判例時報 No.2433〔判例評論 No.734〕
2020年4月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
尾形 健 篠原 永明 水野 吉章
田中 治 野川 忍
法テラスの破産手続開始申立弁護士費用立替
にもとづく償還請求権の財団債権性
──借金苦による悲劇を繰り返さないために──……伊藤 眞
死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(4)
死刑執行と自由権規約6条4項の保障……福島 至
法曹実務のための行政法入門(24・完)
──行政訴訟⑧等──住民訴訟・行政不服申立て……高橋 滋
刑法判例と実務
──第52回 堕胎罪の周辺──……小林憲太郎
■判決録
<行政> 4件
<民事> 2件
<労働> 2件
<経済> 1件
◆記 事◆
法テラスの破産手続開始申立弁護士費用立替にもとづく償還請求権の財団債権性
──借金苦による悲劇を繰り返さないために──……伊藤 眞
死刑制度論のいま──基礎理論と情勢の多角的再考(4)
死刑執行と自由権規約6条4項の保障……福島 至
法曹実務のための行政法入門(24・完)
──行政訴訟⑧等──住民訴訟・行政不服申立て……高橋 滋
刑法判例と実務
──第52回 堕胎罪の周辺──……小林憲太郎
◆判決録細目◆
行 政
◎死刑確定者が親族以外の者との間で発受する信書につき刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条1項2号所定の用務の処理のために必要とはいえない記述部分がある場合に、同部分の発受を許さないこととしてこれを削除し又は抹消することの可否
(最二判令1・8・9)
◎固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者が当該申出に対する同委員会の決定の取消訴訟において同委員会による審査の際に主張しなかった事由を主張することの許否
(最三判令1・7・16)
○無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律5条1項に基づき公安調査庁長官の観察に付する処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合において、各集団に対してされた同処分の期間を更新する決定は、この両集団を併せて1つの団体と認めることができない場合であっても、各集団について同処分の対象団体と同一性がある団体であると認められるときは、各集団について同処分の期間の更新の要件を満たすものである限り、各集団に対してされた同処分の期間を更新する決定は、その効力が各集団に及ぶものとして適法であるとされた事例
(東京高判平31・2・28〈参考原審:東京地判平29・9・25本誌2363号3頁〉)
〇救急活動記録票に記載された情報のうちの一部が、市情報公開条例で定める非公開事由(利益侵害情報)に該当するとされた事例
(大阪高判令1・5・16〈参考原審:大阪地判平30・11・9掲載〉)
民 事
◎土地改良区が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れる水路への第三者の排水により当該水路の流水についての当該土地改良区の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判令1・7・18)
○1 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、船舶所有者と傭船者との間に買取の合意が成立したとはいえないとされた事例
2 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、船舶所有者と傭船者との間の買取の合意の成否を判断するに当たり、被告の所在地法である準拠法のみならず、傭船契約の準拠法を含めて検討された事例
3 定期傭船契約が解除された場合に、その返船時に残存していた燃料について、不当利得返還請求権が発生することについて、その準拠法を英国法とした事例
(東京高判平31・1・16〈参考原審:東京地判平30・5・9掲載〉)
労 働
▽長期間にわたって1か月当たり250時間を超える時間外労働に従事していた調理師が、ウイルス性の劇症型心筋炎を発症したことについて、業務起因性が認められた事例
(大阪地判令1・5・15)
▽地方公共団体の設置する中学校に勤めていた教員が過重業務等により精神疾患を発症し自殺したことにつき、同中学校の校長の安全配慮義務違反を認めた事例
(福井地判令1・7・10)
経 済
▽農業協同組合が、除名、出荷停止等の処分を受けるなどした組合員からなすの販売を受託せず、あるいは同農業協同組合の集出荷場以外に出荷した組合員から手数料等を収受するなどしていたことが不公正な取引方法12項に該当し私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条に違反する行為であるとされた事例
(東京地判平31・3・28)
判例評論
1 衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める公職選挙法13条1項、別表第1の規定の合憲性
──平成29年衆議院議員選挙投票価値較差訴訟大法廷判決
(最大判平30・12・19)……尾形 健
2 旧優生保護法仙台地裁判決
(仙台地判令1・5・28)……篠原永明
3 1 借上げ公営住宅において、公営住宅法25条2項の通知を欠いても法32条1項6号の明渡し請求をなし得るとされた事例
2 借上げ公営住宅において、事業主体による原賃貸借契約の更新拒絶がなされている場合においても公営住宅法32条1項6号の明渡し請求をなし得るとされた事例
3 借上げ公営住宅において、公営住宅法25条2項の通知を欠く事は禁反言の法理に反するものとはいえず、権利濫用にもあたらないとされた事例
(神戸地判平30・10・17)……水野吉章
4 破産会社の過払金返還債権の確定と更正の請求の可否
(大阪高判平30・10・19)……田中 治
5 定額の業務手当として支給された賃金が、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情から、時間外労働等に対する割増賃金と認められるとされた事例
(最一判平30・7・19)……野川 忍