判例時報 No.2395
平成31年4月1日 号 定価:1466円
(本体価格:1333円+10%税)
<最新判例批評>
津田智成 林 圭介 川嶋四郎
和田勝行 堀江亜依子
最高裁刑事破棄判決等の実情
──平成二九年度──……久禮博一
少年法適用年齢引下げ問題について
―─脳科学の視点から(1)──
家庭裁判所における少年事件の取扱いと脳科学……大塚正之
刑法判例と実務
──第四〇回 詐欺罪における財産的損害の周辺──……小林憲太郎
◎特別寄稿
国立市事件判決について……安藤高行
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<刑事> 4件
◆記 事◆
最高裁刑事破棄判決等の実情
──平成二九年度──……久禮博一
少年法適用年齢引下げ問題について
―─脳科学の視点から(1)──家庭裁判所における少年事件の取扱いと脳科学……大塚正之
刑法判例と実務
──第四〇回 詐欺罪における財産的損害の周辺──……小林憲太郎
◎特別寄稿
国立市事件判決について……安藤高行
◆判決録細目◆
行 政
〇地方議会が行った議員に対する出席停止処分が議員報酬の減額につながるような場合には、その処分の取消し等を求める訴えは、司法審査の対象となるとされた事例
(仙台高判平30・8・29〈参考原審:仙台地判平30・3・8掲載〉)
民 事
○公民館の職員が、俳句サークルの会員が詠んだ憲法九条を内容とする俳句を公民館だよりに掲載しなかったことが、思想、信条を理由に不公正な取扱いをしたことにより、右会員の人格的利益を侵害したとして国家賠償法上違法とされた事例
(東京高判平30・5・18〈参考原審:さいたま地判平29・10・13掲載〉)
○被相続人の二女が、被相続人の長女に対し遺産の分割を求めた事案において、相続開始時点における共同相続人であった被相続人の亡妻が、本件相続における自己の法定相続分二分の一を含む全財産を長女に包括遺贈する旨の遺言をし、長女がこれを承継した後、右遺贈について二女が長女に対し遺留分減殺請求権を行使したとの事実関係の下で、遺言者の財産全部に係る包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないから、本件相続における遺産分割の対象は亡妻が相続した相続分二分の一を除く部分に限られるべきである旨の長女の主張を排斥し、遺産全部を分割した事例
(大阪高決平29・12・22〈参考原審:大阪家審平28・2・15掲載〉)
○子を面会交流させることを内容とする債務名義に基づき抗告人が間接強制を申し立てた事案において、相手方が抗告人との別居から約三年間面会交流を拒否し続けたことなどから、相手方に面会交流させる義務を継続的かつ確実に履行させるためには、相手方の収入や経済状況等を踏まえ、相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要があるなどとして、強制金の額を不履行一回につき五万円とした原決定を変更し、不履行一回につき二〇万円とした事例
(大阪高決平30・3・22〈参考原審:大阪家決平30・3・22掲載〉)
○国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき、父である抗告人が、母である相手方に対して、子をその常居所地国であるフランス共和国に返還するよう求めた事案において、子はその意見を考慮に入れることが適当な年齢及び成熟度に達しており、返還を拒否する意向を示していることから、同法二八条一項五号の返還拒否事由があると認められるとして申立てを却下した原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
(大阪高決平28・8・29〈参考原審:大阪家決平28・6・7掲載〉)
▽刑事施設に収容中の受刑者である原告が、必要性がないのに保護室に収容されたこと、刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律上明文の規定を欠く監視カメラの付いた単独室(いわゆるカメラ室)に二一六日間にわたって収容されたこと、処遇部長から侮辱的な発言を受けたこと等により精神的損害を被ったとして、国家賠償法一条一項に基づく損害賠償を請求した事案につき、原告に対する侮辱的な言動があったこと及び原告の動静を厳重に監視する必要性がなくなったにもかかわらず、漫然と監視カメラの付いた単独室への収容を継続したことについて国家賠償法上の違法があるとして、原告の請求を一部認容した事例
(熊本地判平30・5・23)
刑 事
○少年に保護処分歴がなく、示談が成立している恐喝保護事件において少年を第一種少年院に送致した決定に対する処分不当を理由とする抗告について、本件非行の悪質さ、少年の問題性の根深さ、保護環境の状況等を指摘し、原決定の判断は相当であるとして抗告を棄却した事例
(東京高決平29・12・21)
▽一 母親が乳児に対し、身体を揺さぶるなどして頭部に衝撃を与える暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせたと認められた事例(①事件)
二 男性が自宅で幼児の頭部に強い衝撃を与え、急性硬膜下血腫、脳腫脹の傷害を負わせて死亡させたとの公訴事実につき、右傷害が他者の故意行為によって生じたとは認められないとした事例(②事件)
三 乳児の死因は頭部に意図的な強い回転性外力が加えられた結果であると認め、犯人は被告人(父親)又は母親であるとしたが、犯人を被告人と認めるには足りないとした事例(③事件)
(①大阪地判平30・3・13、②大阪地判平30・3・14、③奈良地判平29・12・21)
判例評論
一 公健法上の障害補償費の支給義務と原因者の民事上の損害賠償責任の関係
(最二判平29・9・8)……津田智成
二 弁護士法二五条一号に違反する訴訟行為の排除の要件
(最一決平29・10・5)……林 圭介
三 地方公共団体は、その機関が保管する文書について、文書提出命令の名宛人となる文書の所持者に当たるか
(最二決平29・10・4)……川嶋四郎
四 第三債務者が差押債務者に対する弁済後に差押債権者に対してした更なる弁済は、差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、破産法一六二条一項の規定による否認権行使の対象とならないとした事例
(最三判平29・12・19)……和田勝行
五 一 いわゆる真正商品の並行輸入に関し、商標が商品自体に付されているのではなく、商品の広告に付されている場合について判断した事例
二 いわゆる真正商品の並行輸入に関し、外国の商標権者と我が国の商標権者とが異なる場合の商品の品質管理可能性について判断した事例
(知財高判平30・2・7)……堀江亜以子