判例時報 No.2421〔判例評論 No.730〕*
2019年12月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
渡辺 充 大澤慎太郎 羽賀由利子 水島 郁子
松原 英世 古川 伸彦 内藤 大海
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(7)
相殺禁止、弁済(第三者弁済)に関する見直し……深川裕佳
刑法判例と実務
──第48回 放火罪の周辺──……小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(20)
――行政訴訟④――狭義の訴えの利益、執行停止……高橋 滋
■判決録
<行政> 2件
<民事> 5件
<刑事> 1件
◆記 事◆
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(7)
相殺禁止、弁済(第三者弁済)に関する見直し……深川裕佳
刑法判例と実務
──第48回 放火罪の周辺──……小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(20)
―─行政訴訟④―─狭義の訴えの利益、執行停止……高橋 滋
◆判決録細目◆
行 政
◎性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号と憲法13条、14条1項
(最二決平31・1・23)
▽指名型プロポーザルを経た後に、市が廃棄物処理業者との間で随意契約の方法により締結した一般廃棄物収集運搬業務委託契約が、地方自治法234条2項、同法施行令167条の2第1項2号に違反して締結されたものとして、私法上も無効と判断された事例
(奈良地判平30・12・18)
民 事
◎金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売主に留保する旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に前記譲渡担保権を主張することができないとされた事例
(最二判平30・12・7)
◎養親の相続財産全部の包括受遺者が提起する養子縁組の無効の訴えと訴えの利益の有無
(最三判平31・3・5)
○可燃性ガスの爆発事故により百貨店に生じた損害について、都市ガス事業者が、事故発生2日前にガス警報器発報の通報を受け、処理要員を出動させてガス漏えいの有無を点検した際の対応等につき、ガス供給契約上の債務不履行、使用者責任、工作物責任に基づく損害賠償責任を負わないとした事例
(仙台高判平30・6・7〈参考原審:盛岡地判平28・4・22掲載〉)
○1 破産会社からの事業譲渡が、無償行為否認(破産法160条3項)の対象になるとされた事例
2 本来の弁済期が支払不能よりも前に到来する債務に対する期限前弁済が、非義務行為として、偏頗行為否認(破産法162条1項2号本文)の対象になるとされた事例
(大阪高判平30・12・20〈参考原審:大阪地判平30・5・21掲載〉)
▽幼稚園のお泊り保育中に行われた川遊びにおいて、川の増水により園児らが流され、うち園児1名が死亡するなどした事故について、水量や流速の増加により園児らの生命、身体に重大な危険が及ぶ蓋然性につき予見可能性があることを前提として、その危険を防止するための措置を怠った注意義務違反があったとして、園児1名の死亡に関し、当時の園長に対する不法行為に基づく損害賠償請求及び幼稚園を運営する法人に対する使用者責任に基づく損害賠償請求を認めた事例
(松山地西条支判平30・12・19)
刑 事
◎1 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の再抗告事件において同法70条1項所定の理由以外の理由により原決定を取り消すことの可否
2 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による入院決定を受けた対象者からの同法による医療の終了の申立て及び指定入院医療機関の管理者からの退院の許可の申立てを棄却した各原々決定及びこれを維持した各原決定に審理不尽の違法があるとされた事例
(最一決平29・12・25)
判例評論
49 給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について、法定納期限の経過後に当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払いの原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことの可否
(最三判平30・9・25)……渡辺 充
50 再生債務者が再生計画の遂行として減免されなかった部分の債権につき一部弁済をしたことは、当該債権に係る保証人との関係では、減免された部分も含めた通常の主たる債務の一部弁済がなされたものと同視すべきであるなどとして、保証債務全体につき債務の承認として時効中断の効力が生じるとされた事例
(東京高判平29・6・22)……大澤慎太郎
51 離婚無効確認訴訟の国際裁判管轄
(東京高判平30・7・11)……羽賀由利子
52 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは、労働契約法20条の「その他の事情」として考慮される事情に当たるとした事例
(最二判平30・6・1)……水島郁子
53 1 母親が乳児に対し、身体を揺さぶるなどして頭部に衝撃を与える暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせたと認められた事例(事件①)
2 男性が自宅で幼児の頭部に強い衝撃を与え、急性硬膜下血腫、脳腫脹の傷害を負わせて死亡させたとの公訴事実につき、右傷害が他者の故意行為によって生じたとは認められないとした事例(事件②)
3 乳児の死因は頭部に意図的な強い回転性外力が加えられた結果であると認め、犯人は被告人(父親)又は母親であるとしたが、犯人を被告人と認めるには足りないとした事例(事件③)
(①大阪地判平30・3・13、②大阪地判平30・3・14、③奈良地判平29・12・21)……松原英世
54 自動車運転致死傷3条2項・自動車運転致死傷令3条2号所定の危険運転致死傷罪が成立する旨の主位的訴因が、被告人の車両暴走行為が認知症の影響によるものであった可能性も否定できないことから、それがてんかんの影響によるものであったと認めるには合理的な疑いを入れる余地があるとされて斥けられ、同法5条所定の過失運転致死傷罪が成立する旨の予備的訴因が容れられ、懲役6年の実刑が言い渡された事例
(宮崎地判平30・1・19)……古川 伸彦
55 職務質問の対象者が知人に向けて投げたが地面に落ちてしまったバッグを、警察官が拾い上げ、右対象者の承諾なく中身を一つ一つ取り出して写真撮影などをしたことは捜索に当たり、所持品検査として違法であり、その違法の程度は重大であるとして、違法収集証拠排除法則を適用して無罪とした事例
(東京高判平30・3・2)……内藤大海
※訂正箇所
●本誌59頁・4段・19行
誤 …本号後掲73
正 …本号後掲72