判例時報 No.2113
平成23年7月21日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪との関係(下)
――最近の判例を素材として……中山研一
現代型取引をめぐる裁判例(282)……升田純
海外刑法だより(314)
占有離脱物横領罪……森下忠
◆判例特報◆
一 東京都教育委員会が都立学校の校長に発出した「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」は違憲違法とはいえず、同学校の教職員は同通達に基づく校長の職務命令に従うべき義務があるとされた事例(①事件)
二 右通達に基づく校長の職務命令に違反した都立学校の教職員に対してした東京都教育委員会の戒告処分が裁量権の逸脱又は濫用に当たるとして取り消された事例(②事件)
――教職員国旗国歌訴訟控訴審判決(①東京高判23・1・28、②東京高判23・3・10)
◆判決録◆
▽日本永住の在留資格を有する外国人による生活保護の申請は、生活保護法上の保護を求める趣旨であり、これを否定する却下処分は処分性を有する上、原告に審査請求適格も認められると判断された事例(大分地判22・9・30)
○新聞広告の掲載について不法行為に当たらないとされた事例(東京高判22・12・1)
○ジャーナリストの外務省幹部からの取材テープについて、提出命令の申立てが却下された事例(大阪高決23・1・20)
▽学童保育クラブに設置されたトイレの開き戸型ドアの隙間に低学年の小学生が指を挟まれた事故について、小学生の本来の用法以外の危険な用法があったとし、ドアの製造業者の製造物責任が否定された事例(東京地判23・2・9)
▽大手運輸会社から業務委託を受けた運送会社の不法行為につき、同運輸会社の使用者責任が認められなかった事例(大阪地判23・1・13)
▽スーパーマーケットの顧客が店舗内で滑って負傷した場合、建物の管理に塀庇がなかったとして、経営会社の損害賠償責任が否定された事例(名古屋地岡崎支判22・12・22)
▽人気ラーメン店の経営者が雇用安定奨励金を詐取したとして逮捕されたことにつき、テレビ会社がテレビジョンにより経営者の裏の顔として放映したことが名誉穀損にあたるとして経営者のテレビ会社に対する損害賠償請求が認容された事例(札幌地判23・2・25)
○最初の拒絶理由通知に対してされた特許請求の範囲等の補正が、新規事項追加の禁止の要件を満たしていないときは、出願の拒絶理由となるのであって、拒絶の理由を通知しなければならない場合に当たるが、決定をもって補正を却下しなければならない場合には当たらないから、補正を却下することなく当該補正に係る発明を審理の対象とすることに誤りはない(知的財産高判22・10・20)
〇乳酸菌飲料「ヤクルト」の包装容器の立体的形状のみからなる商標につき、本願商標は「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」(商標法三条二項)に該当するとして、商標登録出願を認めなかった特許庁の審決が取り消された事例―-ヤクルト立体商標事件判決(知的財産高判22・11・16)