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判例時報 No.2117
             平成23年9月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判決録◆

民 事

◎精神神経科の医師の患者に対する言動と上記患者が上記言動に接した後にPTSD (外傷後ストレス障害)と診断された症状との間に相当因果関係があるということはできないとされた事例(最三判23・4・26)

○一 全国紙の県版において報道された市長選挙候補者が市税を滞納している旨の記事につき、現に滞納していることの真実性は認められないが、取材に応じた候補者本人の回答から誤信したことに相当な理由があるとして名誉穀損の成立が否定された事例

二 市長選挙候補者が市税を滞納している旨の新聞記事を掲載されたことにつき、記者が取材することなく報道したもので妨害記事である旨のビラを日刊紙各紙に約一万三〇〇〇部を折り込んで配布したこと等が報道機関に対する名誉穀損に当たるとされた事例

三 弁護士が受任事件に関して記者会見をする場合には、記者会見における発言が第三者の名誉穀損に当たるとしても、依頼者は弁護士に対し意図的に虚偽の情報を提供して弁護士の判断を誤らせた等の特段の事情がない限り、弁護士の発言について、不法行為責任を負うものではない

(東京高判23・5・30)

▽橋梁の建設工事共同企業体の締結した請負契約において独占禁止法三条違反により公正取引委員会から課徴金納付命令を受け、これが確定した場合には発注者に対して請負代金額の10分の1に相当する金額を支払う旨の条項が有効とされ、適用された事例(東京地判23・1・28)

▽多重債務者から債務整理を委任された弁護士法人が貸金業者から過払金を回収した預り金につき、多重債務者が弁護士法人に対して求めた返還請求の一部が認容された事例(東京地立川支判23・4・25)

▽日刊新聞紙面で脅迫・威力業務妨害の罪の容疑者として警察で取調べを受け立件される可能性があるとして実名で報道された者が、発刊元の新聞社に対し求めた名誉穀損を理由とする損害賠償請求が認容された事例(大阪地判22・10・19)

▽ 控訴理由が失当な控訴につき、訴訟の完結を遅延させることのみを目的としたものとして制裁金の納付が命じられた事例(大阪地判23・1・14)

▽死刑確定者が弁護士と再審請求のため拘置所内で接見した際に拘置所長が職員を立ち会わせたことにつき、所長の裁量の範囲を逸脱した違法があるとして国家賠償請求が認容された事例(広島地判23・3・23)

▽炭鉱におけるじん肺患者が国の安全対策に瑕疵があるとして求めた国家賠償請求につき、国の主張した消滅時効による消滅を斥け、国家賠償請求が認容された事例(札幌地判22・3・26)

▽市長による市街地再開発事業推進のため民間主導で設立された準備組合に対する補助金給付決定の取消及び給付方針の撤回を違法として求めた国家賠償請求が棄却された事例(津地判23・5・12)

知的財産権

○一 ロボットの旋回半径を小さくするという技術思想に基づくダブルアーム型ロボットの発明について、分割前の発明の特許請求の範囲が基端の関節部の回転中心軸、台座の旋回中心軸、基端以外の関節部の位置関係に、分割後の本件発明の特許請求の範囲がコラム、台座の旋回中心軸、基端の関節部の回転中心軸の位置関係に、それぞれ着目して規定されているが、原出願明細書において、コラム、台座の旋回中心軸及び基端の関節部の位置関係に関し、本件発明の特許請求の範囲を充足する構成が図示されている以上、本件発明の技術思想は原出願明細書及び図面に記載されたものということができ、分割要件に違反しないとされた事例

二 本件発明におけるアームの取付け位置やハンドの伸縮方向に係る構成及びコラムの旋回位置等に係る構成は、いずれも引用発明に周知技術等を適用することによって、当業者が容易に想到し得るものであるとして、これと異なる審決の判断が誤りであるとされた事例

(知的財産高判23・1・25)

○商標権者及び通常使用権者が、その構成中に「JIL」との表示が含まれる照明器具の規格に適合していることを証する標章を、その指定商品に含まれる照明器具に貼付した場合において、「JIL」との構成からなる登録商標の使用があるとされた事例(知的財産高判23・3・17)

▽折り紙の折り図について著作権侵害及び著作者人格権侵害の有無が争われた事案において、折り図の著作物性が認められ、漠否判断において著作権侵害及び著作者人格権侵害が否定された事例(東京地判23・5・20)

商 事

▽一 火災保険金請求につき、出火原因を保険契約者の代表取締役による放火と認めて、

これが棄却された事例(甲事件)

二 火災による動産の滅失につき、民事訴訟法二四八条を適用して相当な損害額が認定された事例(乙事件)

(横浜地横須賀支判23・4・25)

◎住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者が、上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たるとされた事例

―INAXメンテナンス救済命令取消事件上告審判決(最三判23・4・12)

◆最高裁判例要旨(平成二三年五・六月分)

◆判例評論◆

四四 不法行為に基づ-損害賠償金として受け取った和解金の非課税所得該当性(名古屋地判21・9・30)…… 奥谷健

四五 相続により承継した取消訴訟の勝訴による過納金還付請求権の相続財産該当性(最二判22・10・15) …… 増田英敏

四六 自動車税の減免要件としての「天災その他特別の事情」(最三判22・7・6 ) ……渡辺徹也

四七 相互に依存する二つの契約の一方の不履行と履行補助者の法理(大阪高判21・12・25 ) ……野津正充

四八 一 被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときに、これらの各社会保険給付との問で損益相殺的調整を行うべき損害

二 被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害を填補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ、又は支給されることが確定したときに、損益相殺的調整にあたり損害が填補されたと評価すべき時期(最一判22・9・13) ……小賀野晶一

四九 「性的障害の治療におけるプリバンセリンの使用」とする発明について、発明の詳細な説明において、フリバンセリン類の性欲障害治療用薬剤としての有用性を裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がないことを理由として、当該出願は特許法三六条六項三号の要件を充足しないとして拒絶した審決に、理由不備の違法があるとして、審決が取り消された事例(知的財産高判22・1・28) ……田広志

五〇 人事考課の査定差別の不当労働行為該当性とその立証方法(東京高判22・5・13)…… 島田陽

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