判例時報 No.2411*
2019年8月21日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
現代型取引をめぐる裁判例(445)……升田 純
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<知的財産権> 1件
<労働> 1件
<刑事> 1件
◆最高裁判例要旨(2019(平31)年4月分)
◆記 事◆
現代型取引をめぐる裁判例(445)……升田 純
◆判決録細目◆
行 政
▽一 学校法人が作成した私立小学校の設置趣意書の表題の一部(小学校名)及び本文部分が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律五条二号イ所定の不開示情報に該当しないとされた事例
二 近畿財務局長等が、学校法人が作成した私立小学校の設置趣意書の表題の一部(小学校名)及び本文部分について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律五条二号イ所定の不開示情報に該当すると判断したことが国家賠償法上違法であるとされた事例
(大阪地判平31・3・14)
民 事
○国の職員が違法な通達を発したことをもって発生した損害賠償請求権は、遅くとも被害者が死亡した日から二〇年が経過したことにより除斥期間の経過によって消滅するとした事例
(大阪高判平30・12・20〈参考原審:大阪地判平30・1・31掲載〉)
○一 厚生大臣が、国立療養所に入所していなかったハンセン病患者に対し、隔離政策の転換、そのために必要となる在宅医療制度の構築等の相当な措置を採らなかったことが国家賠償法一条一項の適用上違法であり、過失があるとされた事例
二 国会が、らい予防法を廃止しなかったことが、国立療養所に入所していなかったハンセン病患者との関係において国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
三 厚生大臣が隔離政策の転換、そのために必要となる在宅医療制度の構築等の相当な措置を採らなかったことを理由とする国立療養所に入所していなかったハンセン病患者の相続人の国に対する国家賠償請求権の消滅時効につき、国の隔離政策の継続が国立療養所に入所していなかったハンセン病患者との関係でも違法であると判断するに足りる事実を認識していた時点から進行するとされた事例
四 厚生大臣が、国立療養所に入所していなかったハンセン病患者の子に対し、隔離政策の転換、そのために必要となる在宅医療制度の構築等の相当な措置を採らなかったことが国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
五 国会が、らい予防法を廃止しなかったことが、国立療養所に入所していなかったハンセン病患者の家族との関係において国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
(広島高松江支判平30・7・24〈参考原審:鳥取地判平27・9・9本誌2314号70頁掲載〉)
▽一 公営住宅法二五条二項所定の通知は、同法三二条一項六号に基づく明渡請求の要件ではないとして、事業主体たる地方公共団体の建物明渡請求が認められた事例
二 公営住宅法三二条一項六号の適用について、限定解釈する必要はないとされた事例
(神戸地判平30・10・17)
▽カーナビゲーションシステムが表示したルート案内に従って車両を運転した際に生じた損傷の修理費用等の損害賠償請求を認めなかった事例
(福島地判平30・12・4)
▽児童相談所長が、児童福祉法二八条一項に基づき、事件本人の児童心理治療施設への入所を承認するよう求めた事案において、利害関係参加人である実父及び養母による虐待は認められないが、利害関係参加人らに事件本人を監護させることは著しく事件本人の福祉を害するとして申立てを認容した事例
(水戸家決平30・5・28)
知的財産権
○一 特許法一五九条二項により読み替えて準用される同法五〇条ただし書に当たる場合であっても、特許出願に対する審査・審判手続の具体的経過に照らし、出願人の防御の機会が実質的に保障されていないと認められるようなときには、同法一五九条二項により準用される同法五〇条本文に基づき拒絶理由通知をしなければならず、これをしないことが違法になる場合もあり得る
二 拒絶査定の理由が本件先願を理由とする拡大先願(特許法二九条の二)であるところ、前置報告書において初めて示された刊行物一に基づく拒絶理由通知をすることなく、刊行物一に基づく新規性欠如(同法二九条一項三号)及び進歩性欠如(同条二項)を理由として、拒絶査定不服審判請求と同時にした限定的減縮を目的とする補正を却下して、右請求を不成立とした審決には、同法一五九条二項により準用される同法五〇条本文所定の手続を怠った違法があるとされた事例
(知財高判平30・9・10)
労 働
◎雇用契約において時間外労働等の対価とされていた定額の手当の支払により労働基準法三七条の割増賃金が支払われたということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最一判平30・7・19)
刑 事
○暴行保護事件において少年を第一種少年院に送致した決定に対する処分不当を理由とする抗告につき、少年の資質上の問題が発達上の特質を背景として長年形成された根深いものであることや、保護環境が十分といえないことを指摘し、原決定の判断は相当であるとして、抗告を棄却した事例
(東京高決平30・3・23〈参考原審:東京家決平30・2・6掲載〉)
◆最高裁判例要旨(2019(平31)年4月分)
※訂正箇所
●本誌20頁・4段・26行目
誤 …森 鍵一
正 …森鍵 一