判例時報 No.2091
平成22年12月11日 号 定価:円
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◆記事◆
最高裁刑事破棄判決等の実情(上)――平成二一年度……任介辰哉
現代型取引をめぐる裁判例(267)……升田純
◆最高裁判例要旨(平成二二年九月分)
◆速報◆(逆とじ)
一 国に対しアメリカ合衆国軍隊が使用する航空機の離着陸等の差止めを請求することができないとされた事例
二 アメリカ合衆国軍隊が管理する飛行場周辺の住民が同飛行場に離着陸する航空機による騒音等により被害を受けたとして請求した過去の損害賠償について、同飛行場にいわゆる民事特別法二条にいう設置又は管理の塀旭があるとして、その一部が認容された事例
三 航空機騒音に低周波音が含まれることにより周辺住民の精神的苦痛が増大させられているとされた事例
四 危険への接近の法理を適用すべきではない特段の事情があるとされた事例
五 航空機騒音に基づく損害賠償請求に係る慰謝料額が増額された事例
六 住宅防音工事による慰謝料額の減額の幅が縮小された事例
――普大間基地騒音公害訴訟控訴審判決
(福岡高那覇支判22・7・29)
◆判決録◆
◎自動車の所有者が脅迫されて当該自動車を他人に引き渡したためにこれを利用し得ないという損害を被ったことが、愛知県県税条例(昭和二五年愛知県条例第二四号)七二条所定の自動車税の減免要件である「天災その他特別の事情」による被害に当たるとはいえないとされた事例
(最三判平22・7・6)
◎本訴の提起が不法行為に当たることを理由とする反訴について、本訴に係る請求原因事実と相反することとなる本訴原告自らが行った事実を積極的に認定しながら、本訴の提起に係る不法行為の成立を否定した原審の判断に違法があるとされた事例
(最二判平22・7・9)
▽大手総合商社の従業員らが関与した投資詐欺事件(取引的不法行為)について、外形的職務行為該当性を否定するとともに、原告の重過失を認定し、使用者責任(民法七一五条)に基づく損害賠償請求が棄却された事例
(東京地判平22・1・27)
▽市管理の土地に放置された廃棄物に放火され、隣地の建物に延焼した事故につき、市に本件土地管理上の過失があるとして、被害者に対する国家賠償法上の損害賠償責任が認められた事例
(大阪地判平22・7・9)
▽一 塾講師が塾内において児童を殺害したとして、同塾講師を雇用していた塾の運営会社に対し、使用者責任に基づき損害賠償を求めた事案において、被用者と同額の賠償責任が認められた事例
二 年少女子の逸失利益の算定に当たり、基礎収入額を賃金センサスの男性労働者の全年齢平均賃金によるべきであるとの主張が排斥された事例
三 刑事事件の被害者遺族が、当該刑事事件への対応等につき、弁護士に支援を依頼した際の弁護士費用が、不法行為と相当因果関係ある損害と認められた事例
(京都地判平22 ・3 ・31)
○ 「使い捨て温熱身体ラップ」とする発明において、引周発明に意義や機能が本質的に異なる参考例を適用してヒートセルの配置がⅩ字塾であるという相違点に想到する動機付けがないとして、審決の進歩性の判断に誤りがあったとされた事例(知的財産高判21・12・22)○登録商標が商品名・製造者ではなく商品の形態を示すものとして使用されている場合であっても、当該商標が当該商品を他の商品から識別し、商品の出所を表示するための標識としても使用されているとして、商標法五〇条に基づく不使用取消審判請求を請求不成立とした審決が維持された事例
(知的財産高判平22・6・28)
◎A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において、A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例
(最一判平22・7・15)
▽一 自転車により荷物等を配送する運送業務を目的とする株式会社と自転車を使用して配送業務を行う旨の運送請負契約書を取り交わして同配送業務に従事したバイシクルメッセンジャーについて、労働基準法九条の「労働者」に該当しないとされた事例
二 右のバイシクルメッセンジャーの中から選ばれて右の会社が設置している自転車配送業務の営業所の所長となった者について、営業所長業務に関して労働基準法九条の「労働者」に該当するとされた事例
(東京地判平22・4・28)
◎保釈の請求に関する準抗告決定(原裁判取消し、保釈許可)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例
(最二決平22・7・2)