バックナンバー

判例時報 No.2145
             平成24年6月1日 号 定価:1466円 (本体価格:1333円+10%税)

<最新判例批評>
 横山信二 武川幸嗣 千葉恵美子 猪股孝史 
 工藤莞司 山田創一 岩間康夫 松田岳士
 
■判例特報
 生活保護老齢加算廃止訴訟上告審判決
  (最三判平24・2・28)
 刑訴法三八二条にいう事実誤認の意義、ほか
  (最一判平24・2・13)
 
■判決録
<行政> 1件
<民事> 4件
<知的財産権> 3件
<商事> 2件
<労働> 1件
<刑事> 1件


◆判例特報

①生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和三八年厚生省告示第一五八号)の改定が生活保護法三条又は八条二項の規定に違反しないとされた事例

――生活保護老齢加算廃止訴訟上告審判決(最三判平24・2・28)

②一 刑訴法三八二条にいう事実誤認の意義
二 刑訴法三八二条にいう事実誤認の判示方法
三 覚せい剤を密輸入した事件について、被告人の故意を認めず無罪とした第一審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法三八二条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

(最一判平24・2・13)

◆判決録細目◆

行 政

▽弁護士が弁護士会等の役員としての活動に伴い支出した懇親会費等は、その事業所得の計算上必要経費に算入することができず、また、消費税及び地方消費税の額の計算上課税仕入れに該当しないとされた事例

(東京地判平23・8・9)

民 事

○賃貸人から貸室の管理を委託されている管理会社の従業員が当該貸室内にあった賃借人の家具等を搬出し玄関鍵を交換して賃借人に退去を余儀なくさせた場合において
1 管理会社の当該従業員の不法行為に対する使用者責任が認められた事例
2 賃貸人の当該従業員の不法行為及び管理会社の使用者責任との共同不法行為責任が認められた事例

(大阪高判平23・6・10)

○競売手続で買い受けた建物付きの土地が当該建物を取り壊して新たに建物を建設すること(再築)ができない土地であった場合に買受人の当該建物付きの土地の売却代金から配当を受けた債権者に対する当該代金の返還請求が認容された事例

(名古屋高判平23・2・17)

▽Xの人格権に基づきYらのXに対する支払要求行為の差止めが認められた事例

(東京地判平23・12・27)

▽申込者が暴力団員であることを知らないでしたホテル利用契約は要素の錯誤により無効であるとされた事例

(広島地判平22・4・13)

知的財産権

○発明を特定するために必要と認める事項の全てが記載された特許請求の範囲や、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載した発明の詳細な説明に記載されたものがあるからといって、直ちに、思想又は感情を創作的に表現したプログラムの著作物が存在することにはならない

(知的財産高判平23・12・8)

○アナログチューナー非搭載DVD録画機器につき、指定管理団体から製造業者に対する録画補償金相当額の支払請求が認められなかった事例

(知的財産高判平23・12・22)

▽原告の販売する包丁研ぎ器(原告製品)の製造元である中国の会社から、原告製品の形態と実質的に同一である被告製品を輸入して日本国内で販売した被告の行為につき、不正競争防止法二条一項三号に基づく損害賠償が認容された事例

(大阪地判平23・8・25)

商 事

◎一 自動車保険契約の人身傷害条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権の代位取得の有無
二 自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合において上記条項に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲

(最一判平24・2・20)

○火災共済契約及び生命共済契約に基づく火災共済金及び生命共済金の支払請求について、共済事故に係る建物の火災が共済契約者ないしはその意を受けた第三者による放火により生じたものと推認するのが相当であるとして、故意免責により火災共済金の支払請求が棄却されるとともに、生命共済契約の解除により、生命共済金の支払請求についても棄却された事例

(福岡高判平24・2・24)

労 働

▽航空会社の客室乗務員に対する雇止めは有効であるが、退職勧奨には一部違法な行為があるとして、地位確認請求が棄却され、損害賠償請求が一部認容された事例

(東京地判平23・10・31)

刑 事

◎法務大臣の許可を受けないで、消費者金融会社から不良債権を譲り受けてその管理回収業を営んだ行為が、債権管理回収業に関する特別措置法三三条一号、三条に該当するとされた事例

(最三決平24・2・6)

◆最高裁判例要旨(平成二四年三月分)

判例評論

二九 検察審査会法四一条の六第一項所定の検察審査会による起訴すべき旨の議決の適否につき行政事件訴訟を提起して争い、これを本案とする行政事件訴訟法二五条二項の執行停止の申立てをすることができるか

(最一決平22・11・25)……横山信二

三〇 生命保険金の債権者が無権限の受領者に対して不法行為責任を追及するにあたり、受領者が損害の発生を否認して争うことが信義則に反するとされた事例

(最二判平23・2・18)……武川幸嗣

三一 一 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法一〇条により無効となる場合(①事件)

 二 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法一〇条により無効ということはできないとされた事例(①・②事件)
(①最一判平23・3・24、②最三判平23・7・12)……千葉恵美子

三二 一 仲裁手続が我が国の手続的公序に反することは、仲裁法四四条一項八号の仲裁判断の取消事由に含まれる

 二 当事者間に争いのある事実を争いのない事実として仲裁判断をすることは我が国の手続的公序に反する
(東京地決平23・6・13)……猪股孝史

三三 一 商標法四条一項一五号違反を理由とする無効審判不成立審決の取消訴訟において、Xの引用商標の使用態様は、商品「レコード(CDを含む。)」の販売等又は同商品の販売に係る顧客に対する便益の提供に限られるもので、本件総合小売等役務に係る本件商標権によって保護される独占権の範囲に含まれるものではないから、Yが本件商標を使用したとしても、役務の出所が混同するおそれはないとした事例

 二 本件特定小売等役務には、『「レコード(CDも含む。)」の小売又は卸売の業務に係る顧客に対する便益の提供』は、含んでいないから、本件商標を本件特定小売等役務に使用しても、Xの業務に係る商品又は役務との間で、出所の混同を来すことはないとした事例
(知的財産高判平23・9・14)……工藤莞司

三四 公立学校の教諭の勤務時間外の勤務の違法性

(最三判平23・7・12)……山田創一

三五 分譲マンションの各住戸にビラ等を投かんする目的で、同マンションの共用部分に立ち入った行為につき、刑法一三〇条前段の罪が成立するとされた事例

(最二判平21・11・30)……岩間康夫

三六 高等裁判所の判決中の判断がその上告審である最高裁判所の決定において否定された場合における上記判決の刑訴法四〇五条三号の「判例」該当性

(最三決平22・3・16)……松田岳士

Copyrightc 株式会社判例時報社 All Rights Reserved.

PAGE TOP