判例時報 No.2105
平成23年5月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判決録◆
◎一 弁護士である破産管財人は、自らの報酬の支払について、所得税法二〇四条一項二号所定の源泉徴収義務を負う
二 弁護士である破産管財人の報酬に係る源泉所得税の債権は、旧破産法(平成一六年法律第七五号による廃止前のもの)四七条二号ただし書にいう「破産財団二間シテ生シタル」請求権に当たる
三 破産管財人は、破産債権である所得税法一九九条所定の退職手当等の債権に対する配当について、同条所定の源泉徴収義務を負わない
(最二判23・1・14)
◎抵当権設定登記後に賃借権の時効取得に必要な期間不動産を周益した者が賃借権の時効取得を当該不動産の競売又は公売による買受人に対抗することの可否(最二判23・1・21)
○郵政事業会社が転居届に関わる情報について負う守秘義務が弁護士法二三条の二に基づく照会に対する報告義務に劣後し、報告を拒絶したことに正当な理由はないが、照会の権利・利益の主体は個々の依頼者ではないから、不法行為に基づく損害賠償を請求することができないとされた事例
(東京高判22・9・29)
○日本の医科大学等で稼働していた英国人の逸失利益の算定において、日本の男子労働者大卒の平均収入を基礎とするのが相当であるとされた事例
(福岡高宮崎支判21・12・24)
▽振り込め詐欺の組織に属するグループのリーダーに対し同組織の他のグループによる詐欺行為についての不法行為が認められた事例
(東京地判22・9・24)
▽一 弁護士の守秘義務違反を理由とする慰謝料請求が認容された事例
二 弁護士である被告の依頼者である原告に対する委任契約に基づく報酬請求権の消滅時効の起算点は、原告が被告に対し訴訟代理人から解任する旨を通知した時であるとして、右報酬請求権は短期消滅時効によって消滅したと判断された事例
(大阪地判21・12・4)
▽介護老人保健施設において入所者が死亡したことにつき、被告の施設及び職員に対する管理体制、被告施設の職員らの事故発生前の対応及び事故発生後の救命活動のいずれについても過失が否定された事例
(横浜地判22・8・26)
▽石綿粉じんにより石綿関連疾患で死亡した従業員の会社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権は死亡から起算して一〇年の消滅時効にかかり、会社の消滅時効の援用が権利濫用にあたらないとされた事例
(さいたま地判23・1・21)
▽金貨を販売し、換金する形で現金を提供するいわゆる「金貨金融」は、実質上金銭消費貸借契約であり、暴利行為であって公序良俗に反し無効であるとされた事例
(札幌簡判23・1・14)
○会計処理システムに係る発明について、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するとした審決の判断に誤りはないなどとして、請求不成立とした無効審決が維持された事例
(知的財産高判21・5・25)
○宿泊施設の提供等を指定役務とする出願商標「こころをなでる静寂 みやこ」が商標法四条一項一二号に規定する商標に当たるとされた事例(知的財産高判22・9・8)
○株券上場廃止基準に当たる有価証券報告書等の虚偽記載がされた場合において、その事実の公表後に株価の下落があったときに、その虚偽記載に,よって当該会社の株式を保有する者に損害が発生したものの、その額を立証することが極めて困難であるとして、相当額が認定された事例
(東京高判22 ・4・22)
▽会社の従業員が退職後三年間競合関係に立つ事業を自ら開業又は設立しない旨の合意をした場合について、合意に基づく会社の差止請求が認められた事例
(東京地判22・10・27)
◎航行中の航空機同士の異常接近事故について、便名を言い間違えて降下の管制指示をした実地訓練中の航空管制官及びこれを是正しなかった指導監督者である航空管制官の両名に業務上過失傷害罪が成立するとされた事例
(最一決22・10・26)
最高裁判例要旨(平成二三年二月分)
二〇 地方公共団体が金融機関と締結した損失補償契約の効力
(東京高判22・8・30) ……吉田光碩
二一 一 杉並区教育財産管理規則に基づく学校施設の目的外使用許可処分は住民訴訟の対象となる財務会計上の行為としての財産管理行為又はその怠る事実に当たらない
(東京地判22・3・30) ……髙雅夫
二二 スキールほか(外国人研修生)事件
(熊本地判22・1・29) ……大内伸哉
二三 退職後長期間を経た元従業員らが、石綿健康被害をめぐる団交要求につき労働組合法七条二号にいう「雇用する労働者」に当たるとされた事例――住友ゴム工業事件
(大阪高判21・12・22) ……盛誠吾
二四 治療行為の中止と合法要件
(最三決21・12・7)……土本武司