判例時報 No.2406
2019年7月11日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
…令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとして違法収集証拠排除法則を適用し、GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接に関連する証拠の証拠能力を否定して、原審の有罪判決の一部を破棄して無罪を宣告した事例(東京高判平30・3・22)など
■判決録
<民事> 3件
<知的財産権> 1件
<刑事> 4件
◆判決録細目◆
民 事
▽訴外病院において出生した嬰児が完全型心内膜床欠損症、肺動脈閉鎖症等と診断され、心臓外科等を専門とする本件病院に搬送転院されて、BTシャント術を受けて循環動態等も安定したが、その後予定された双方向グレン手術の適応を判断する心臓カテーテル検査を受けるために本件病院に再度入院して右検査を受けた際、検査担当医の吸入麻酔薬フローセンの使用に伴い本件患児が死亡するに至ったことについて、麻酔管理に過誤があるとされた事例
(東京地判平30・6・21)
▽司法書士である原告が、成年後見等の事件の紹介及び候補者推薦、司法書士会員への監督指導などを行っている公益社団法人である被告に対して、①司法書士法二四条に規定する秘密保持義務に反すること、②成年被後見人等のプライバシー侵害に当たることを理由として被告に対する業務報告義務がないことの確認を求めたのに対して、業務報告義務を負うとして請求を棄却した事例
(東京地判平30・5・25)
▽カラーボックスの使用により化学物質に対する過敏症を発症した事故につき、販売業者の責任が肯定された事例
(高松地判平30・4・27)
知的財産権
▽他人の商標を、htmlファイルのディスクリプションメタタグ、タイトルタグとして記載した行為につき商標的使用と認め、キーワードメタタグとして記載した行為につき商標的使用と認めなかった事例――バイクリフター事件
(大阪地判平29・1・19)
刑 事
◎勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し、勾留請求却下)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例
○犯人蔵匿の故意につき、原審において、被告人が自宅に居住させていた人物Aが昭和四六年に発生した渋谷暴動事件の犯人として逮捕状が発付され逃走中の「Z」であることを認識していたと認定したのに対し、原審の摘示した間接事実だけでは、被告人においてAが「Z」であると認識していたとは認められないとして事実誤認を理由に原判決を破棄したが、Aが「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」であることの認識はあったとして、改めて、犯人蔵匿罪で有罪を言い渡した事例
(大阪高判平30・9・25〈参考原審:大阪地判平30・4・27本誌2400号109頁掲載〉)
○本件GPS捜査(被告人使用車両にGPS端末を装着して位置情報を検索)の期間、検索回数のほか、警察官らが敢えて無令状のままで秘かに実施したことなどを総合すれば、令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとして違法収集証拠排除法則を適用し、GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接に関連する証拠の証拠能力を否定して、原審の有罪判決の一部を破棄して無罪を宣告した事例
(東京高判平30・3・22)
▽一 殺人等全七事件中、殺人一件について、実行犯が被害者を殺害したと考えなければ合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が存在するといえるかにはなお疑問が残るなどとして無罪とし、その余の事件を全て有罪として、被告人に無期懲役を言い渡した事例
二 著しい捜査の違法等を理由に公訴棄却を求めた弁護人の主張を排斥した事例
(神戸地姫路支判平30・11・8)