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判例時報 No.2371
             平成30年8月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 倉田 原志 笠原 武朗 今津 綾子
 小島喜一郎  柴田 守
 
いじめ自殺訴訟における過失及び因果関係の各要件の内容と判断の枠組み(3)……橋本英史
 
企業間ビジネス紛争及び会社組織等紛争に関する裁判の運営上の諸問題
 ──企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(4)……鬼頭季郎
 
刑法判例と実務
 ──第三二回 賄賂罪の周辺──……小林憲太郎
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<知的財産権> 1件
<労働> 2件


◆記  事◆

◎特別寄稿

いじめ自殺訴訟における過失及び因果関係の各要件の内容と判断の枠組み(3)
 ──いじめ自殺の周知性の獲得を斟酌した「自殺の予見可能性」の位置付けを中心とし、主に学校側の責任の判断の在り方(予見可能性緩和説の採用)について……橋本英史

企業間ビジネス紛争及び会社組織等紛争に関する裁判の運営上の諸問題
 ──企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(4)……鬼頭季郎
刑法判例と実務
 ──第三二回 賄賂罪の周辺──……小林憲太郎

◆判決録細目◆

行 政

▽労働保険料につきいわゆるメリット制の適用を受ける事業に従事する労働者に業務災害支給処分がされたことによって労働保険料増額の認定処分がされた場合に、事業者は労働保険料認定処分の取消訴訟において、前提となった業務災害支給処分の違法を取消事由として主張することは許されないとされた事例

(東京地判平29・1・31)

民 事

◎理事長を建物の区分所有等に関する法律に定める管理者とし、役員である理事に理事長を含むものとした上、役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならない旨の定めがある規約を有するマンション管理組合において、理事の互選により選任された理事長につき、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるとされた事例

(最一判平29・12・18)

○成年後見人である司法書士が成年被後見人の預金等の一部を横領した事案において、成年被後見人の相続人である原告が、家庭裁判所の後見監督等に違法があるとして、国家賠償法一条一項に基づき、横領行為による損害額等の支払を求めた事例

(東京高判平29・4・27〈参考原審:東京地判平28・12・14掲載〉)

○ガスレンジのノズルの交換作業によって一酸化炭素が発生したとして損害賠償を求めた事案につき、一酸化炭素を発生させる不完全燃焼が本件作業に起因するものとは断定し難いとして業者の責任を認めなかった事例

(東京高判平29・9・7〈参考原審:東京地判平28・12・16掲載〉)

○一 福島第一原発の事故発生後福島県から自主避難した者につき、一定期間避難を継続する合理性を認めた事例
二 福島第一原発の事故発生後福島県から自主避難した者が避難開始後うつ病等に罹患したことと右事故との間に相当因果関係を認め、うつ病の治療開始から約二年間経過時までを右事故と相当因果関係のある治療期間及び就労不能期間と認めるのが相当とした事例
三 福島第一原発の事故発生後福島県から自主避難した者が避難開始後うつ病等に罹患したことにつき、右事故以外の要因が精神疾患の悪化に相当程度寄与したとして、民法七二二条二項を類推適用して休業損害等につき減額した事例

(大阪高判平29・10・27〈参考原審:京都地判平28・2・18本誌2337号49頁掲載〉)

▽一 国土交通大臣等には、船舶油濁損害賠償保障法の要件に適合するか否かについて、形式的に審査する権限しか与えられておらず、それを超えて保障契約の有効性について審査すべき同法上の権限はないと言わざるを得ず、保障契約の有効性について審査すべき同法上の義務もないとした事例
二 申請者に対して保険者が保険料を受領したことが確認できる書面の提出を求めることは、船舶油濁損害賠償保障法及び同法施行規則上に根拠のない相手方の任意の同意・協力を要請する事実上の行為であり、右書面の提出を求めるか否かは原則として行政機関の裁量に委ねられており、これを怠ったからといって、原則として職務上の義務違反として違法となることはないとした事例

(東京地判平28・3・3)

知的財産権

○一 いわゆる真正商品の並行輸入に関し、商標が商品自体に付されているのではなく、商品の広告に付されている場合について判断した事例
二 いわゆる真正商品の並行輸入に関し、外国の商標権者と我が国の商標権者とが異なる場合の商品の品質管理可能性について判断した事例

(知財高判平30・2・7〈参考原審:東京地判平28・10・20掲載〉)

労 働

○会社の元従業員らが会社とその代表者に対し、代表者による退職強要のハラスメントがあったことを理由とする慰謝料の請求、夏季賞与の減額が無効であることを理由とする減額分の請求、会社都合退職であることを理由とする自己都合退職との退職金差額分の請求、降格の懲戒処分が無効であることを理由とする賃金の差額分の請求をした事案において、退職強要のハラスメントの存在、夏季賞与減額の無効、会社都合退職であること、降格の懲戒処分の無効を認定し、会社とその代表者に対し慰謝料、会社に対し差額分等の支払を命じた事例

(東京高判平29・10・18〈参考原審:長野地松本支判平29・5・17本誌2354号97頁掲載〉)

▽会社の上司の部下に対するパワーハラスメントに関し、上司の不法行為責任及び会社の使用者責任がいずれも肯定された事例

(名古屋地判平29・12・5)

判例評論

二一 遺族補償年金受給につき配偶者のうち夫のみにある年齢要件が憲法一四条一項に反しないとされた事例

(最三判平29・3・21)……倉田原志

二二 株式交換完全子会社における反対株主の株式買取請求権の行使が効力発生日後に撤回された場合に、当該会社は買取請求に係る株式の効力発生日における価格相当額を返還すべきであるとされた事例

(東京高判平28・7・6)……笠原武朗

二三 弁護士会照会に対する報告義務確認請求訴訟の適否と報告義務の存否

(名古屋高判平29・6・30)……今津綾子

二四 一 商標法四条一項一〇号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から五年を経過した後に、商標権侵害訴訟の相手方が、同号該当による無効理由の存在をもって、同法三九条において準用する特許法一〇四条の三第一項の規定に係る抗弁を主張することの許否

 二 商標法四条一項一〇号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から五年を経過した後に、商標権侵害訴訟の相手方が、その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして周知である商標との関係で同号に該当することを理由として、権利濫用の抗弁を主張することの許否
(最三判平29・2・28)……小島喜一郎

二五 路上での連続強盗致傷等事件の被告人を執行猶予とした原判決につき、行為責任の原則に基づく量刑判断の在り方に反して、これまでの量刑傾向の大枠から外れた量刑判断を行ったものであるとして、これを破棄し実刑に処した事例

(東京高判平28・6・30)……柴田 守

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