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判例時報 No.2093
             平成23年1月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判例特報◆

アスベスト(石綿)工場の元労働者が石綿肺、肺がん、中皮腫又は詫びまん性胸膜肥厚に罹患したことについて、国の規制権限の不行使に基づく国賠法上の責任が肯定された事例

――大阪泉南アスベスト国家賠償請求訴訟第一審判決

(大阪地裁平22・5・19)

◆ 判決録◆

行政

▽労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付の基準を定める障害等級表のうち外ぼうの著しい醜状障害の等級について男女間で大きな差が設けられていることは合理的理由なく性別による差別的取扱いをするものとして憲法一四条一項に違反するとされた事例

(京都地判平22・5・27)

民事

○マンション建築請負工事契約において、建築確認取得後に確認図面上存在しない新たな住戸を増設するなど、注文者・請負人が故意に、建ぺい率、容積率違反、北側斜線制限違反、日影規制違反、耐火構造規制等に違反する悪質な建築基準法違反を企図した場合には、公序良俗違反により無効であるとして、その有効性を前提とする残代金本訴請求及び損害賠償反訴請求がいずれも棄却された事例

(東京高判平22・8・30)

▽賃貸マンションの居室内で無断転借人が自殺したことについて、賃借人による善管注意義務の不履行を認め、個別の事情を具体的に斟酌して算定した賃料収入の減少等を賃貸人の損害として、賃借人に損害賠償義務があるとするとともに、保証人も同額の保証債務履行義務を負うとされた事例

(東京地判平22・9・2)

▽祈藤師から霊能力があると信じ込まされ、祈祷を受けなければ不幸を避けられないと告げられて、祈藤を数回受け多額の金員を支払わされたとして求めた損害賠償請求が認容された事例

(大阪地判平22・3・29)

▽シンジケートローンによる融資を受けた借入人が経営破綻して融資金の返済が不能となった場合において当該シンジケートローンのアレンジャーがその招聘に応じてシンジケートローンを組成した貸付人に対して損害賠償責任を負わないとされた事例

(名古屋地判平22・3・26)

▽一 個人タクシー事業協同組合が理事会を批判した文書等を配布した組合員に対して、組合の信用を失墜させたとして、定款及び制裁規約に基づき制裁処分をしたことの適否につき、裁判所の司法審査が及ぶとされた事例

二 同組合の制裁処分が組合の自律約・自主的な権限に基づくことなどから、制裁要件事実該当性判断及び制裁処分内容の選定については組合の裁量に委ねられ、制裁処分の法的適否の司法審査は、裁量権の逸脱・濫用の有無の観点からすべきとされ、不適法といえないと判断された事例

(神戸地判平22・4・22)

知的財産権

〇一 無効審決の取消訴訟の係属中に特許請求の減縮を目的とする訂正審決が確定したことを理由に、審決が取り消された事例

二 無効審判請求不成立審決の取消判決の確定後、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該訂正によっても影響を受けない範囲における認定判断については格別という余地があるとしても、訂正前の特許請求の範囲に基づく栄明の要旨を前提にした取消判決の拘束力は遮断され、再度の審決に当然に及ぶということはできない

(知的財産高判21・10・29)

○多数のリンクにより直接ウェブサイトの商品カタログのページにおいて商品写真等を閲覧することができる仕組みになっているメールマガジン及びWeb版に「クラブハウス」標

章を表示する行為は、指定商品を「加工食料品」等とする「CLUBHOUSE/クラブハウス」なる商標の使用に当たる

(知的財産高判平22・4・14)

商事

▽株主代表訴訟で一部勝訴した株主が会社に対して行った弁護士報酬額四億円の請求のうち八〇〇〇万円が認容された事例

(大阪地判平22・7・14)

労働

▽大手ハンバーガーチェーンの従業員が、店舗に出勤直後に急性心機能不全を発症して死亡した場合について、業務起因性が肯定された事例

(東京地判平22・1・18)

刑事

◎弁護士資格等がない者らが、ビルの所有者から委託を受けて、そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について、弁護士法七二条違反の罪が成立するとされた事例

(最一決平22・7・20)

判例評論

一 沖縄返還「密約」文書開示事件第一審判決

(東京地判平22・4・9)……宇賀克也-

二 名古屋市議会の会派が市から交付を受けた政務調査費を所属議員に支出する際に使途基準適合性の判断のため各議員から提出を受けた「政務調査費報告書」とこれに対応する領収書が、民事訴訟法二二〇条四号二所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとされた事例

(最二決平22・4・12) ……上脇博之

三 更生会社であった貸金業者において、届出期間内に届出がされなかった更正債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することが、信義則に反せず、権利の濫用にも当たらないとされた事例

(最二判平21・12・4)……中村肇

四 証券取引所の売買立会において取引参加者が、新規上場株式につき、発行会社の発行済株式総数の三倍にあたる数。価格一株一円として売注文を発信した結果これが約定され、取引参加者が損害を被った場合において、売買停止権限の行使を怠った証券取引所に重過失が認められるとされた事例

(東京地判平21・12・4) ……柴崎暁

五 委託者指図型投資信託における受託者が信託事務の処理に伴い支出した費用又は費用相当額につき委託者に対して支払を求めた事例

(東京地判平21・6・29)……久保野恵美子

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