判例時報 No.2096
平成23年2月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判決録◆
◎一 普通地方公共団体の臨時的任用職員に対する手当の支給が地方自治法二〇四条二項に基づく手当の支給として適法といえるための要件
(最二判平22・9・10)
▽一 省令の制定行為が行政処分に当たらないとされた事例
(東京地判平22・3・30)
◎土地の賃貸人及び転貸人が、転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し、借地権の消滅を来すおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を含む念書を差し入れた場合において、賃貸人及び転貸人が地代不払の事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負い、その不履行を理由とする根抵当権者の損害賠償請求が信義則に反するとはいえないとされた事例
(最一判平22・9・9)
○再生債務者の連帯保証人が保証債務の履行により債権者にとっては共益債権となる債権を代位取得したが、再生債務者に対する事後求償権は再生債権となるに過ぎない場合において、代位取得した債権を共益債権として民事再生手続外で行使することの可否(積極)
(大阪高判平22・5・21)
○金銭債権の債権者の財産開示手続の申立てについて、申立てを却下した原決定が相当でないとして取り消された事例
(大阪高決平22・1・19)
▽ソフトウェア開発に当たり、請負人が、注文者に対し、追加費用を支払わなければソフトウェア開発を続行できないなどと告知し、ソフトウェア開発委託契約を解除したことにつ
いて、請負人に債務不履行(履行不能)、告知義務違反、契約締結上の過失があるとはいえないことを理由に、注文者の請負人に対する損害賠償請求か棄却された事例
(東京地判平22・7・22)
▽資産流動化法に基づいて設立された特定目的会社が負担する特定借入債務及び特定社債債務について期限の利益の存在確認の訴えが適法とされた事例
(東京地判平22・4・23)
▽刑訴法三九条1項による弁護士の容疑者との接見申立に対し、捜査機関が容疑者の取調べ中であることを理由に接見を遅らせたことは違法であるとして、府の国家賠償責任が認められた事例
(大阪地判平22・9・15)
▽幼児が祖母からこんにゃく入りゼリーを与えられ、食べた際、喉に詰まらせ窒息死した事故について、こんにゃく入りゼリーの設計上の欠陥、警告上の欠陥が否定された事例
(神戸地姫路支判平22・11・17)
○複数の請求項に係る特許出願について、補正の機会を与えられた場合において、1の請求項が特許を受けることができないものであるとして、その余の請求項に係る発明について検討することなくされた拒絶査定不服審判の審判請求不成立審決に、結論に影響を及ぼすべき違法はないとされた事例
(知的財産高判平22・7・21)
○一 翻訳権侵害による二次的著作物の購入者がこれを貸与することは原著作者の氏名表示権の侵害とはならない
(知的財産高判平22・8・4)
◎一 株式会社の新設分割において、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成一七年法律第八七号による改正前のもの)三条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者が、当該承継の効力を争うことができる場合二株式会社の新設分割において、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成一七年法律第八七号による改正前のもの)三条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者につき、当該承継の効力が生じないとはいえないとされた事例
(最二判平22・7・12)
◎単独犯の訴因で起訴された被告人に共謀共同正犯者が存在するとしても、訴因どおりに犯罪事実を認定することが許されるか
(最三決平21・7・21)
◎前訴の建造物侵入、窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因との間には公訴事実の単一性がなく、前訴の確定判決の一事不再理効は後訴に及ばないとされた事例
(最二決平22・2・17)
六 区議会議員が自ら提起した住民訴訟のために政務調査費を支出したことは違法ではなく、当該区議に対する区長の返還請求命令処分が取り消された事例
(東京高判平21・9・29)……室井敬司
七 相続税法三条1項言方の規定によって相続により取得したものとみなされる生命保険契約の保険金で年金の方法により支払われるもの(年金受給権)のうち有期定期金債権にあたるものにおいて、当該年金受給権に係る年金の各支給額が、所得税の課税対象となるかどうか争われた事例―-生命保険年金二重課税訴訟
(最三判平22・7・6) ……渡辺充
八 遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が、民法一〇四一条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが、遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において、弁償すべき額につき当事者間に争いがあり、受遺者が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思がある旨を表明して、弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは、受遺者においておよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り、上記訴えには確認の利益がある
(最二判平21・12・18) ……川淳一
九 一 著作権侵害行為の侵害主体性について判断された事例
――TVブレイク事件
(東京地判平21・11・13) ……村井麻衣子
一〇 従業員のいわゆる過労死について、法人の不法行為責任のみならず、会社取締役ら四名の会社法四二九条1項に基づく民事責任が肯定された事例――大庄事件
(京都地判平22・5・25) ……石井保雄