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判例時報 No.2181
             平成25年6月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 友岡史仁 越智敏裕 松井和彦 薮口康夫
 岡田幸宏 藤原稔弘 森永真綱 土本武司
 
■判決録
<行政> 2件
<民事> 5件
<知的財産権> 2件
<商事> 1件
<刑事> 1件


◆判例特報◆

 一 国際海上運送をする船舶が公海を航行中に積載貨物(危険物)を原因とする事故が発生し当該船舶及び他の運送品に損害が生じた場合における当該危険物の荷送人の不法行為責任の準拠法
二 国際海上運送をする船舶に積載された貨物が船倉内で化学反応を起こして高熱を発し当該船舶及び他の運送品に損害が生じた場合において、当該貨物につき法令で定められた危険物である旨の分類表示を怠った荷送人の不法行為責任が認められた事例
三 国際海上運送をする船舶に積載された危険物が船倉内で化学反応を起こして高熱を発し当該船舶及び他の運送品に損害が発生した場合において、当該危険物の荷送人の損害賠償責任につき失火責任法の適用がないとされた事例

(東京高判平25・2・28)

◆判決録細目◆

行 政

○一 台船の引船が瀬戸内海音戸ノ瀬戸を航行する場合において、引船の船長としては、水路を見通して、南下中の貨物船を視認して船舶の通過を待つべき注意義務を負っていたのに、水路内を十分に見通すことがないまま進入し、貨物船を視認できる状況になっても気付かず続航して針路を塞いだ結果、衝突を避けようとした貨物船が右舵をとり護岸に衝突する海難事故が発生したときは、引船の船長は船員の常務としての注意義務を怠った過失があるとされた事例
二 瀬戸内海音戸ノ瀬戸において台船の引船との衝突を回避するために貨物船が右舵をとり護岸に衝突した事故について、貨物船の船長及び引船の船長双方に過失があるとして、海難審判所のした二級小型船舶操縦士である引船の船長に対する戒告の裁決が適法とされた事例

(東京高判平25・2・6)

▽法人税の修正申告書の提出が「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」(国税通則法六五条五項)に該当すると認められた事例

(東京地判平24・9・25)

民 事

○東京地裁を専属的合意管轄裁判所とする合意の存在が認められる場合でも訴訟の著しい遅滞を避けるため民訴法一七条により訴訟を神戸地裁に移送するのが相当であるとされた事例

(大阪高決平25・1・7)

▽工業所有権審議会が,弁理士法一一条四号に基づく弁理士試験の短答式試験の一部科目の免除申請につき,申請者が大学院において単位を修得した科目の授業が弁理士法施行規則五条三項にいう「講義」により行われたものとは認められないとして,その免除を認めなかった判断に,国家賠償法一条一項にいう「違法」はないとして,損害賠償の請求が棄却された事例

(東京地判平24・6・29)

▽システムエンジニアの女性従業員が不整脈により死亡したのは過労が原因であるとして、遺族が雇用会社に対し安全配慮義務を怠ったとして求めた損害賠償が認容された事例

(福岡地判平24・10・11)

▽小学生の父母による担任教員に関する連絡帳への書込み、教育委員会への文書の提出等が名誉毀損、侮辱等の不法行為に当たらないとされた事例

(さいたま地熊谷支判平25・2・28)

▽再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法七三三条を改正しない国会議員の行為と国家賠償責任の有無

(岡山地判平24・10・18)

知的財産権

○一 ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が、いかに、具体的であり有益かつ有用なものであったとしても、その課題解決に当たって、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めや、数学上の公式等を利用したものであり、自然法則を利用した部分が全く含まれない場合には、そのような技術的思想の創作は、特許法二条一項所定の「発明」には該当しない
二 「省エネ行動シート」に係る特許出願について、心理学的な法則(認知のメカニズム)を利用し、領域の大きさを認識・把握し、その大きさの意味を理解することは、専ら人間の精神活動に基づくものであって、自然法則を利用したものとはいえないとされた事例

(知的財産高判平24・12・5)

▽インターネット上のウェブサイトに、登録商標と類似である標章の使用をすることについて、ウェブサイトでの使用差止請求を認容し、商標権侵害に基づく損害として、類似標章を付していない商品の販売についても、損害として認められた事例

(大阪地判平24・7・12)

商 事

▽睡眠導入剤を使用した自動車運転中の事故について、保険会社の免責が認められた事例

(岐阜地判平25・2・15)

刑 事

◎公判調書中の被告人供述調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない電子メールが独立の証拠又は被告人の供述の一部にならないとされた事例

(最三決平25・2・26)

◆最高裁判例要旨(平成二五年三月分)

判例評論

三五 省エネルギー法(平成一七年法律九三号改正前)一一条に基づき製造事業者が経済産業局長に対し提出した定期報告書に記載された工場単位の燃料等及び電気の使用量等の数値情報が行政機関情報公開法五条二号イ(法人情報)に該当するものとされた事例

(①、②最二判平23・10・14)……友岡史仁

三六 特別監視地域等に指定された後に一定程度減車していないことや増車したことを理由として加重された道路運送法四〇条に基づく輸送施設使用停止処分が、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法なものであるとして取り消された事例――ワンコイン八尾事件第一審判決

(大阪地判平24・2・3)……越智敏裕

三七 契約締結前における説明義務違反の法的性質

(最二判平23・4・22)……松井和彦

三八 主権免除を理由とする訴え却下判決が確定した後に、主権免除の範囲に関する判例が変更されたことを受けて、同一訴訟物について後訴を提起した場合の後訴の適法性――第二次ナウル共和国金融公社事件

(東京地判平23・10・28)……薮口康夫

三九 詐害判決であることを民事訴訟法三三八条一項三号の代理権欠缺に準じた再審事由に当たるとして第三者再審を認めることはできないとされた事例

(東京高決平24・8・23)……岡田幸宏

四〇 基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に一時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約と割増賃金の支払義務――テックジャパン事件

(最一判平24・3・8)……藤原稔弘

四一 住居侵入後、キャッシュカードの窃取に着手し、いつでも容易にその占有を取得できる状態に置いた上で、同キャッシュカードの占有者に脅迫を加えて同キャッシュカードの暗証番号を強いて聞き出した行為につき、刑法二三六条二項の強盗罪が成立するとされた事例

(東京高判平21・11・16)……森永真綱

四二 刑訴法三八二条にいう「事実誤認」の意義等

(最一判平24・2・13)……土本武司

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