判例時報 No.2413・2414(秋季合併号)*
2019年9月11・21日 号 定価:1691円
(本体価格:1537円+10%税)
統治構造において司法権が果たすべき役割第2部(2)
参政権保障の諸制度と司法権
──判例分析を通じて見出される裁判所への期待……新井 誠
◎新連載
録音・録画記録媒体の証拠としての許容性・範囲に関する多角的検討(1)
裁判員裁判における録音・録画記録媒体の実質
証拠としての使用について―その経緯と今後の展望―……市川太志
■書評
村山満明著『東住吉冤罪事件―虚偽自白の心理学』
評者 門野 博
■判例特報
旧優生保護法仙台地裁判決(仙台地判令1・5・28)
■特集
旧優生保護法仙台地裁判決を受けて
人としての尊厳……小山 剛
旧優生保護法は違憲、しかし、請求は棄却……新里宏二
■判決録
<行政> 2件
<民事> 3件
<知的財産権> 1件
<労働> 1件
<刑事> 1件
◆記 事◆
統治構造において司法権が果たすべき役割第2部(2)
参政権保障の諸制度と司法権
──判例分析を通じて見出される裁判所への期待……新井 誠
◎新連載
録音・録画記録媒体の証拠としての許容性・範囲に関する多角的検討(1)
裁判員裁判における録音・録画記録媒体の実質証拠としての使用について
―その経緯と今後の展望―……市川太志
◆書 評◆
村山満明著『東住吉冤罪事件―虚偽自白の心理学』(岩波書店、2019年)
評者……門野 博
◆判例特報◆
一 平成八年法律第一〇五号による改正前の優生保護法第二章、第四章及び第五章と憲法一三条
二 平成八年法律第一〇五号による改正前の優生保護法第二章、第四章及び第五章に基づき不妊手術をされた者が除斥期間の規定の適用によりリプロダクティブ権侵害に基づく損害賠償を求めることができなくなった場合に、その権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であるとされた事例
三 平成八年法律第一〇五号による改正前の優生保護法第二章、第四章及び第五章に基づき不妊手術をされた者が、国家賠償法四条の規定により適用される民法七二四条後段の適用によりリプロダクティブ権侵害に基づく損害賠償を求めることができなくなった場合に、その権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であることが明白であったとはいえないとされた事例
四 民法七二四条後段の適用と憲法一七条
――旧優生保護法仙台地裁判決(仙台地判令1・5・28)
◆特 集◆
旧優生保護法仙台地裁判決を受けて
人としての尊厳……小山 剛
旧優生保護法は違憲、しかし、請求は棄却……新里宏二
◆判決録細目◆
行 政
◎地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗の女性従業員にわいせつな行為等をしたことを理由とする停職六月の懲戒処分に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最三判平30・11・6)
○一 非違行為の内容(中学教諭が一五歳の女子生徒と保護者の同意を得ないまま交際し、自宅の合鍵を渡し、入室させ、キスや抱擁を相当回数行い、また、宿泊させた上、同じベッドで就寝するなどした)に照らし、懲戒免職が裁量の範囲内の処分量定であるとされた事例
二 他の事例と比較して、処分の量定が不当に重いということはできず、公平性の観点から見ても合理性を欠くものということはできないとされた事例
(東京高判平30・9・20〈参考原審:さいたま地判平29・11・24本誌2373号29頁掲載〉)
民 事
○年払保険金(年金)支払請求権の差押命令の申立てにつき、特に生計の維持のために保険金の受給の必要がなかったとして、民事執行法一五二条一項一号該当性を否定した事例
(東京高決平30・6・5〈参考原審:水戸地土浦支決平30・3・16掲載〉)
○一 不和別居中の妻が夫と長女との面会交流を妨げる別目的のために住民基本台帳事務における支援措置の申出をしたことにより損害を被ったとして夫が慰謝料三三〇万円等を請求したところ、原審が五五万円等を認容したのに対し、控訴審が別目的のための支援措置申出ではないとして原判決を取り消し請求を棄却した事例
二 前記妻の支援措置申出の際に被告県の警察署長が支援措置申出の要件不具備を知りながら要件を満たす旨の「相談機関等の意見」を付したことは違法であるとして三三〇万円等の国家賠償請求をしたところ、原審が五五万円等を認容したのに対し、控訴審が右相談機関等の意見を付したこと等は違法ではないとして原判決を取り消し請求を棄却した事例
(名古屋高判平31・1・31〈参考原審:名古屋地判平30・4・25掲載〉)
○住民による大飯原発の運転差止請求を認容した原判決を取り消し、同請求を棄却した事例
(名古屋高金沢支判平30・7・4〈参考原審:福井地判平26・5・21本誌2228号72頁掲載〉)
知的財産権
○一 特許法一〇二条二項の損害額の推定を受けるに当たり、共有者は、原則としてその実施の程度に応じてその逸失利益額を推定される
二 特許法一〇二条二項による損害額の推定に基づき侵害者に対し特許権の共有者の一部が損害賠償請求権を行使するに当たっては、同項に基づく損害額の推定は、不実施に係る他の共有者の持分割合による同条三項に基づく実施料相当額の限度で一部覆滅される
三 控訴審における一審被告らの無効の抗弁等の主張の追加につき、時機に後れたものであるとともに、無効の抗弁等の主張の追加については審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものであるとして却下した事例
(知財高判平30・11・20〈参考原審:大阪地判平30・3・12掲載〉)
労 働
▽一 実態と異なる賃金算定方法を定めた就業規則の適用が肯定された事例
二 深夜割増賃金が基本給に含まれているとの主張が排斥された事例
三 賃金控除が違法とされた事例
四 会社の賃金未払について代表取締役等の損害賠償責任が否定された事例
五 事実上の取締役の労働者に対するパワーハラスメントが認められるとして、会社の損害賠償責任が肯定された事例
六 労働者が業務を放棄したことにより損害賠償責任を負うとされた事例
(福岡地判平30・9・14)
刑 事
○覚せい剤の密輸入事案において、スーツケース内の隠匿物が金塊であると認識していた可能性が否定できないとして無罪とした一審判決(裁判員裁判)に、経験則、論理則違反の事実誤認があるとして破棄した事例
(大阪高判平30・5・25〈参考原審:大阪地判平29・8・4掲載〉)
※訂正箇所
●本誌234頁・2段・6行目
誤 …対象的
正 …対照的