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判例時報 No.2154
             平成24年9月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 井上典之 藤井俊二 杉本和士 行澤一人 丸山雅夫
 
■特報
 神栖市におけるヒ素による健康被害等責任裁定申請事件
  (公調委裁定平24・5・11)
 
■判決録
<民事> 4件
<知的財産権> 2件
<商事> 1件
<刑事> 2件


◆特 報◆

 不法投棄された有機ヒ素化合物(旧陸軍が製造していた毒ガス兵器の原料)による地下水汚染により、地下水を利用していた住民に健康被害及び農業被害が発生したことについて、水質汚濁防止法上の監視義務等を負っていた県の損害賠償責任が認められた事例

――神栖市におけるヒ素による健康被害等責任裁定申請事件(公調委裁定平24・5・11)

◆判決録細目◆

民 事

○内縁解消後、財産分与の審判手続中に分与義務者が死亡した場合における財産分与義務の相続性(積極)

(大阪高決平23・11・15)

▽インターネットのウェブサイトにおける書き込みが不法行為に当たる場合につき、書き込みの発信者の調査費用が損害と認められた事例

(東京地判平24・1・31)

▽貸主男性から借主女性に対する貸金返還請求につき、右貸付けは不倫関係維持を動機とする公序良俗に反するものであるが、借主女性にも右動機を利用し詐術を用いて貸付けを実行させた責があるとして、不法原因給付として返還を拒めるのは二分の一の範囲に限られるとされた事例

(大阪地判平24・4・24)

▽墓地を所有・管理する寺院に対する、右墓地の区画使用権者による無典礼方式での妻の遺骨の埋蔵の妨害禁止請求が認容された事例

(宇都宮地判平24・2・15)

知的財産権

○発明の名称を「医療用器具」とする特許発明について、主引用例である甲一に、相違点一に係る構成を示唆する記載、それを試みたはずであるとの具体的な示唆等は何ら存在しないとして、甲一記載の発明に周知慣用技術を適用して、又は甲二記載の発明を組み合わせて、相違点一に係る構成に想到することは容易とはいえないと判断された事例

(知的財産高判平23・1・31)

○一 出願日当時、製造可能となっていたことが明らかで、作用機序が異なることが技術常識であり、併用投与した場合に拮抗するとは認められない二つの異なる糖尿病予防・治療薬を併用投与する発明についての明細書の記載が、実施可能要件を満たし、当該併用投与に関する実施例の記載がなくてもサポート要件を満たすとされた事例
二 優先権主張日当時、作用機序が異なることが技術常識であり、併用投与した場合に拮抗するとは認められない二つの異なる糖尿病予防・治療薬について、明細書が併用投与した場合の相加的効果を裏付けているにとどまる場合、当業者は、これらを併用投与する構成が記載された引用例から、当該併用投与する発明を容易に想到することができたとされた事例

(知的財産高判平24・4・11)

商 事

▽商品先物取引により損害を被った顧客が、仲介会社、同社の取締役及び勧誘した従業員に対し、顧客に適格性がないのにこれを無視してなした違法勧誘によるとして求めた損害賠償請求が認容された事例

(名古屋地判平24・4・11)

刑 事

◎強制執行妨害幇助罪の成立を認めた原判決の事実認定が是認された事例

(最三決平23・12・6)

◎睡眠薬等を摂取させて数時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為につき傷害罪の成立が認められた事例

(最三決平24・1・30)

◆最高裁判例要旨(平成二四年五・六月分)

判例評論

四六 在外日本人最高裁判所裁判官国民審査権事件第一審判決

(東京地判平23・4・26)……井上典之

四七 建物区分所有法五九条一項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権および敷地利用権の譲受人に対して同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることができないとされた事例

(最三決平23・10・11)……藤井俊二

四八 連棟式一棟建物の区分所有住戸部分の収去土地明渡しの強制執行の対象部分には隣接住戸部分の区分所有権者が共有持分権を有する共有部分である梁、支柱等が含まれており、右隣接住戸部分の区分所有権者は強制執行の目的物について譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者に当たるとして、右隣接住戸部分の区分所有権者の第三者異議の訴えが認容された事例

(大阪高判平23・3・30)……杉本和士

四九 一 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における、上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額

 二 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得しなかった場合における、当該虚偽記載の公表後のいわゆるろうばい売りによる上場株式の市場価額の下落による損害と当該虚偽記載との相当因果関係(①、②事件)
――西武鉄道株主集団訴訟上告審判決
(①、②最三判平23・9・13)……行澤一人

五〇 一 街頭募金詐欺について包括一罪と解することができるとされた事例

 二 包括一罪を構成する街頭募金詐欺について、その罪となるべき事実の特定に欠けるところはないとされた事例
(最二決平22・3・17)……丸山雅夫

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