判例時報 No.2166
平成25年1月1日 号 定価:1466円
(本体価格:1333円+10%税)
<最新判例批評>
市川正人 西本靖宏 園田賢治 西村雅子 本山雅弘
伊藤靖史 肥塚肇雄 佐久間修 道谷 卓
■判例特報
参議院議員定数訴訟大法廷判決
(最大判平24・10・17)
■判決録
<行政> 1件
<民事> 6件
<知的財産権> 2件
<刑事> 1件
◆判例特報◆
公職選挙法一四条、別表第三の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
――参議院議員定数訴訟大法廷判決(最大判平24・10・17)
◆判決録細目◆
行 政
▽行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいてされた内閣官房報償費の支出に関する行政文書の開示請求に対し、対象文書に同法五条三号及び同条六号に規定する不開示情報が記録されていることを理由としてされた不開示決定の一部が違法であるとされた事例
(大阪地判平24・3・23)
民 事
○被告発行の週刊誌の記事により名誉を毀損された等として損害賠償等が請求された件について、当該記事において摘示された事実が真実であると信じたことについて相当な理由があったものとされ、原告の請求が棄却された事例
(東京高判平23・11・9)
○市がゴルフ場敷地の固定資産の評価に関し山林部分とコース部分を分離評価せずに一括評価し課税したことを違法として求めた国家賠償請求につき、市の担当者らに通常尽くすべき注意義務違反はないとして請求が棄却された事例
(名古屋高判平24・7・19)
▽停止条件付売買契約において停止条件が不成就で契約が消滅したときは、一切の金員の請求をすることができない旨の合意がされた場合、この合意に違反して訴訟を提起したことが債務不履行に当たるとされた事例
(東京地判平24・7・19)
▽友人四名の海外旅行資金等の積立てを主たる目的とし、そのうちの一名を代表者とする銀行預金が、団体の預金ではなく代表者の預金であるとされた上、信託財産であるとされた事例
(東京地判平24・6・15)
▽市発注工事を受注したゼネコンより接待を受けたとの新聞記事で名誉を毀損されたとする元市長の右新聞を発行した新聞社に対する損害賠償請求につき、新聞社の主張する免責事由(真実性、真実相当性)が斥けられた事例
(大阪地判平24・6・15)
▽光市母子殺害事件の死刑囚(犯行時一八歳)が実名で出版物の対象とされ顔写真及び手紙(私信)を公表されたなどとして、著者及び出版社に対して求めた出版差止及び損害賠償について、損害賠償請求は一部認容されたが出版差止請求は棄却された事例
(広島地判平24・5・23)
知的財産権
○本件明細書に接した当業者は、「減塩醤油類」に係る本件発明において、食塩濃度が下限値に近い場合には、出願時の当業者の技術常識を参酌することにより、カリウム濃度を上限値近くにすることにより、減塩醤油の塩味を強く感じさせることができると理解するものであり、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されており、サポート要件を満たす
(知的財産高判平24・6・6)
○エーリアルブラックに似た極太のゴシック書体で「Kawasaki」の欧文字を書してなる本願商標は、商標法三条一項三号、四号に該当せず、仮に該当するとしても、同条二項に該当すると判断された事例
(知的財産高判平24・9・13)
刑 事
◎児童ポルノのURLをホームページ上に明らかにした行為は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律七条四項の「公然と陳列した」には当たらないとする反対意見が付された事例
(最三決平24・7・9)
判例評論
一 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為の違憲性を解消するためにとる手段が、違憲性を解消する合理的で現実的な手段であるとされた事例――砂川政教分離(空知太神社)訴訟第二次上告審判決
(最一判平24・2・16)……市川正人
二 同一建物に居住しその敷地を共有する者の間で、土地建物を分割し、一方が分割取得した建物部分を取り壊し、その敷地部分を第三者に譲渡した場合において、租税特別措置法三五条一項(平成一八年法律一〇号による改正前のもの。)の適用が認められた事例
(東京高判平22・7・15)……西本靖宏
三 一 求償権が破産債権である場合において財団債権である原債権を破産手続によらないで行使することの可否(①事件)
二 求償権が再生債権である場合において共益債権である原債権を破産手続によらないで行使することの可否(②事件)
(①最三判平23・11・22、②最一判平23・11・24)……園田賢治
四 商標法施行規則別表第三五類三に定める「商品の販売に関する情報の提供」の意義
(最三判平23・12・20)……西村雅子
五 著作権法一〇四条の五所定の製造業者の協力義務の意義と同法施行令一条二項三号の特定機器の解釈
(知的財産高判平23・12・22)……本山雅弘
六 テクモ株式買取価格決定申立事件許可抗告審決定
(最二決平24・2・29)……伊藤靖史
七 人身傷害保険金の充当と請求権代位の範囲
(最一判平24・2・20)……肥塚肇雄
八 日本債券信用銀行の代表取締役らが、重要な事項に関して虚偽記載のある有価証券報告書を提出した事件につき、資産査定通達による改正後の決算経理基準には解釈の幅があり、ただちに新たな基準とみるには明確性が欠けるなど、なお過渡的な状況にあったため、これまで「公正ナル会計慣行」とされていた税法基準により、支援先等に対する貸出金の資産査定をすることも許容されるとして、一審の有罪判決を維持した原判決を破棄差し戻した事例――日債銀粉飾決算事件上告審判決
(最二判平21・12・7)……佐久間修
九 弁護人からの証拠開示命令請求棄却決定に対する即時抗告提起期間の起算日
(最三決平23・8・31)……道谷 卓