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判例時報 No.2373*
             平成30年8月21日 号 定価:845円 (本体価格:768円+10%税)

NHK受信料訴訟を考える(1)
 NHK受信料最高裁大法廷判決について
 ──憲法学の観点から……木下智史
 
現代型取引をめぐる裁判例(433)……升田 純
 
科学的証拠を科学的に裁判に活かすために(1)
 刑事裁判の事実認定と法医学……本田克也
 
終末期医療を考える(1)
 立法問題としての終末期医療……大谷 實
 
■書評
内田 貴 著
『法学の誕生―近代日本にとって「法」とは何であったか』
評者 千葉勝美
 
■判決録
<行政> 4件
<民事> 5件
<労働> 1件
<刑事> 1件


◆記  事◆

NHK受信料訴訟を考える(1)
 NHK受信料最高裁大法廷判決について──憲法学の観点から……木下智史
現代型取引をめぐる裁判例(433)……升田 純
科学的証拠を科学的に裁判に活かすために(1)
 刑事裁判の事実認定と法医学……本田克也
終末期医療を考える(1)
 立法問題としての終末期医療……大谷 實

◆書 評◆

内田 貴 著『法学の誕生―近代日本にとって「法」とは何であったか』(筑摩書房、二〇一八年)
評者……千葉勝美

◆判決録細目◆

行 政

○国籍留保の届出が戸籍法一〇四条一項及び三項に定める届出期間を経過した後になされたものであり、日本国籍を喪失しているとして出生の届出及び国籍留保の届出についていずれも不受理とする処分を受けた抗告人が、日本国籍を喪失していないとして戸籍法一一〇条一項に基づき就籍することの許可を求めた事案において、本件の各事情の下では、戸籍法一〇四条三項の届出期間内に本件各届出をすることができなかったということはできず、抗告人は日本国籍を失っているとして、申立てを却下した原審判を相当と判断して抗告を棄却した事例

(大阪高決平29・11・28〈参考原審:大阪家審平29・7・5掲載〉)

○一 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律一〇条一項の「医療」は、積極的な治療を伴うか否かを問うべきではなく、経過観察のために通院している場合であってもこれに当たるとされた事例
二 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律一一条一項に基づく原爆症認定申請に対する却下処分につき、申請に係る疾病の放射線起因性及び要医療性が認められるとして取り消された事例

(名古屋高判平30・3・7〈参考原審:名古屋地判平28・9・4本誌2350号3頁掲載〉)

▽一 市長が原告における市民税等滞納額を徴収するため、勤務先からの給与受領目的の原告の貯金口座に振り込まれていた貯金を差し押さえて、滞納市民税等に充当したときは、差押処分はその目的を達して消滅し、これを取り消すべき法律上の利益はないとした事例
二 滞納処分庁が差押えの対象とした貯金債権の原資が給与であることを認識し、給与が振り込まれた当日に差押処分をしたときは、実質的に給与自体を差し押さえることを意図して差押処分を行ったものと認めるべき特段の事情があり、右差押処分は差押禁止の法意を逸脱し違法であるとして、不当利得返還請求及び国家賠償法上の損害賠償請求を認めた事例

(前橋地判平30・1・31)

▽中学校の教諭である原告が、一五歳の女子と交際し、キスや抱擁を行い、アパートに宿泊させたなどの非違行為は、地方公務員法三三条に違反し、同法二九条一項一号及び三号の懲戒事由に該当するものであるが、県教育委員会が懲戒免職処分を選択したことは、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められ、違法であるとして、右処分を取り消した事例

(さいたま地判平29・11・24)

民 事

○私立大学医学部に通う原審申立人が、父である原審相手方に対し、現在の養育費では学費等に不足が生じているとして扶養料の支払を求めた事案において、原審相手方は養育費のほかに一定の扶養料を分担する義務を負うべきとした上で、扶養料の分担額について、分担対象、分担割合、分担額から控除すべき額等を認定し、分担すべき扶養料を算定して支払を命じた事例

(大阪高決平29・12・15〈参考原審:京都家福知山支審平29・9・4掲載〉)

○離婚後に再婚し、再婚相手の子らと養子縁組をした場合、事情の変更があったとして、離婚の際に合意した養育費の減額を認め、右合意の趣旨を考慮して養育費の額を算定した事例

(札幌高決平30・1・30〈参考原審:旭川家審平29・10・20掲載〉)

▽名誉毀損の表現を含む内容の陳述書を作成等した行為により名誉を毀損されたことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を棄却した事例

(大阪地判平30・1・11)

▽冬季の富士山の九・五合目付近で滑落した男性の救助に当たった市消防局のヘリコプターが救助中、吊り上げ用具が外れ被救助者を数メートル下に落下させ、同日の救助を断念して、翌日までに死亡するに至らしめたことについて、救助方法等の選択及び救助の断念に不合理な点はなく、国家賠償法上の違法はないとされた事例

(京都地判平29・12・7)

▽市立小学校の図工の授業として同校正門前の公道において写生していた児童が自動車に轢かれて死亡した事故について、同所で写生することを容認していた指導教諭の過失が認められるとして、市と県に国家賠償責任が認められた事例

(横浜地小田原支判平29・9・15)

労 働

○保健所の自動車運転手として勤務していた大阪府職員が、東日本大震災直後の被災地支援のため二回にわたり岩手県内に派遣され、避難所等を巡回する自動車運転業務に従事していたところ、宿泊先でくも膜下出血のため病院に搬送され、その六日後に死亡した事案につき、右業務はくも膜下出血の発症要因となり得る程度の高度の負荷であったというべきであり、また、前駆症状の頭痛が生じた後も右業務を継続せざるを得なかったこと等によって早期の治療機会を喪失したといえるとして、右発症による死亡は地方公務員災害補償法にいう公務上の死亡に当たると判断して公務外認定処分を取り消した事例

(大阪高判平29・12・26〈参考原審:大阪地判平29・2・6掲載〉)

刑 事

○一 競うように高速度で走行していた二台の車両の各運転者につき、交差点進入時に赤色信号に従わずに高速度のままで交差点を通過する意思を相通じた上で、各自がそのままの高速度の走行を継続して交差点に進入し、交通事故を起こして人を死傷させた行為について、危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとした事例
二 危険運転行為の共謀を遂げた者は、共犯者の運転する車両が他車と衝突した交通事故に関し、事故関与車両の運転者として救護・報告の義務を負うとした上、右事故による人の死傷が自己の運転に起因する場合に当たるとした事例

(札幌高判平29・4・14〈参考原審:札幌地判平28・11・10掲載〉)

※訂正箇所

●本誌129頁・2段・4行目
 誤 …雄一の
 正 …唯一の

●本誌133頁・3段・9行目
 誤 …法曹会
 正 …法曹界

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