、その専有部分の区分所有者がこれらの敷地のうちの1筆についてのみ借地権を有する場合に、借地権が設定されていない敷地の所有者が、当該区分所有者に対し、建物の区分所有等に関する法律10条に基づく区分所有権の売渡請求権を行使することができるとされた事例
(東京地判令1・12・11)
▽被告人毎に別々に起訴された共犯刑事事件につき、同一の弁護士が、同一の被害者参加人のために各事件の国選被害者参加弁護士に選定された場合であっても、各事件は、国選被害者参加弁護士の事務に関する契約約款の別紙として定められた報酬及び費用の算定基準5条1項の「同一の事件」に該当するということはできないから、別個に国選被害者参加弁護報酬を算定すべきであり、実際そのような算定によって弁護士が支払を受けた報酬は、民法703条の「法律上の原因」を欠くということはできないとした事例
(千葉地判令2・6・30)
▽破産者が自動車販売会社から購入した自動車の代金を立替払して破産者に対する立替金等債権を有していた信販会社が、契約上帰属清算が予定されている自動車に留保した所有権に基づいて破産者から自動車の引渡しを受けて、自動車を査定し、破産者に不足額を通知し、その後第三者に自動車を売却した場合において、破産者への不足額の通知が破産法162条1項の「債務の消滅に関する行為」に該当するとされた事例
(大阪地判令1・12・20)
刑 事
○1 公判前整理手続における1審弁護人の主張を被告人の主張が変遷したことを示す証拠として用いた1審裁判所の措置は、違法ないし著しく相当性を欠くが、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとはいえないとされた事例(①事件)
2 火災の原因が被告人による放火か否かが争われた放火事件において、公判前整理手続の争点整理の結果や証明予定事実記載書に記載がなく、検察官が冒頭陳述や論告で述べなかった事実を根拠に被告人の放火行為を認定しても、被告人にとって不意打ちとなるものではなく、1審裁判所において争点を顕在化させるための釈明をすべき場合にも当たらないとされた事例(②事件)
(①大阪高判平25・3・13〈参考原審:神戸地判平24・7・20掲載〉、②東京高判平28・4・20)
▽1 森友学園等の理事長だった被告人X1とその業務を補佐していた被告人X2(X1の妻)に対し、被告人X1については、公訴事実どおり国、大阪府・市からの補助金詐欺及び詐欺未遂の各事実(実被害総額約1億7699万円)を認定した上で懲役5年に処し、被告人X2については、前記各事実のうち一部を認定した上で、懲役3年執行猶予5年に処した事例(求刑は各懲役7年)
2 欺罔行為による補助金等の詐取については、詐欺罪(刑法246条1項)が成立し、補助金等不正受交付罪(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項)は成立しない
3 検察官は、首相(当時)の妻と親しくしていた被告人両名を標的として起訴するために、被告人両名と共謀したとされる者を違法な司法取引をして協力させたとして、公訴棄却及び違法収集証拠排除を求めた弁護人の主張が排斥された事例
──森友学園補助金詐欺事件
(大阪地判令2・2・19)