判例時報 No.2112
平成23年7月11日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪との関係(上)――最近の判例を素材として……中山研
現代型取引をめぐる裁判例(281)……升田純
◆判決録◆
◎一 家屋の建替え中のため固定資産税の賦課期日に地方税法(平成一八年法律第七号による改正前のもの)三四九条の三の二第一項所定の居住用家屋が存しない土地に係る当該年度の固定資産税及び都市計画税につき、同条二項一号、地方税法七〇二条の三第二項各所定の住宅用地に対する課税標準の特例の適用があるとされた事例
二 家屋の建替え中のため固定資産税の賦課期日に地方税法三四九条の三の二第一項所定の居住用家屋が存しない土地に係る当該年度の固定資産税及び都市計画税につき、同条二項一号、同法七〇二条の三第二項各所定の住宅同地に対する課税標準の特例の適用がないとされた事例(最二判23・3・25)
○一 仲裁合意の準拠法について当事者による明示・黙示の指定がされていないときは仲裁地法によるべきである
二 当事者が署名した契約書で引用されている契約書式中に仲裁条項が存するときは仲裁法二二条二項、三項の規定する書面性の要件は満たされている
○肖像権に基づき出版物の事前差止めを認めた仮処分決定が抗告審において取り消されて当該仮処分命令の申立てが却下された事例(東京高決22・3・4)
▽被害者のある刑事事件で被疑事実に争いがない場合において、被疑者が示談をする意思を示すときには、刑事弁護人としては、刑事弁護の委任契約に基づき、被害者との間で示談交渉を行い、その結果を担当検察官に報告すべき義務(示談交渉・報告義務)があるとして、当該被疑者(委任者)から当該刑事弁護人(受任者)に対する債務不履行に基づく損害賠償請求が認められた事例(東京地判22・12・17 )
▽約六か月半の間隔で発生した二つの追突事故について、客観的な関連共同性がないとして共同不法行為の成立が認められなかった事例(大阪地判22・4・26)
▽請負人である株式会社のいわゆる「事実上の取締役」について会社法四二九条一項の類推
適用による第三者である注文者に対する損害賠償責任が認められた事例(名古屋地判22・5・14)
▽建物築造請負契約における注文者から請負業者に対する瑕疵担保責任及び工事監理者の使用者である監理会社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求(不真正連帯関係)が認容
された事例(仙台地判23・1・13)
▽カタログ配布事業会社の行った「カタロくじ」事業が無限連鎖講に該当するとし、その会社の幹部や統括代理店の不法行為責任が認められた事例(京都地判22・1・22)
▽鳥獣保護法所定の従事者証の返納を命じた町長の行為、その行為に対する町の報道機関への告知行為、従事者証の返納に関する質問に回答しない町長の行為を違法として求めた国家賠償請求が棄却された事例(釧路地帯広支判23・3・24)
○商標法四条一項一五号に関し、本件商標と引用商標は類似しないこと、引用商標は本件商標の出願時及び登録審決時において相当程度に多数の需要者・取引者に知られていたといえるが著名性が高いとはいえなかったことなどの事情を考慮し、本件商標は、同号所定の商標には該当しないと判断し、同号により本件商標を無効とした審決が取り消された事例(知的財産高判22・8・31)
▽ 「ビデオカセットレコーダインデックスと電子番組ガイドの組み合わせ」の発明(方法の発明)に係る特許権の侵害訴訟において、クレームの文言及び明細書の記載から、同特許発明については「記録された番組の位置」に係る情報を表示することが必要であると解釈した上、被告の製造、販売するレコーダー(HDDレコーダー)は当該情報を表示しておらず、同特許発明の方法を使用していないとして、同特許権に対する間接侵害(特許法一〇一条五号)の成立が認められなかった事例(東京地判22・12・3)
▽被保険自動車の盗難事故の発生を理由とする保険金請求について、第三者が当該自動車を所在場所からけん引ないし積載によって持ち去ったと認められ、かつ、その持ち去りが被保険自動車の所有者の意思に基づいて発生したものとは認められないとして、当該請求が認容された事例(千葉地判23・3・11)
▽東京都公安委員会から交付を受けていたビニール製ケース入り駐車禁止除外指定車標章の有効期限欄や発行日欄の数字記載部分に、元の記載と異なる数字が印字された紙片を置いて密着させた上、ビニール製ケースとの間に挟み込むようにして同紙片を固定した行為について、公文書偽造罪の成立が認められた事例(東京地判22 ・9 ・6)
◆最高裁判例要旨(平成二三年四月分)