判例時報 No.2123
第2123号(平成23年11月1日) 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判例特報◆ 一 公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法一九条に違反しないとされた事例(①事件) 二 公立高等学校の校長が教職員に対し卒業式 […]
◆判例特報◆
一 公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法一九条に違反しないとされた事例(①事件)
二 公立高等学校の校長が教職員に対し卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法一九条に違反しないとされた事例(②事件)
三 公立中学校の校長が教諭に対し卒業式又は入学式において国旗掲揚の下で国歌斉唱の際に起立して斉唱することを命じた職務命令が憲法一九条に違反しないとされた事例(③事件)
四 公立高等学校等の校長が教職員に対し卒業式又は入学式において国旗掲揚の下で国歌斉唱の際に起立することを命じた職務命令が憲法一九条に違反しないとされた事例(④事件)
(①最二判23・5・30、②最一判23・6・6、③最三判23・6・14、④最三判23・6・21)
◆判決録細目◆
民 事
◎土地を時効取得したと主張する者が、当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして、国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき、確認の利益を欠くとされた事例(最二判23・6・3)
○一筆の土地の一部についての権利を保全するため当該一筆の土地全部について処分禁止の仮処分の申立てをすることは、保全の必要性を欠くとして理由はないが、債務者に代位して当該部分の分筆手続を行い、仮処分登記手続をするため等特段の事情があるときは、申立ては理由があるというべきであるとして、原決定を取り消して事件が原審に差し戻された事例(大阪高決23・4・6)
▽一(1)ウェブサイトのニュース欄に掲載された死者に係る記事について、遺族の死者
に対する敬愛追慕の情を、受忍限度を超えて侵害するものとは認められないとされた事例
(2)ウェブサイトのニュース欄に掲載された死者の手錠姿の写真について、遺族の死者に対する敬愛追慕の情を、受忍し難い程度に侵害するものと認められた事例
二 ウェブサイトの運営会社が、死者の手錠姿の写真の配信を受けてこれをウェブサイ
トに掲載したことにより、配信をした新聞社と共同不法行為責任を負うとされた事例
(東京地判23・6・15)
▽ビルの清掃を行っていた業者の従業員が清掃中、ビルを事務所としていた信託銀行の従業員が転倒した事故につき、転倒した者の事故態様等に関する供述の信用性が否定され、清掃業者の使用者責任が否定された事例(東京地判23・6・15)
▽校庭で小学六年生(一一歳一一 か月)が蹴ったサッカーボールが道路に飛び出し、バイク運転中の高齢者(八五歳二か月)がこれを避けようとして転倒し、受傷したことにより死亡した事故につき、児童の責任能力は否定されたものの児童の両親の監督者責任が認められて遺族の損害賠償請求が認容されたが、被害者の死亡に対する寄与度から損害額の六割が減額された事例(大阪地判23・6・27)
▽自衛隊の三等空曹が自殺した事故につき、その原因が先輩隊員のいじめによることが認められ、遺族の国に対する国家賠償請求が認容されたが、加害先輩隊員に対する不法行為による損害賠償請求は棄却された事例(静岡地浜松支判23・7・11)
▽大学生のテニスサークルの飲み会に参加した学生が飲酒後に死亡した場合、同会に参加した大学生の損害賠償責任が否定された事例(甲府地判23・6・30)
▽被告人との接見禁止の対象となっていない母親の面接申出の拒否は違法であるとして、国に対する損害賠償請求が認められた事例(津地判23・7・7)
知的財産権
○「アミノシリコーンによる毛髪パーマネント再整形方法」との発明に係る特許出願について、特許法三六条六項言号の規定に適合しないとした審決に誤りがあるとして、審決が取り消された事例(知的財産高判23・2・28)
○「N-S.P.C.ウォール工法」なる商標について、その登録出願の経緯が著しく社会的妥当性を欠くものではなく、また、その構成それ自体が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとはいえないとして、商標法四条一項七号には該当しないとされた事例(知的財産高判23・3・17)
商 事
▽企業グループの組織再編に関連する一連の株主総会の決議不存在確認又は決議取消し等の請求につき、原告がその前提となる株主であるとは認められず、確認の利益又は原告適格を有しないとして、その訴えがいずれも却下された事例(東京地判23・7・7)
◆最高裁判例要旨(平成二三年七・八月分)
最新判例批評
五七 数社を介在させて順次発注された工事の最終の受注者XとXに対する発注者Yとの間におけるYが請負代金の支払を受けた後にXに対して請負代金を支払う旨の合意が、Xに対する請負代金の支払につき、Yが請負代金の支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず、Yが上記支払を受けた時点またはその見込みがなくなった時点で支払期限が到来する旨を定めたものと解された事例(最一判22・10・14)……新堂明子
五八 債権者である公庫及び金庫と連帯保証人との間で求償制限特約が締結されている場合であっても、共同保証人間で負担割合に応じて求償することができるとされた事例(高松高判22.9・28)……高橋眞
五九 内縁の夫所有の建物についての内縁夫婦間の使用貸借契約の成立と内縁の夫の相続人から内縁の妻に対する明渡請求(大阪高判22・10・21) ……常岡史子
六〇 遺産確認請求訴訟の係属中にその確認の対象となった遺産の一部について被告が原告の請求を一部認諾したが、その効力を否定した上、当該遺産の全部を確認の対象として、その一部が遺産に属することが確認された事例(名古屋高判22 .7.29) ……畑 宏樹
六一 支店間支店番号順序方式による預金債権の差押えとその申立ての適法性の有無――支店を一つに特定せず支店間支店番号順序方式により差押債権である預金債権を表示した差押命令申立てが差押債権の特定を欠き不適法であるとされた事例(東京高決23・5・16) ……淺生重機
六二 放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスの提供者が複製の主体と解される場合――ロクラクH事件上告審判決(最一判23・1・20) ……小泉直樹
六三 社債等振替法一二八条一項所定の振替株式についての会社法一七二条一項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が、裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において、申立人が株主であることを争った場合における、社債等振替法一五四条三項所定の通知の要否(最三決22・12・7) ……末永敏和
六四 金融商品取引法一九二条一項に基づく無登録業者に対する緊急差止命令(東京地決22・11・26) ……黒沼悦郎