判例時報 No.2448〔評論 No.738〕*
2020年9月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
山崎友也 西上 治 直井義典 鎌野邦樹
山下義昭 加藤新太郎 福島 至
民法理論のいま──実務への架橋という課題(4)
「錯誤」理論の新たな展開
──改正法によって錯誤 制度はどのように変わったか②……近江幸治
特集「検察庁法改正法案」が意味するもの
⑴検察庁法改正問題について……木村草太
⑵「検察庁法改正」を振り返る……亀井源太郎
刑法判例と実務
──第57回 各論と期待可能性の周辺──……小林憲太郎
■判決録
<民事> 8件
◆記 事◆
民法理論のいま──実務への架橋という課題(4)
「錯誤」理論の新たな展開
──改正法によって錯誤 制度はどのように変わったか②……近江幸治
特集「検察庁法改正法案」が意味するもの
⑴検察庁法改正問題について……木村草太
⑵「検察庁法改正」を振り返る……亀井源太郎
刑法判例と実務
──第57回 各論と期待可能性の周辺──……小林憲太郎
◆判決録細目◆
民 事
○性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が、男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において、原審は、申立人が変更を求める女性名が、通称として永年使用され社会的に定着しているとは認められず、申立人がホルモン治療等を行わなかったなどの通院治療の状況等を併せ考慮し、名を変更することにつき正当な事由があるとは認められないとして申立てを却下したのに対し、抗告審は、申立人が心療内科・精神科に約1年半通院して、医師2名から性同一性障害の診断ガイドラインに沿った診断の結果、性同一性障害であることの診断を得ていることなどから、正当な事由があると認められると判断し、原審を取り消して申立てを許可した事例
(大阪高決令1・9・18〈参考原審:大阪家審令1・7・22掲載〉)
○1 タイヤの製造工程で使用するタルクに含まれるアスベストなどが原因で従業員らが肺がんや中皮腫を発症したとして、タイヤ製造業者の当該従業員らに対する安全配慮義務違反及び不法行為が認められた事例
2 使用者が従業員らに対して負う損害賠償債務につき消滅時効を援用することが権利濫用に該当するとされた事例
(大阪高判令1・7・19〈参考原審:神戸地判平30・2・14本誌2377号61頁掲載〉)
○通信教育等を目的とするY社において管理していたXの個人情報について、Y社がシステム開発を委託していたD社の業務委託先の従業員が不正に取得して外部に洩えいしたことは、情報管理義務のあるY社とD社の共同不法行為に当たり、これによるXの慰謝料として1000円が相当と認められた事例
(大阪高判令1・11・20〈参考上告審:最二判平29・10・23本誌2351号7頁掲載〉)
○河川洪水による流域住民の浸水被害につき、利水ダムの設置者にダム設置当時の河床の高さまで浚渫する義務はない等として、ダム設置者の流域住民に対する民法709条に基づく責任が否定された事例
(仙台高判平31・3・15〈参考原審:福島地会津若松支判平30・3・26本誌2391号36頁掲載〉)
○1 遺産分割協議が無効となり、改めてされた遺産分割審判が確定した場合において、一部の相続人が、相続開始から遺産分割までの間、相続不動産から生じた賃料(果実)を収取したときに、悪意の占有者として法定相続分に応じた返還請求権が認められた事例
2 一部の相続人に相続税負担額が過納になった場合、当該過納部分を損失、他の相続人の過少納税部分を利得ととらえることを前提としても、これらの間には因果関係がなく、不当利得返還請求権は認められないとされた事例
(高松高判平31・2・28〈参考原審:高松地判平30・5・15掲載〉)
▽ベッドからの転落を防止するための体幹抑制ベルトを装着されていた高齢の入院患者が、体動等も少なくなったため装着を解除されたときにベッドから転落して急性硬膜下血腫等を受傷し、脳外科手術後に転医したが、寝たきり状態になり、最終的に心不全で死亡したことについて、担当医師らに体幹抑制ベルトの装着継続や常時見守りを怠った過失及び頭部CT検査等の遅延の過誤があるとはいえないとされた事例
(東京地判令1・8・29)
▽1 弁護士が第三者の代理人として刑事告訴等をした行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
2 弁護士が第三者の代理人として訴えを提起した行為について、弁護士の不法行為責任を否定した事例
(東京地判令1・10・1)
▽1 住宅等の賃貸借契約(原契約)に基づく賃料等債務に係る保証委託契約において、一定の要件の下で賃借人が賃借物件の明渡しをしたものとみなす権限を受託保証人たる家賃債務保証業者に付与し、賃借物件内の動産類を賃貸人及び家賃債務保証業者が任意に搬出・保管することに賃借人が異議を述べない旨定める条項が、消費者契約法8条1項3号に該当するものとされた事例
2 前記保証委託契約において、受託保証人である家賃債務保証業者に原契約を無催告解除する権限を付与する条項及び家賃債務保証業者による原契約の無催告解除権の行使について、賃借人等に異議がないことを確認する旨定める条項などが、消費者契約法8条1項3号又は10条後段に該当しないものとされた事例
(大阪地判令1・6・21)
判例評論
24 在外邦人国民審査権訴訟第1審判決
(東京地判令1・5・28)……山崎友也
25 漁業権を管轄する行政庁である県知事が属する行政主体である地方公共団体が、国に対し、漁業権の設定されている漁場において規則により必要とされる県知事の許可を受けずに国により岩礁破砕等行為が行われるおそれがあると主張してした同行為の差止めを求める訴え等が、裁判所法3条1項の法律上の争訟に当たらず不適法であるとされた事例
(福岡高那覇支判平30・12・5)……西上 治
26 所有権留保の効力が集合動産譲渡担保に優先するとされた事例
(最二判平30・12・7)……直井義典
27 団地型マンションの一括高圧受電方式導入決議に基づく個別電力供給契約の解約の可否と不法行為責任の認否
(最三判平31・3・5)……鎌野邦樹
28 被相続人が銀行預金口座開設のため銀行に提出した印鑑届書に関する情報は相続人等の個人情報には当たらないとされた事例
(最一判平31・3・18)……山下義昭
29 弁護士会照会に対する報告義務確認請求の確認の利益
(最二判平30・12・21)……加藤新太郎
30 死刑確定者が吸取紙への書き込み等の行為をしたことが遵守事項違反として拘置所長等から懲罰等の措置を受けたことにつき、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
(最一判平31・3・18)……福島 至
※訂正箇所
●評論148頁・2段・15行目
誤 …本判決と平成23年は、
正 …本判決と平成23年東京地判は、