判例時報 No.2092
平成22年12月21日 号 定価:円
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◆ 記事◆
最高裁刑事破棄判決等の実情(中)――平成二一年度……任介辰哉
現代型取引をめぐる裁判例(268)……升田純
海外刑法だより(307)――フランスの参審制度(下) ……森下忠
◆ 判決録◆
▽市議会議員個人に対して交付された政務調査費につき、市が定める使途基準に合致しないものがあるとして、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づく市長に対する不当利得返還請求を求める住民訴訟につき、原告の請求が一部認容された事例
(熊本地判平22・3・26)
◎自動車の売買代金の立替払をした者が、販売会社に留保されていた自動車の所有権の移転を受けたが、購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき所有者としての登録を受けていないときに、留保した所有権を別除権として行使することの可否
(最二判平22・6・4)
◎子の父親が母親らに対し子の引渡し等を求める人身保護請求事件において、人身保護法一一条一項に基づく決定によるのではなく、審問手続を経た上で判決により判断を示すべきであるとされた事例
(最二決平22・8・4)
◎人身保護法による釈放の請求を却下又は棄却した高等裁判所の決定は、許可抗告の対象となるか
(最二決平22・8・4)
▽介護付有料老人ホームの入居者が食事中誤嘩事故で死亡した場合について、老人ホームの開設者の安全配慮義務違反が否定された事例
(東京地判平22・7・28)
▽請負会社(破産会社)と注文会社間でなされた店舗等の建築請負工事代金の減額合意が公序良俗に反して無効であるとして、破産管財人の不当利得返還請求が認容された事例
(大阪地判平22・5・25)
▽一 債権者が債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産を共同抵当の目的とする場合において、両不動産について抵当権が実行されて、同時配当が実施されるときには、民法三九二条二項は適用されず、まず債務者所有不動産の代価から先に共同抵当権の被担保債権に配当し、不足が生じる場合に物上保証人所有不動産から配当をすべきである
二 債務者が、物上保証人所有の不動産と共に共同抵当の目的となっている債務者所有の不動産を売却したことが、詐害行為に当たらないとされた事例
(大阪地判平22・6・30)
○本件訂正は明悪書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件訂正が「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との要件に適合しないとした審決の判断には誤りがあるとされた事例
(知拍財産高判平22・7・15)
○一 著作権法三二条一項にいう引用としての利用に当たるか否かの判断においては、他人の著作物を利庸する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない
二 絵画の鑑定書に絵画の複製が添付された場合において、その目的が鑑定対象である絵画を特定し、かつ、鑑定書の偽造を防ぐためであって、添付の必要性・有用性が認められること、鑑定業務が適正に行われることは著作権者等の権利の保護を図ることにつながること、当該複製物が鑑定書と分離して利用に供されることや鑑定書が当該絵画と別に流通することも考え難いこと、著作権者が当該絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われることも考え難いこととの事情の下において、当該複製は著作権法三二条一項にいう引用としての利用に当たるとされた事例
(知的財産高判平22 ・10・13)
▽株式譲渡制限会社の新株発行は’会社法の下では株主総会の特別決議を要するためその募集事項の決定を開示するための公告・通知を要しないとされているから、この株主総会の特別決議を欠くことは新株発行無効事由にあたると解された事例
(横浜地判平21・10・16)
▽従業員がした退職の意思表示が心裡留保に当たるなどという主張が認められず、元雇用主に対する地位確認請求ないし損害賠償請求がいずれも棄却された事例
(東京地判平22・6・29)
◎一 被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合における非常上告の可否(①事件)
二 被告人が原略式命令確定後に死亡している場合における非常上告の可否(②事件)
(①、②最一判平22・7・22)