判例時報 No.2147
平成24年6月21日 号 定価：838円
（本体価格：762円＋10％税）
■判決録
＜行政＞ 2件
＜民事＞ 5件
＜知的財産権＞ 3件
＜商事＞ 1件
＜労働＞ 2件
◆記 事◆
判事補の皆さんへ――名古屋地裁判事補会での講演から……門口正人
民事裁判の基礎理論・法的判断の構造分析（2）（上）
――要件事実論の基礎的な概念・知識の検討……河村 浩
現代型取引をめぐる裁判例 （304）……升田 純
海外刑法だより（325）国連の汚職防止条約（下）……森下 忠
◆判決録細目◆
行 政
◎仮換地の指定が照応の原則を定める土地区画整理法八九条一項に違反しないとされた事例
（最一判平24・２・16）
▽宗教法人が霊園の墓地等の使用者から永代使用料等として収受した金員のうち、墓石及びカロート（墓石の基礎と一体となった骨壺等を収納するための設置物）に係る部分は、法人税法上の収益事業による所得に該当し、また、消費税の課税対象になると判示された事例
（東京地判平24・１・24）
民 事
◎インターネット上のウェブサイトに記事を掲載した行為が名誉毀損の不法行為を構成するとされた事例
（最二判平24・３・23）
▽キャッシュカードによるＡＴＭでの多数回にわたる合計二〇〇〇万円余の預金の払戻しにつき、盗難カードを用いて行われた不正なものであるとして、銀行の補填責任が認められた事例
（東京地判平24・１・25）
▽銀行の預金等を相続させる旨の遺言によって指定された遺言執行者が銀行に普通預金の払戻しを求めたのに対し、銀行がこれを拒否したことが不法行為に当たらないとされた事例
（東京地判平24・１・25）
▽証券会社の従業員の勧誘により外国証券会社が保証し、関連会社の発行する他社株転換社債を購入した顧客が、当該外国証券会社等の破綻により損害を被った場合に、証券会社の従業員の勧誘に説明義務違反が認められた事例
（大阪地判平23・12・19）
▽中学生が私営プールで逆飛び込みをして重傷を負った場合、プール経営会社の安全配慮義務違反が否定された事例
（岐阜地多治見支判平24・２・９）
知的財産権
○引用発明と引用刊行物二記載の技術は解決課題及び解決手段において異なり、引用発明に引用刊行物二の技術を適用することによって本願発明に至ることが容易であるとする理由は存在しないとして、本願発明が、引用発明、引用刊行物二記載の事項及び周知の事項に基づいて容易に発明できたとした審決が取り消された事例
（知的財産高判平24・１・31）
○たばこ等及びマッチを指定商品とする商標の登録出願について、たばこ等の取引者及び需要者は、取引に当たり商標の細部の差異についても十分な注意を払うものであって、出願に係る商標と引用商標とでは、その出所の識別に当たって誤認混同を生じるおそれはない一方、マッチについては、そのような取引の実情が認められないから、両者は類似の商標であるとして、拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決が維持された事例（①、②事件）
（①、②知的財産高判平24・２・15）
商 事
○個人財産総合保険契約の個人賠償責任総合補償特約約款における地震免責条項にいう「地震」は強度、規模等により限定的に解釈することはできず、地震と相当因果関係のある損害は地震免責条項の対象になるとされた事例
（東京高判平24・３・19）
労 働
◎一 公立の高等学校又は養護学校の教職員が卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする戒告処分が、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものとして違法であるとはいえないとされた事例（①事件）
二 公立養護学校の教職員が卒業式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする減給処分が、裁量権の範囲を超えるものとして違法であるとされた事例（①事件）
三 公立養護学校の教員が同校の記念式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする停職処分が、裁量権の範囲を超えるものとして違法であるとされた事例（②事件）
四 公立中学校の教員が卒業式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わなかったことを理由とする停職処分が、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものとして違法であるとはいえないとされた事例（②事件）
――教職員国旗国歌訴訟（懲戒処分取消等請求訴訟）上告審判決
（①、②最一判平24・１・16）
