判例時報 No.2120
平成23年10月1日 号 定価:円
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◆判決録◆
◎民訴法三八条後段の要件を満たす共同訴訟につき同法七条ただし書により同法九条の適用が排除されるか(①、② 事件)(① 最二決23・5・18、②最二決23・5・30)
◎一 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて共同訴訟人の一人が上告を提起した後にされた他の共同訴訟人による上告の適否
二 数人の提起する養子縁組無効の訴えにおいて共同訴訟人の一人が上告受理の申立てをした後にされた他の共同訴訟人による上告受理の申立ての適否
〇一 事業譲渡に関する覚書について、当該事業を第三者に譲渡し、その譲渡代金によって譲渡人の債務を処理する一方、事業の譲受人である第三者には譲渡人の債務を承継させず、当該事業の維持、再生を図るという趣旨の合意であって、譲渡人の株式の譲渡契約と解することはできないとされた事例
二 債務の弁済について利害関係を有する第三者が、債務者の意思に反して債務を弁済した場合に債務者に存する現存利益について、第三者が弁済及び代物弁済に供した製品の仕入価格相当額をもって算定すべきであるとされた事例
▽個人が診療所に設置したエレベータの保守管理契約につき製造会社による契約の解除が信義則に反して許されないとされた事例(東京地判23・4・15)
▽子会社の代表取締役兼親会社の取締役が子会社の債務超過の営業を譲渡したことが同人の不法行為に当たるとされたが、親会社の使用者責任が否定された事例(東京地判23・2・18)
▽扁桃摘出後の医師の気道確保の選択に過失があったとして病院側の損害賠償責任が認められた事例(広島地判23・2・23)
▽市立工業高校三年生の生徒が修学旅行中に海難事故で死亡したことにつき、引率教員に過失があるとして市の国家賠償責任が認められた事例(過失相殺四割)(横浜地判23・5・13)
▽市のごみ焼却施設(ストーカ炉)の建設工事の指名競争入札による発注につき、受注会社が談合により高額な請負代金で受注し、市に損害を与えたとして、市が受注会社に対して求めた損害賠償請求が棄却された事例(京都地判23・5・24)
○一 出願後に頒布された引用例二に記載された事項を、引用発明一に採用することによって、本願発明を容易に発明することができたと判断した審決には、特許法二九条二項の適用を誤った違法がある
二 審決における刊行物記載の発明と公知技術との組合せにより容易に発明できたという理由を、取消訴訟において、技術常識の名の下に刊行物記載の発明から容易に発明できたという理由に差し替えることは許されない
○被控訴人使用の各標章は被控訴人の商品の出所識別表示として使用されているものではないから、その使用は「登録商標に類似する商標の使用」(商標法三七条一号)又は「商品等表示」(不競法二条一項一号、二号)には当たらないと判断された事例(知的財産高判23・3・28)
◎吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合に消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義(最三決23・4・26)
▽元従業員の会社に対する退職金請求が権利の濫用にあたるとして棄却された事例(福岡地小倉支判23・2・8)
五一 諌早湾干拓事業により有明海の漁業環境が悪化したとし、漁民らの判決確定後三年までに五年間堤防の排水門の開門を継続することの請求が認められた事例――諌早湾干拓地潮受堤防撤去等請求事件第一審・控訴審判決
(①佐賀地判20・6・27、②福岡高判22・12・6) ……大塚直
五二 預託金会員制ゴルフクラブの年会費増額と個別の承諾をしていない会員の支払義務
(大阪高判22・2・10)……北村賓
五三 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保の効力は、譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶか
(最一決22・12・2)……小山泰史
五四 再生債務者の連帯保証人が保証債務の履行により債権者にとっては共益債権となる債権を代位取得したが、再生債務者に対する事後求償権は再生債権となるに過ぎない場合において、代位取得した債権を共益債権として民事再生手続外で行使することの可否(積極)
(大阪高判22・5・21)……加藤哲夫
五五 適切な医療行為を受ける期待権の侵害のみを理由とする整形外科医の不法行為責任の有無(消極)(脛骨高原骨折の接合手術後の下肢深部静脈血栓症という後遺症事例)――当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るに止まる
(最二判23・2・25)……吉田邦彦
五六 戦没者の妻に支給された特別給付金が消減時効にかかり失権したことにつき、国及び地方公共団体において受給権者に対する個別請求指導に係る義務違反及び立法の不作為があるとして求めた国家賠償請求が棄却された事例
(大阪地判22・10・15)……友岡史仁