判例時報 No.2338
平成29年9月21日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
法曹実務のための行政法入門(6)
─―行政の行為形式論②─―行政行為(その二)……高橋 滋
現代型取引をめぐる裁判例(422)……升田 純
国際刑法の窓(11)
──国越犯罪と国越刑法──……森下 忠
■判決録
<行政> 1件
<民事> 5件
<商事> 1件
<知的財産権> 1件
<刑事> 1件
◆記 事◆
法曹実務のための行政法入門(6)
―─行政の行為形式論②─―行政行為(その二)……高橋 滋
現代型取引をめぐる裁判例(422)……升田 純
国際刑法の窓(11)
◆判決録細目◆
行 政
▽一 建設工事に関する談合罪で有罪判決が確定した元市長に対する退職手当返納命令について、市長退職手当条例及び職員退職手当条例が返納命令の根拠となるとした事例
二 右返納命令につき、市長二期目に係る退職手当については、「在職期間中の行為に関し禁錮以上の刑に処せられたとき」という要件を満たさないから返納命令の対象とはならないとした事例
三 右返納命令につき、市長三期目に係る退職手当については、裁量権の逸脱・濫用はないものの、返納命令の対象となるのは市が徴収納付義務者として控除した額を除いた部分に限られるとして、返納命令の一部を取り消した事例
(大阪地判平28・11・2)
民 事
〇建物を暴力団の事務所又は連絡場所として使用することを禁止する仮処分に基づき間接強制の申立てがされた事案につき、代表する者の交替に伴い暴力団の名称が変更されたとしても、債権者が履行を求める債務の内容と債務名義に表示された債務の内容が同一であるとされた事例
(東京高決平28・8・10)
○近親者間の債権譲渡が信託法一〇条の趣旨に反する行為であり、無効であるとされた事例
(広島高判平29・3・9)
▽一 県立高校の男子生徒の自殺につき、同級生らによるいじめ行為と同高校教師らの安全配慮義務違反との間に事実的因果関係を認めたものの、同級生ら及び同高校教師らには右男子生徒の自殺を具体的に予見することまではできなかったとして、右男子生徒が被った精神的苦痛について、右男子生徒の両親から同級生ら及び県に対する損害賠償請求が一部認容された事例
二 同高校教師の発言の一部が、遺族である両親に対する配慮に著しく欠けるものであったとして、県への損害賠償請求が一部認容された事例
(神戸地判平28・3・30)
▽一 市立中学校に在学していた少年らが、同学年の被害少年に対し、いじめによる暴行を加え、遷延性意識障害を負わせたとして、加害少年らに対する損害賠償請求が認容された事例
二 学校外でのいじめにより被害少年の生命、身体等に危険が生じる事態について、学校側は予見可能であったにもかかわらず、これを回避するための措置をとらなかったとして、市に対する国家賠償請求が認容された事例
(さいたま地川越支判平28・12・22)
▽氏名不詳者がツイッターに記事を投稿するに当たって原告の画像を添付したことは原告の肖像権を侵害するとして、原告の経由プロバイダに対する発信者情報開示請求が認められた事例
(新潟地判平28・9・30)
商 事
○一 株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合、会社は原状回復義務としての株式交換完全子会社の株式返還義務の履行不能による同株式の価格相当額の返還義務を負うとした原審の判断が是認された事例
二 右の価格相当額は、株式交換完全子会社の株式の返還義務が履行不能となった株式交換の効力発生日を基準として算定すべきとされた事例
(東京高判平28・7・6)
知的財産権
○一 「他人の商品」(不正競争防止法二条一項三号)に該当するためには、「商品化」を完了していれば足り、その商品化といえるためには、商品としての本来の機能が発揮できるなど販売を可能とする段階に至っており、かつ、それが外見的に明らかになっている必要がある
二 商品展示会に出展された商品は、特段の事情がない限り、開発、商品化を完了し、販売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかになった物品であるとして認められる
三 保護期間(不正競争防止法一九条一項五号ロ)の始期は、開発商品化を完了し、販売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかになった時である
四 応用美術品について、著作物性が否定された一例
(知財高判平28・11・30)
刑 事
○一 いわゆる現金送付型の特殊詐欺事案において、受け子につき詐欺の未必的故意を認めた事例
二 いわゆる「騙されたふり作戦」が行われた特殊詐欺事案において、受け子につき詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めた事例
(福岡高判平28・12・20)