判例時報 No.2313
平成29年1月21日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
裁判員制度の落日(下)……大久保太郎
現代型取引をめぐる裁判例(412)……升田 純
対話小説★戦後裁判官物語(8)……乗本太市
■判決録
<行政> 1件
<民事> 8件
<知的財産権> 1件
<商事> 1件
<労働> 1件
<刑事> 1件
◆記 事◆
裁判員制度の落日(下)……大久保太郎
現代型取引をめぐる裁判例(412)……升田 純
対話小説★戦後裁判官物語(8)……乗本太市
◆判決録細目◆
行 政
▽建築基準法八六条の二第一項に基づく認定処分について、手続的要件の不備を看過した瑕疵が存するとみる余地があるものの、処分後の措置により瑕疵が治癒されたものとされた事例
(東京地判平28・2・16)
民 事
◎破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属
(最一判平28・4・28)
▽業界における標準的なパッケージソフトウェアを利用した企業グループ全体の財務・人事・生産・調達・在庫・販売などの主要業務を一元管理する新システムを開発・構築する業務委託契約において、ベンダーである被告にいわゆるプロジェクトマネジメント義務違反の債務不履行があるとして、ユーザーである原告の損害賠償請求が一部認容された事例
(東京地判平28・4・28)
▽一 顧客から依頼を受けて行った送金手続における誤送金を内容とする銀行の債務不履行と、右誤送金によって生じた株式の信用取引の強制決済による建玉の喪失との間の相当因果関係を認めた事例
二 銀行の誤送金によって生じた株式の信用取引の強制決済による建玉の喪失について、民事訴訟法二四八条を適用し、その損害額を認定した事例
(東京地判平28・1・26)
▽電動車いすを使用する原告の通院や日常生活に使用するためのクレーン・スロープ等が装備された福祉車両が事故で全損した場合において、代車料相当の損害賠償が認められた事例
(東京地判平28・2・5)
▽日本人の元夫婦間の子の養育費につきアメリカ合衆国イリノイ州の裁判所が言い渡した判決について、日本における公の秩序に反しないとして、執行判決が認められた事例
(東京地判平28・1・29)
▽インターネット上のなりすまし行為によって本人以外の別人格が構築され、本人の言動であると他者に受け止められるようになり、なりすまされた者が平穏な日常生活や社会生活を送れなくなるほど精神的苦痛を受けたような場合には、他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権を侵害することがあることを示した事例
(大阪地判平28・2・8)
▽一 交通事故の被害者である原告が軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発症したと主張したところ、これを認容した労災認定とは異なり、原告の右主張を排斥した事例
二 本件事故前に発生した別件の交通事故による既往症を考慮し、素因減額により原告に発生した損害の三割を減額した事例
(さいたま地熊谷支判平28・3・14)
▽交通事故による受傷の可能性を否定する自動車事故工学鑑定の意見書(私的鑑定書)について、その信用性を排斥した事例
(松山地今治支判平28・2・9)
知的財産権
▽一 商標法三六条一項及び二項に基づく標章の使用差止等請求が、権利の濫用に当たり、許されないとされた事例
二 不正競争防止法三条一項及び二項に基づく商品等表示の使用差止等請求において、同法二条一項一号及び二号にいう類似性がいずれも否定された事例
(東京地判平27・11・13)
商 事
▽株主総会の招集に際し、株主への監査報告の提供がなかったとして、株主総会決議の取消しが認められた事例
(東京地判平27・10・28)
労 働
◎一 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無についての判断の方法
二 合併により消滅する信用協同組合の職員が、合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において、右変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判平28・2・19)
刑 事
▽自白以外の客観的事実だけからは被告人を殺人犯と認定できないが、客観的事実に自白供述を併せれば被告人を殺人犯と認定できるとして、無期懲役が言い渡された事例
(宇都宮地判平28・4・8)