バックナンバー

判例時報 No.2452〔評論 No.739〕
             2020年10月1日 号 定価:1470円 (本体価格:1336円+10%税)

◇第4回判例時報賞 結果発表
 
<最新判例批評>
 林 誠司  宮下 摩維子  淺見 節子  小西 暁和
 
許可抗告事件の実情
 ──令和元年度──……小林宏司・浅野良児
 
刑法判例と実務
 ──第58回 過失犯無罪判例の構造──……小林憲太郎
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 4件
<労働> 1件
<刑事> 4件


◇第4回判例時報賞 結果発表

◆記 事◆

許可抗告事件の実情
 ──令和元年度──……小林宏司・浅野良児

刑法判例と実務
 ──第58回 過失犯無罪判例の構造──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

行 政

◎差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない場合における、将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟の適否

(最一判令1・7・22)

民 事

◎民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義

(最二判令1・8・9)

○本人の長男が後見開始の申立てをした事案において、原審は、本人につき、後見開始相当との診断書があるものの、同診断書は一方で発語不能としながら、他方で言語による意思疎通が可能ともしており、明らかな矛盾があることなどから、その信用性に疑義があり、後見開始相当の常況にあるか否かを判断するためには鑑定を実施する必要があるが、本人から鑑定に対する協力が得られる見込みがないとして申立てを却下したのに対し、抗告審は、前記診断書の矛盾した記載は単なる誤記に過ぎず、同診断書やHDS︱Rの結果等によれば、本人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあると認められるとして原審を取り消したうえ、成年後見人の選任につき、更に審理を尽くさせる必要があるとして、審理を差し戻した事例

(大阪高決令1・9・4〈参考原審:京都家審令1・7・4掲載〉)

○人格権に基づき、恐喝事件及び同和利権問題に関与したこと並びに元暴力団構成員であったことが記載されたインターネット検索結果を削除するよう求める請求が、認められなかった事例

(大阪高判令1・5・24〈参考原審:大阪地判平30・7・26掲載〉)

▽約1年間にわたり著しい長時間労働に従事していた調理師が、劇症型心筋炎を発症して最終的に死亡したことについて、長時間労働による過労状態と死亡との間の相当因果関係を肯定して使用者及びその代表者に対する損害賠償請求を認容した事例

(大阪地判令2・2・21)

労 働

○法定年次有給休暇の日数を超える日数の有給休暇が与えられている場合において使用者が法定年次有給休暇の部分とそれ以外の部分とを区別せずにした時季の指定の効力(消極)
(東京高判令1・10・9〈参考原審:東京地判平31・3・1掲載〉)

刑 事

◎1 刑法218条の不保護による保護責任者遺棄罪の実行行為の意義
2 子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について、被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
3 裁判員の参加する合議体で審理された保護責任者遺棄致死被告事件について、訴因変更を命じ又はこれを積極的に促すべき義務がないとされた事例

(最二判平30・3・19)

◎詐欺罪につき実行の着手があるとされた事例

(最一判平30・3・22)

○少年が店舗で医薬品等を2回にわたり万引きしたという窃盗保護事件において、立件されていない大麻使用に関する事情を非行事実とほぼ並列的に掲げて要保護性を検討した上で少年を第1種少年院送致とした原決定につき、非行事実ではないが処分に実質的に大きな影響を与える可能性のある大麻使用に関する事情を、要保護性の判断として許容される限度を超えて、あたかも非行事実であるかのように扱ったものであり、法令違反があるとしつつ、その法令違反は決定に影響を及ぼすものとまではいえないとした事例

(大阪高決令1・9・12)

○ゲーム依存状態にあった当時14歳1か月の少年が、ゲーム場所を確保しようと考え、空き家であるかを確認するために居宅に侵入したという住居侵入保護事件において、少年を児童自立支援施設送致とした原決定につき、収容処遇となると少年が希望する来年度の高校進学が相当に困難になること、特に悪質な事案ではないことなどを指摘し、基本的に社会内処遇を選択するのが相当として、これを取り消した事例

(広島高決令1・8・28)

判例評論

31 統合失調症により精神科医の診療を受けていた患者が中国の実家に帰省中に自殺した場合において、医師に患者の自殺を防止するために必要な措置を講ずべき義務がないとされた事例

(最三判平31・3・12)……林 誠司

32 日本における仲裁判断取消審において国内民事訴訟手続の規律ではなく、国際的に通用する解釈を適用すべきとした事例

(東京高決平30・8・1)……宮下摩維子

33 引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には、当業者は、特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、これを引用発明として認定することはできないとして、進歩性が肯定された事例

(知財高判平30・4・13)……淺見節子

34 処遇勧告に関する抗告の適否

(大阪高決平31・3・15)……小西暁和

Copyrightc 株式会社判例時報社 All Rights Reserved.

PAGE TOP