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判例時報 No.2114
             平成23年8月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判例特報◆

①年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を一年とする出演基本契約を締結した上、各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員が、上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たるとされた事例

――新国立劇場運営財団救済命令取消事件上告審判決

(最三判23・4・12)

② 一 商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商標法三条一項三号に該当する(①事件)

二 立体的形状からなる商標について、当該商標の形状が、他に見当たらない特異性を有し、需要者に強い印象を与えるものであって、一五年以上にわたって香水の容器に使用をされてきたことに照らし、当該形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っており、香水について白他商品識別力を有するに至った結果、これと極めて密接な関係にある化粧品等の本願指定商品に、本願商標が使用された場合にも、自他商品識別力を有するとして、商標法三条二項の要件を充足するとされた事例(①事件)

三 本願商標に係る容器の香水が、一定期間一定程度売り上げられ、雑誌等に掲載されたとしても、その立体的形状がシンプルで、特異性が見いだせず、類似の形状の香水も複数存在し、酷似する形状の香水すら存在することに照らすと、本願商標の立体的形状が、独立して自他商品識別力を獲得するに至っているとまではいえず、しかも、本願商標が、香水とは必ずしも取引者や需要者が一致するとはいえない「洗濯用漂白剤その他の洗濯伺剤、清浄剤、つや出し剤、擦り磨き剤及び研磨剤」等の指定商品に使用された場合、原告の販売に係る商品であることを認識することができるとはいえず、商標法三条二項の要件を充足するとはいえないとされた事例(②事件)

四 香水等を指定商品とする立体商標について、その立体的形状が、香水の容器において機能又は美感に資することを目的として採用されたもので、香水の容器の形状として、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法三条一項三号に該当するとされた事例(③事件)

――JEAN PAUL GAULTIER “CLASSIQUE”立体商標事件(①事件)

――”L’EAU D’ISSEY”立体商標事件(②事件)

――JEAN PAUL GAULTIER “Le Male”立体商標事件(③事件)

(①〜③知的財産高判23・4・21)

◆ 判決録◆

行 政

〇一 貨物船と漁船との衝突事故について、両船の位置関係から海上衝突予防法一五条一項の横切り船航法の適用が認められた事例

二 貨物船と漁船とが衝突し漁船船長が溺死した事故について、貨物船航海士の見張り義務違反の過失と漁船船長の避航措置を講じなかった過失の大きさとを比較のうえ、広島地方海難審判所のした海技士である同航海士に対する業務停止一箇月の裁決が重すぎ相当性を欠くとして取り消された事例

(東京高判23・2・23)

民事

◎司法書士会に新たに入会する者のみに課される負担でその履行が入会の要件となっていないものが司法書士法(平成一四年法律第三三号による改正前のもの) 一五条七号にいう「入会金その他の入会についての特別の負担」に当たるか(最二判23・4・22)

◎届出のない再生債権である過払金返還請求権について、届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定める再生計画と上記過払金返還請求権の帰すう(最三判23・3・1)

○インターネットサイト上のホームページにおいて特定の大学院医学系研究科教授の研究や研究費補助等につき記載した内容の一部が、意見ないし論評の前提事実の真実性が認められず、名誉穀損に当たるとされた事例(東京高判23・1・12)

○全国に放送されるテレビのいわゆるトーク番組において弁護士である出演者が視聴者に対し特定の弁護士に対する懲戒請求を勧奨する発言をしたことが名誉穀損の不法行為に,当たらないが、名誉穀損とは別個の不法行為に当たるとされた事例(広島高判21・7・2)

▽ウラン・プルトニウム混合酸化物試験用焼結調整設備用ペレット検査設備の一部である機械の製作請負契約において請負人の当該機械の完成を理由とする残代金請求が認容され、注文者の当該機械の未完成を理由とする既払金返還請求ないし当該機械の塀庇を理由とする損害賠償請求が棄却された事例(東京地判22・10・26)

▽高齢者の締結した約三億円の梵鐘の製作請負契約につき、消費者契約法四条に基づく取消しが認められた事例(大阪地判23・3・4)

知的財産権

○特許権の存続期間の延長登録につき、その延長登録(本件延長登録)に先立ってされた延長登録の理由となった処分の対象物について特定された用途と、本件延長登録におけるそれとが実質的に同一であるとはいえないとして、本件延長登録の無効審判請求を不成立とした審決が維持された事例(知的財産高判23・2・22)

○商標法五〇条による商標登録の不使用取消しを認めた審決に係る取消訴訟において、本件商標と通常使用権者が使用していたという商標とが、「社会通念上同一と認められる商標」であるとのX主張は、出願経過におけるXの主張に鑑み、禁反言別に反して許されないとされた事例(知的財産高判2・7・28)

▽車両衝突事故につき、故意免責及び不実申告免責がいずれも否定された事例(岡山地判23・2・22)

▽一 覚せい剤所持で逮捕された被疑者に対する任意採尿手続に重大な違法があるとして、尿の鑑定書の証拠能力を否定し、覚せい剤自己使用について無罪が言い渡された事例

二情況証拠から覚せい剤所持の故意が推認された事例

(東京地判23・3・30)

◆判例評論◆

三七 労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付の基準を定める障害等級表のうち外ぼうの著しい醜状障害の等級について男女間で大きな差が設けられていることは合理的理由な-性別による差別的取扱いをするものとして憲法一四条一項に違反するとされた事例(京都地判22・5・27) ……安西文雄

三八 一 地方自治法二四三条の二第一項所定の職員以外の職員の地方公共団体に対する損害賠償責任が認められるためには、重過失があることを要せず、過失があれば足りる

二 幹部職員による政策的判断に起因する地方公共団体の損害について、当該幹部職員の損害賠償責任が認められた事例――岡山市下水道水増し住民訴訟事件
(広島高岡山支判21・9・17) ……飯島淳子

三九 継続的な金銭消費貸借取引における利息制限法一条一項にいう「元本」の額(最三判22・4・20) ……藤田寿夫

四〇 土地の賃貸人および転貸人が、転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し、借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を含む念書を差し入れたときは、賃貸人および転貸人が土地賃料不払いの事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負い、その不履行を理由とする根抵当権者のなした損害賠償請求が、信義則に反するとはいえないとされた事例(最一判22・9・9) ……桶舎典哲

四一 シンジケートローンによる融資を受けた借入人が経営破綻して融資金の返済が不能となった場合において当該シンジケートローンのアレンジャーがその招聘に応じてシンジケートローンを組成した貸付人に対して損害賠償責任を負わないとされた事例(名古屋地判22・3・26) ……近江幸治

四二 著作権法三二条一項にいう引用(知的財産高判22・10・13)……斉藤博

四三 雑踏警備における過失責任――明石花火大会歩道橋事故上告審決定(最一決22・5・31)……主本武司

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