判例時報 No.2418〔判例評論 No.729〕
2019年11月1日 号 定価:1470円
(本体価格:1336円+10%税)
<最新判例批評>
山口亮子 金 春 内海朋子
村上 裕 三宅 新 川口美貴
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(4)
定型約款規定の新設、意思能力制度の明文化……千葉恵美子
刑法判例と実務
──第47回 刑法242条の周辺──……小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(19)
――行政訴訟③――原告適格……高橋 滋
■判決録
<民事> 6件
<刑事> 1件
◆記 事◆
改正民法が民事裁判実務に及ぼす影響(4)
定型約款規定の新設、意思能力制度の明文化……千葉恵美子
刑法判例と実務
──第47回 刑法242条の周辺──……小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(19)
―─行政訴訟③―─原告適格……高橋 滋
◆判決録細目◆
民 事
○ツイッター上におけるいわゆる「なりすましアカウント」作成者の特定のために、経由プロバイダに対して発信者情報の開示を求めた請求が、認められた事例
(東京高判平30・6・13〈参考原審:東京地判平29・11・24掲載〉)
▽洞不全症候群、心房細動等につき前医で治療を受けていた患者が高度肥満、過体重によりペースメーカー植込み手術等のための検査、手術等を安全に行うために都立病院に転院して、医師の診察等を終えて高看護病室への歩行移動中に突然倒れて一時心肺停止状態になり、蘇生措置により一命を取り留めたが52日後に死亡したことについて、病室へ歩行移動させた医師の措置等に、過失がないとされた事例
(東京地判平30・9・20)
▽1 原告らが本拠地ないし居住地とする建物で発生した火災につき、建物の焼損等の状況及び原告らの供述の状況を検討した上で、同火災の発火源が被告の製品である室外機であり、同室外機が設置されてから同火災が発生するまでの期間や同室外機が通常と異なる方法によって使用されたとする事情が認め難いことに照らし、同火災が、同室外機の欠陥により生じたものと認定した事例
2 前記火災による動産に係る損害の算定についての適切な立証を求めることが困難であるとして、民事訴訟法248条に従って損害額を算定した事例
(東京地判平30・9・19)
▽1 洗顔石けんの使用者らが、その使用によってアレルギー症状を発症したことについて、当該洗顔石けんに製造物責任法2条2項にいう欠陥があるとして、当該洗顔石けんの製造に関与した各会社に対する損害賠償請求が一部認容された事例
2 洗顔石けんの使用者らが、その使用によってアレルギー症状を発症したことについて、当該アレルギー症状の原因となった洗顔石けんの原材料に製造物責任法2条2項にいう欠陥があるとして、当該原材料を製造した会社に対する損害賠償請求が一部認容された事例
(福岡地判平30・7・18)
▽女性会員と連絡先を交換させると騙していた出会い系サイトの利用料金収納業務の代行をしていた各会社は、同サイト運営に関与していたものとして共同不法行為が成立し、各会社の代表取締役にも会社法429条の賠償責任があるとされた事例
(福岡地判平31・2・22)
▽温泉施設において、高齢の女性が浴場入口に足を踏み入れたときに足を滑らせて転倒し負傷した事故につき、浴場入口に滑り止めのゴムマットを敷いたりするなどの転倒防止措置をとるべき安全配慮義務があると認められなかった事例
(旭川地判平30・11・29)
刑 事
○心神耗弱状態で実子を殺害した被告人を懲役3年の実刑に処した1審判決に対し、同種事案の中で重い部類に属するとした点に相応の根拠が示されておらず、従前の量刑傾向から踏み出した判断をすることについて具体的根拠が示されていないなどとして、量刑不当を理由に破棄・自判して保護観察付き執行猶予を付した事例
(広島高判平30・3・1〈参考原審:山口地判平29・10・5掲載〉)
判例評論
43 株券が発行されていない株式に対する強制執行手続において配当留保供託され、その供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始決定を受けた場合における破産法42条2項本文の適用の有無
(最二決平30・4・18)……金 春
44 子の常居所地国を米国と認定した上で、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律二八条一項四号の返還拒否事由の主張等を排斥して、子の米国への返還を命じた事例
(大阪高決平29・7・12)……山口亮子
45 虚偽の有価証券報告書等の提出により会社が罰金及び課徴金を支払った場合において、その不法行為の幇助者に対して罰金及び課徴金相当額の損害賠償請求をすることは許されないとした事例
(東京高判平29・6・15)……内海朋子
46 会社分割(吸収分割)に信義則が適用された事例
(最三決平29・12・19)……村上 裕
47 反社条項に該当するとして保険者からの解除を有効とした事例
(広島高岡山支判平30・3・22)……三宅 新
48 1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合における当該有期契約労働者の労働条件の帰すう
2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」の意義
3 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」の意義
4 無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
――ハマキョウレックス事件(最二判平30・6・1)……川口美貴