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判例時報 No.2268*
             平成27年11月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 駒林良則 山下義昭 岩本浩史 丸山絵美子
 川島いづみ 田中慎一 滝沢 誠
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 9件
<知的財産権> 1件
<商事> 1件
<労働> 1件
<刑事> 1件


◆記 事◆

二〇一五年安保関連法強行採決事件・私の意見(2)――安保法制論議望見――……棟居快行

◆判例特報◆

 公職選挙法一三条一項、別表第一の衆議院(小選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性――衆議院議員定数訴訟高裁判決
(①大阪高判平27・3・26、②東京高判平27・3・25、③福岡高判平27・3・25)

◆判決録細目◆

行 政

◎個人住民税の所得割に係る賦課決定の期間制限の特例を定める地方税法(平成二五年法律第三号による改正前のもの)一七条の六第三項三号にいう決定,裁決又は判決があった場合の意義

(最三判平27・5・26)

民 事

○都心の一等地にある借地上の建物が賃借人個人から関係法人に売買され所有名義が変更されたことは土地賃借権の無断譲渡に当たるが、利用実態に変化がなく、登記名義も原状に復したこと等から、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるとされた事例

(東京高判平26・10・15)

○ビルの高圧洗浄作業により階下の店舗に漏水事故が発生したとは認められないとし、店舗の営業者からなされた洗浄作業者に対する損害賠償請求が棄却された事例

(名古屋高判平27・5・14)

○行政書士の犯罪報道に関する新聞記事について名誉棄損を認め、慰謝料として一〇〇万円を認めた事例

(広島高松江支判平27・6・3)

▽動産を目的物とする所有権留保特約付割賦販売において、買主が破産した場合に売主が別除権を行使するためには破産手続開始の時点で対抗要件を具備していることを要するとした上で,占有改定による引渡しを認定した事例

(東京地判平27・3・4)

▽倒産した会社の従業員らが,労働組合である被告の組合員として,団体交渉に応ずるよう求めて,当該会社の代表者の商業登記簿上の住所地であり,同代表者の離婚した元配偶者である原告が居住する居宅付近で行った情宣活動が,原告の住居の平穏に関する人格的利益を侵害する違法な行為を構成するとして,原告の被告に対する差止請求及び慰謝料請求を認容した事例

(東京地判平27・4・23)

▽日用雑貨の小売業を全国で展開する事業者が原子力発電所の事故の被災地の直営店を撤退した場合について、事故と店舗撤退との間の相当因果関係が否定された事例

(東京地判平27・3・20)

▽一 医師が経口抗凝固薬であるワーファリンカリウムを含有する錠剤(販売名:ワーファリン錠)を処方するに当たり,その添付文書に記載された使用上の注意事項に従わずに血液凝固能検査をしなかったことに特段の合理的理由はないとして,医師の過失が認められた事例
二 約四か月間にわたり血液凝固能検査を受けることなくワーファリン錠を服用し続けた患者が脳内出血により死亡した事案において,患者の死亡と血液凝固能検査を実施しなかった医師の過失との間に相当因果関係があるとされた事例

(神戸地判平27・1・20)

▽一 東北地方太平洋沖地震に伴い発生した津波により被災者が死亡したことにつき、気象庁が津波警報の第一報において津波の高さを実際より過小に発表したことは、予測精度に技術的限界があるので過失がないとされた事例
二 津波の被災者が津波警報の第二報をJアラートシステム等を介して聞知できなかったことにつき、陸前高田市の整備していた地域防災計画に基づく機器、予備電源の基準に達していなかったとは言えず、予備電源の使用用途に過失がないとされた事例

(盛岡地判平27・2・20)

▽一 既に二五歳となった無職無収入の子の扶養義務については夫婦間の扶養義務に基づく婚姻費用分担の問題ではなく、親族間の扶養義務として検討・考慮されるべき問題であるとされた事例
二 新たに婚姻費用分担義務を定めるに当たり,以前の婚姻費用減額審判においては事情の変更と認められなかった申立人による婚外子の認知についても,本件における事情変更として考慮するのが相当であるとされた事例

(大阪家審平26・7・18)

知的財産権

○「IGZO」の商標は,登録査定時において,指定商品の原材料を表したものとして事業者に認識されるものであるから,自他商品識別力を有さず,また,特定人による独占使用を認めることが公益上適当であるともいえないとして,商標登録を無効とした審決が維持された事例

(知的財産高判平27・2・25)

商 事

○株主の請求を受けて取締役責任追及訴訟を提起した監査役からの費用償還請求が認容された事例

(東京高判平24・7・25)

労 働

▽一 大学に巨額の損害を与え,大学の信用を毀損した教授について,教授としての適格性を欠くとして解雇を有効と認めた事例
二 長期間にわたる自宅待機命令の有効性を認めた事例
三 大学に生じた損害について,その原因を作出した教授に,その損害の四分の一を負担させた事例

(東京地判平26・12・24)

刑 事

◎公判前整理手続で明示された主張に関しその内容を更に具体化する被告人質問等を刑訴法二九五条一項により制限することはできないとされた事例

(最二決平27・5・25)

※訂正箇所

●本誌36頁・情報欄3行目
 誤 …一部認容
 正 …控訴棄却

●本誌106頁・3段・14行目
 誤 …の特定を表示記述する
 正 …の特性を表示記述する

●同17~21行目

 誤 …、特定人による独占使用が公益上適当でないとともに、多くの場合自他商品識 別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものである
 正 …、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである

●本誌124頁・3段・31行目
 誤 …を棄却した。
 正 …を認容した。

判例評論

五五 議員の政務調査費の支出に係る一万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿が民訴法二二〇条四号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当らないとされた事例

(最二決平26・10・29)……駒林良則

五六 産業廃棄物の最終処分場の周辺住民が産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の許可処分の無効確認訴訟並びに各処分業の許可更新処分の取消訴訟等の原告適格を有するとされた事例

(最三判平26・7・29)……山下 義昭

五七 生活保護法六二条三項に基づく保護の廃止の決定に先立ち、処分行政庁による被保護者に対する同法二七条一項に基づく指示が生活保護法施行規則一九条により書面によって行われた場合において、当該書面に記載されていた事項に代わる対応として処分行政庁が口頭で指導していた事項が指示の内容に含まれると解することはできないとされた事例

(最一判平26・10・23)……岩本浩史

五八 共同企業体を請負人とする請負契約における請負人「乙」に対する公正取引委員会の排除命令等が確定した場合、「乙」は注文者「甲」に約定の賠償金を支払うとの約款条項の解釈

(最二判平26・12・19)……丸山絵美子

五九 MBOの頓挫により会社に生じた損害について取締役の責任が一部認容された事例――シャルレMBO株主代表訴訟事件

(神戸地判平26・10・16)……川島いづみ

六〇 破産した外国語会話教室を経営する会社の取締役らが法令遵守義務および監視義務に違反したとして元受講生に対する第三者責任が認められた事例

(大阪高判平26・2・27)……田中慎一

六一 女子高校生に強いてわいせつな行為をして殺害したとして起訴された事案につき、目撃証言の信用性を否定するなどして事実誤認を理由に有罪(無期懲役)の第一審判決を破棄し無罪とした原判決が是認された事例――舞鶴女子高校生殺害事件上告審決定

(最一決平26・7・8)……滝沢 誠

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