判例時報 No.2109
平成23年6月11日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
過失犯における作為と不作為の区別基準論(中)―-ドイツの判例を中心に……神山敏雄-
現代型取引をめぐる裁判例(279)……升田純
◆判決録◆
▽市が住民基本台帳ネットワークシステムに接続していないことが違法であり、それに伴う公金支出が違法であるとして、市民である原告らが、市長に対し、その支出の差止めを求めるとともに市長個人に対する損害賠償を請求することを求めた住民訴訟が一部認容された事例
(東京地判23・2・4)
▽知事が、原告の行う広告表示等につき特定商取引に関する法律違反があるとして、業務停止命令に先立って原告から提出された弁明書の内容を考慮せず、広告表示について訂正が行われるか否かを確認することなく業務停止を命じたことには裁量権を濫用した違法があるとして、当該業務停止命令が取り消された事例
(さいたま地判23・2・2)
◎簡易生命保険契約の保険金受取人が無断で保険金等の支払を受けた者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求する場合において上記の者が損害の発生を否認して請求を争うことが信義誠実の原則に反し許されないとされた事例
(最二判23・2・13)
○担保権の実行としての債権差押命令に対し被担保債権の不存在又は消滅を理由に執行抗告をすることの可否(積極)
(東京高決23・2・24)
▽薬剤師は、医師の処方指示に対し、その内容についても確認し、疑義がある場合には、処方医師等に問い合わせて照会する注意義務があり、薬剤の過量投与の指示に対し、疑義照会をせず、調剤・監査を行った場合は、薬剤師にも注意義務違反が認められる
(東京地判23・2・10)
▽破産会社が取引先に対して有する債権を銀行に担保として債権譲渡した場合について、否認権の行使が肯定された事例(東京地判22・11・12 )
▽仮執行宣言付判決に対する控訴に伴う執行停止の担保につき、強制執行停止決定の効力が控訴棄却の判決により臭われた後に債務者が有効な弁済供託をしたときは、債務者が上告等の不服を申し上空JJ.仮執行宣言付判決が取り消された場合に供託金を取り戻す権利を留保し、かつ、債権者が供託を受諾していない場合であっても、担保の事由が消滅するとして、担保の取消しが認められた事例
(大阪地決22・4・28)
▽成人の責任無能力者の加害行為につき、同居する親の民法七l四条の損害賠償責任が否定された事例
(名古屋地判23・2・8)
▽金銭消費貸借契約に「利息制限法の制限利息の支払を遅滞したときに期限の利益を喪失する」旨の特約がある場合において、利息制限法所定の利率を超える利息の支払について、平成一八年法律第二五号による改正前の貸金業の規制等に関する法律四三条一項が規定するみなし弁済の適用がないとされた事例
(横浜地判22・1・30)
▽自殺した高校生の母及びその受任弁護士が、同校の校長を告訴したり、記者会見によりその名誉を穀損したとして、共同不法行為により慰謝料の支払及び謝罪広告が命じられた事例
(長野地上田支判23・1・14)
○控訴人(社団法人)が映画のシナリオである本件脚本を年鑑シナリオ集へ収録して出版することについて、映画の原作小説を著作した被控訴人が許諾を与えないことは、正当な権利行使の範囲内のものであって、権利濫用には当たらないと判断された事例(知的財産高判23・3・23)
▽被告が販売するTシャツなどに付した「(ピースマーク)と類似する図形標章について、被告の登録商標を基調としたキャラクター図形の背景の一部として模様的に描かれており、「ピースマーク」として「平和」を表現するために用いられたものと認識され、商品の出所を想起させるものではないとして、商標的使用該当性が否定された事例―-ピースマーク事件
(東京地判22・9・30)
◆最高裁判例要旨(平成二三年三月分)