判例時報 No.2422
2019年12月11日 号 定価:850円
(本体価格:773円+10%税)
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(8)
契約の基本原則、契約の成立、危険負担……野澤正充
海外判例研究──第8回──
大林啓吾 胡 光輝 ダンローゼン・西口 元
仲道祐樹 小池信太郎
大崎事件最高裁決定
──小池決定に正義はあるか──……鴨志田祐美
■判決録
<行政> 2件
<民事> 4件
<知的財産権> 1件
<刑事> 2件
◆記 事◆
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(8)
契約の基本原則、契約の成立、危険負担……野澤正充
海外判例研究──第8回──
・憲法
不道徳な内容やスキャンダラスな内容を商標として登録することはできないとする法律は観点差別に当たり表現の自由を侵害するとした事例──イアンク対ブルネッティ判決……大林啓吾
公有地に第一次世界大戦戦死者追悼の十字架を設置することは政教分離に反するとはいえないとした事件──アメリカ在郷軍人会対アメリカ人道協会判決……大林啓吾
・民法
株式譲渡代金の分割払い契約の解除をめぐる事件……胡 光輝
・独禁法
独占禁止法訴訟において、Apple StoreからiPhoneアプリを購入した消費者は、市場を独占していると主張してAppleを訴えることができると判断された事例……ダンローゼン・西口 元
・刑法
重罪の共謀罪と内心の留保……仲道祐樹
写真データを消去する目的での携帯電話の奪取と不法領得の意思……小池信太郎
大崎事件最高裁決定
──小池決定に正義はあるか──……鴨志田祐美
◆判決録細目◆
行 政
◎死刑確定者において許可を受けずにした吸取紙への書き込み等の行為が遵守事項に違反するとして拘置所長等がした指導、懲罰等の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとされた事例
(最一判平31・3・18)
▽市議会の3議員が、交付された政務活動費を市政報告書の作成及び発送に係る費用に支出したことが、同報告書の内容等に照らして一部違法であり、同議員らは、同市に対し前記違法支出金額から自己資金その他の政務活動費以外の資金を控除した残額に相当する不当利得返還義務を負うとして、同市住民による市長に対する地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求が一部認容された事例
(金沢地判平31・1・21)
民 事
◎相続財産についての情報と個人情報の保護に関する法律2条1項にいう「個人に関する情報」
(最一判平31・3・18)
○警察官が警察官職務執行法に基づき保護の措置をとるに当たり、所持品検査及び自宅への立入りをしたことについて、同法3条1項1号の精神錯乱の状態にある被保護者の承諾がなくとも、許容されるとした事例
(東京高判平30・4・26〈参考原審:千葉地判平29・9・27掲載〉)
○交通事故により軽症の外傷性視神経症を発症した結果、左眼を失明し、これにより極端な運動低下に陥って元々罹患していた糖尿病が増悪し、右足膝下切断という結果が生じた事案につき、左眼失明のみならず右足膝下切断と交通事故との間に因果関係を認めた事例
(東京高判平30・7・17〈参考原審:横浜地判平30・2・13掲載〉)
▽日帰り人間ドックにおいて切除不能進行胃がんを見逃した医療機関が、減量手術を実施するか、化学療法単独の治療を行うかについて、当該手術のガイドライン上の位置づけ、他に取り得る選択肢である化学療法単独治療等を説明しなかった過失があるとして300万円の慰謝料の支払が認められた事例
(東京地判平30・4・26)
知的財産権
▽原告が有する登録商標と同一または類似の被告標章を付したキャラクターグッズを、テーマパークを運営する被告が販売する行為について、被告標章の使用が非商標的使用に該当するとした事例
(大阪地判平30・11・5)
刑 事
◎鑑定等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原々決定及び結論においてこれを是認した原決定にはいずれも刑事訴訟法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
(最一決令1・6・25)
○自動車運転過失致死の事案で、死角の範囲内の安全確認等の注意義務違反の過失と死角の範囲外の安全確認等の注意義務違反の過失を択一的に認定することは、過失の内容が特定されておらず、罪となるべき事実の記載として不十分であり、確信に達しなかった犯情の重い過失を認定するのは「疑わしきは被告人の利益に」の原則に照らして許されず、理由不備の違法があるとされた事例
(東京高判平28・8・25〈参考原審:横浜地判平27・11・16掲載〉)