判例時報 No.2099(別冊・総索引付)
平成23年3月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判決録◆
◎被相続人が生前に提起して相続人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟において同処分等の取消判決が確定した場合、被相続人が同処分等に基づき納付していた所得税等に係る過納金の還付請求権は相続税の課税財産となるか
(最二判22・10・15)
◎一 被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときに、これらの各社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
二 被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ、又は支給されることが確定したときに、損益相殺的な調整に当たって、損害がてん補されたと評価すべき時期
(最一判22・9・13)
○債務者が第三債務者である生命保険会社に対して有する生命保険契約に基づく保険金支払請求権を対象とする債権差押命令の申立てにおいて、契約の種別・種類でなく、契約年月日の先後で特定した場合につき、債権の特定を欠くとはいえないとされた事例
(東京高決22・9・8)
▽ごみ処理施設の請負工事業者について、当該請負契約上の教育指導義務違反を理由に債務不履行による損害賠償責任が認められた事例
(東京地判22・3・8)
▽共同経営に係る法律事務所において所属していた弁護士の他の弁護士に対する不法行為が認められた事例
(東京地判22・3・29)
▽石綿製品製造販売会社で稼働していた社員のじん肺篠患について会社の安全配慮義務違反の責任を認め、右社員を介護する長女に対してその不法行為責任が認められた事例
(大阪地判22・4・21)
▽発声障害のある市議会議員に対して、市議会等での質問につき代読方式を許さず、音声変換機能付パソコンの使用を強制したことが違法であるとして、市の国家賠償責任が認められた事例
(岐阜地判22・9・22)
○学術論文の著作権・著作者人格権の侵害を肯定して損害賠償を7部認めた原判決の認容部
分を取り消し、創作性の欠如を理由にそれらの侵害が否定された事例
(知的財産高判22・5・27)
▽外国語特許出願につき、国内書面提出期間経過後に明細書等の翻訳文が提出された場合には、特許法一八四条の五第二項の補正命令を認める余地がなく、特許庁長官が出願人である原告に補正の機会を与えずに行った国内書面に係る手続の却下処分は適法であるとして、当該却下処分の取消しを求める原告の請求が棄却された事例(東京地判22・7・16)
▽木造二階建て店舗兼居宅の火災について、高齢の父に代って保険契約手続をし、同居して面倒を見ていた者の放火によるものであるとして、保険会社の故意免責が認められた事例
(横浜地判21・9・18)
○通信業務等に従事する自衛官が宿直勤務中にくも膜下出血ないし脳内出血を発症し死亡した事案において、公務起因性が肯定された事例
(仙台高判22・10・28)
◎宅配便業者の運送過程下にある荷物について、荷送人や荷受人の承諾を得ずに、捜査機関が検証許可状によることなくエックス線検査を行うことは適法か(最三決21・9・28)
一一 ホステス報酬に係る源泉徴収税額を算定するに当たり、所得税法施行令三二二条の「当該支払金額の計算期間の日数」とは当該期間の全日数を意味し、実際の出勤日数を意味するのではないとされた事例(最三判22・3・2) …… 高野幸大
一二 課税方式・税率の選択可能な外国税の「外国法人税」(タックス・ヘイブン対策税制適用要件)該当性(最一判21・12・3)……谷口勢津夫
一三 売買契約の目的物である土地の土壌に、上記売買契約締結後に法令に基づく規制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことが、民法五七〇条にいう瑕疵に当たらないとされた事例(最三判22・6・1) ……半田吉信
一四 瑕疵ある建物の買主が工事施工者等に対して不法行為に基づいて建替費用相当額の損害賠償を請求する場合における居住利益等控除の可否(最一判22・6・17) ……渡邊力
一五 商標「SIDAMO」は、「シダモ産コーヒー又はコーヒー豆」について使用した場合、その商品の種奨名又は銘柄名であるから、その商品の産地又は品質を普通に用いられる方法で表示する商標に当たらないが、「シダモ産以外のコーヒー又はコーヒー豆」について使用した場合は品質誤認を生じるとした事例(知的財産高判22・3・29) ……鷹取政信
一六 継続雇用制度の導入をはじめとする高年齢者雇用確保措置を事業主の義務として規定した高年齢者雇用安定法九条一項には私法的強行性が認められないとされた例――東日本電信電話事件(東京地判21・11・16) ……小嶌典明