判例時報 No.2443*
2020年7月11日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
特集 科学と裁判
序文……大塚 直
⑴医学の不確実性と医療過誤判例……米村滋人
⑵訴訟と科学──その実務的対応……加藤新太郎
刑法判例と実務
──第55回 損壊の概念の周辺──……小林憲太郎
■判決録
<行政> 1件
<民事> 8件
<刑事> 1件
◆記 事◆
特集 科学と裁判
序文……大塚 直
⑴医学の不確実性と医療過誤判例……米村滋人
⑵訴訟と科学──その実務的対応……加藤新太郎
刑法判例と実務
──第55回 損壊の概念の周辺──……小林憲太郎
◆判決録細目◆
行 政
○1 県知事による沖縄防衛局に対する公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認を取り消す処分が、行政不服審査法に基づく国土交通大臣の裁決により取り消された場合において、当該裁決が地方自治法251条の5第1項の訴訟の対象となる「国の関与」に当たらないとして、同裁決の取消しを求める同項の訴えを却下した事例
2 公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認を取り消す処分は、沖縄防衛局が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となった処分に当たらず、同処分には行政不服審査法の規定が適用されるとした事例
3 県知事から事務の委任を受けた機関が行った処分に対する行政不服審査法に基づく審査請求について、同機関の処分権限が委任の終了に伴い消滅しているときは、県知事が処分を行った機関の立場を承継しており、当該処分は地方自治法255条の2第1項1号にいう「都道府県知事の処分」に当たり、当該処分に係る事務を規定する法律を所管する大臣が審査請求をすべき行政庁になるとした事例
(福岡高那覇支判令1・10・23)
民 事
○協議離婚時に公正証書で定めた養育費の額(合計月額15万円)が住宅ローンの支払に関する合意と不可分一体のものとなっており、合意の真の意味は、未成年者らの養育監護に使用される実際の養育費としては、住宅ローン月額支払額10万円相当額を除いた、月額合計5万円を抗告人に支払うことを約するものであるとして、前記公正証書で定めた養育費の減額請求につき、住宅ローンに関する合意と切り離して養育費のみを減額することは相当でないとし、これを認めた原審判を取り消して、申立てを却下した事例
(東京高決令1・8・19〈参考原審:千葉家佐倉支審平31・3・26掲載〉)
○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である抗告人が、母である相手方に対して、子をその常居所地国であるシンガポールに返還するよう求めた事案において、同法28条1項3号(留置についての同意又は承諾)及び同項4号(重大な危険)の各返還拒否事由があると認められることから、子の返還申立てを却下した原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平30・5・18〈参考原審:東京家決平30・2・13掲載〉)
○産婦人科医師が血糖値測定義務に違反したことと生後3日の新生児が低血糖から胃出血・出血性ショックを起こし低酸素性虚血性脳症を発症し脳性麻痺に至ったこととの間に因果関係が認められた事例
(大阪高判平31・4・12〈参考原審:神戸地判平30・2・20掲載〉)
○推定相続人の被相続人に対する暴力を理由に推定相続人の廃除を認めた事例
(大阪高決令1・8・21〈参考原審:大阪家審平31・4・16掲載〉)
○抗告人と相手方が、婚姻後約9年間同居した後別居し、婚姻から約44年後離婚したという事実関係において、夫婦の扶助義務は別居した場合も基本的に異ならず、老後のための所得保障についても同等に形成されるべきであり、本件では、年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような特別な事情があるとはいえないとして、按分割合を0・5とすべきとした事例
(大阪高決令1・8・21〈参考原審:大津家高島出審令1・5・9掲載〉)
▽民法750条及び戸籍法74条1号の各規定は、憲法14条1項、24条、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約又は市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反することが明白であるとはいえず、その改廃等の立法措置を執らない立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例
(東京地判令1・10・2)
▽社会保険労務士が強制執行を免れるために社会保険労務士法人を設立した行為が法人格を濫用したとして、社会保険労務士法人の責任が認められた事例
(東京地判令1・11・27)
▽1 加害行為を行った責任無能力者の両親につき、民法714条1項の法定の監督義務者に当たらないと判断された事例
2 加害行為を行った責任無能力者の両親につき、民法714条1項の法定の監督義務者に準ずべき者に当たらないと判断された事例
(大分地判令1・8・22)
刑 事
○犯人性を争点とする事案において、犯行現場に被告人の眼鏡等が落ちていたこと等の一見して有力な間接事実を認定しながらも、被告人が犯人であると認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした1審判決を維持し、検察官の控訴を棄却した事例
(東京高判令2・1・23〈参考原審:横浜地判令1・5・31掲載〉)
※訂正箇所
●本誌106頁・4段・22行目
誤 …注(4)
正 …注(5)
●同24行目
誤 …注(6)
正 …注(7)