判例時報 No.2412*〔判例評論 No.727〕
2019年9月1日 号 定価:1466円
(本体価格:1333円+10%税)
<最新判例批評>
西村裕一 伊藤 隼 久保田 隆
張 睿暎 山本哲生 後藤啓介 渡邊卓也
刑法判例と実務
――第四五回 司法に対する罪の周辺…… 小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(17)
――行政訴訟①─―行政訴訟と民事訴訟、処分性(その一)……高橋 滋
■判決録
<行政> 1件
<民事> 3件
<知的財産権> 1件
<労働> 1件
<刑事> 2件
◆記 事◆
刑法判例と実務
――第四五回 司法に対する罪の周辺…… 小林憲太郎
法曹実務のための行政法入門(17)
――行政訴訟①─ー行政訴訟と民事訴訟、処分性(その一)……高橋 滋
◆判決録細目◆
行 政
〇難民に該当することを理由に難民不認定処分の取消判決が確定している外国人に対し、法務大臣が事情変更を理由に再度難民不認定処分をする場合に適用すべき規定
(東京高判平30・12・5〈参考原審:東京地判平30・7・5掲載〉)
民 事
○妻である相手方が、別居中の夫である抗告人に婚姻費用の支払を求めた事案において、いわゆる標準的算定方式を参考に本件に顕れた一切の事情を考慮して婚姻費用分担金の額を試算したうえで、同試算に係る未払婚姻費用分担金と子の生活費を含まない未払婚姻費用分担金との差額の限度において、相手方の前夫による養育費支払によって要扶養状態が解消されたものとして、前記差額を控除し、婚姻費用分担金を算定した事例
(大阪高決平30・10・11〈参考原審:大阪家審平30・7・10〉)
○レンタルした携帯電話が実際に犯罪に悪用されていることを警察からの指摘で認識していたレンタル業者が事務所外で借主と会い、具体的な使用目的を確認せず、現金払い・領収証不交付で、約四箇月の間に合計一〇台の電話転送サービス付き携帯電話を貸与した場合において、その携帯電話がデート商法詐欺に悪用されたときに、携帯電話を貸与したレンタル業者に故意又は過失による詐欺行為の幇助を認めた事例
(仙台高判平30・11・22〈参考原審:仙台地判平30・3・13掲載〉)
▽被相続人名義の貯金全額が同人の財産である場合に、同人の死後に一部の相続人が遺産分割協議を経ることなく全額を引き出して共同相続人に交付することなく独占しているときは、不当利得となるとして、その返還義務が認められた事例
(徳島地判平30・10・18)
知的財産権
〇共同での特許無効審判請求に係る無効審決に対し、特許権者が、共同審判請求人の一部のみを被告として右審決の取消訴訟を提起するにとどまり、被告とされなかった共同審判請求人との関係で出訴期間を経過した場合には、審決取消訴訟は訴えの利益を欠く不適法なものとして却下されるべきであるとした事例
労 働
○一 外科医師と勤務先病院との間で、職種限定合意の成立が認められた事例
二 外科医師を消化器外科部長等の職から解任し、がん治療サポートセンター長に任命する配置転換命令及び外科の一切の診療に関与することを禁止する命令について、いずれも無効であると判断された事例
(広島高岡山支決平31・1・10〈参考原審:岡山地決平30・3・29掲載〉)
刑 事
○交際女性をビルから落下させ殺害したとして起訴されたが、自殺の可能性が排斥できないとして無罪を言い渡した原判決が是認された事例
(大阪高判平30・7・5〈参考原審:神戸地姫路支判平29・7・24掲載〉)
○入会地内で行われた野焼作業において、作業員である被害者三名が原野内で着火するのに等しい危険な着火行為を行って焼死した事故につき、右野焼作業の企画・立案を担っていた被告人両名において、経験豊富な現場の作業員らが、野焼作業の鉄則に反して原野内で着火するのに等しい危険な行為をすることは通常想定し得ないなどとして、これを予見すべきであったとも、これを回避すべき義務があったとも認められないとして、原判決を破棄して無罪とした事例
(東京高判平31・1・23〈参考原審:静岡地沼津支判平29・2・24掲載〉)
判例評論
三〇 漁業権を管轄する地方公共団体が、漁業権の設定されている漁場で、規則により必要とされる県知事許可を受けずに岩礁破砕等行為が行われるおそれがあるとして求めた差止め等が、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たらないとされた事例
三一 自動車の所有権留保売買において、売買代金残額を代位弁済した保証人たる信販会社が、自己名義の所有者登録なく、破産手続で留保所有権を別除権として行使することの可否(積極)
(最一判平29・12・7)……伊藤 隼
三二 仮想通貨交換業者マウントゴックスを巡る破産債権査定異議の訴えで、顧客の主張するビットコイン返還請求権等が認められなかった事例
(東京地判平30・1・31)……久保田 隆
三三 Twitterタイムライン上のサムネイル画像が表示上の改変として同一性保持権等を侵害すると判断した事例
(知財高判平30・4・25)……張 睿暎
三四 従業員が業務上の事故により死亡し、遺族が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けたため、労働保険料が増額されたことを損害として、使用者が事故の加害者に対し損害賠償を請求した事案において、保険料の負担が増えたことを不法行為から生ずる損害とは認めることができないとした事例
(大阪高判平28・11・29)……山本 哲生
三五 口裏合わせに基づく参考人の虚偽供述が刑法103条にいう「隠避させた」に当たるとされた事例
(最二決平29・3・27)……後藤 啓介
三六 オンラインストレージサービスに画像データ等を保存し、その公開を設定してURLの発行を受けただけでは、「公然と陳列した」に該当しないとされた事例
(大阪高判平29・6・30)……渡邊 卓也
※訂正箇所
●評論133頁・2段・14行目
誤 …最大の法律上の論点
正 …最大の法律上の論点(7)(注番号追加)
●評論133頁・3段・4行目
同134頁・3段・15行目
誤 …①’、
正 …①’(読点なし)
●評論135頁・2段・31行目
誤 …「行政権の主体」=と「財産権
正 …「行政権の主体」と「財産権
●評論137頁・2段・3行目
誤 …八五頁、八四―八五頁
正 …八四―八五頁、八八―八九頁