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判例時報 No.2090
             平成22年12月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判決録◆

行政

○被爆者の肝機能障害、脳梗塞について原爆症の認定申請が認められた事例

(東京高判平21・3・12)

民事

○「元金若しくは利息制限法所定の制限利息の支払を遅滞したときは当然に期限の利益を喪失する」旨の特約とともに「弁済金は約定利息、損害金、元金の順に充当する」旨の特約がなされ、支払予定額として各支払期日における約定元本の額と約定利息の額とが記載された償還表が交付されたという事実関係の下において、債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息を支払った場合には、弁済期日に約定元本と利息制限法所定の制限利息の合計額を支払ったとしても弁済金がまず約定利息に充当される結果約定元本の額に足りな-なって期限の利益を失うことになるとの誤解を生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったということはできない

(東京高判平22・6・30)

▽貸金業者から貸付債権の信託譲渡を受けた原告が、同債権の二重譲渡を受けて先に同債権を回収した被告に対し、不当利得の返還を請求した事案において、原告に対する信託譲渡の実態は譲渡担保であるなどとして同譲渡の効力を争った被告の主張が排斥された事例

(東京地判平22・7・27)

▽街宣車による学校法人に対する業務妨害が認められ、差止請求が認容された事例

(東京地判平22・6・25)

▽一 フランチャイズ契約締結勧誘時にフランチャイザーがフランチャイジーになろうとする者に対して示した売上予測が客観的な根拠や合理性に欠けるものであったとして、フランチャイザーの情報提供義務違反が認められた事例

二 フランチャイズ契約終了後にフランチャイザーがフランチャイズ契約上の競業禁止条項に基づきフランチャイジーに対して競業避止義務を負わせることが信義則に反し許されないとされた事例

(大阪地判平22・5・12)

▽一 プロジェクトファイナンスによるいわゆる紐付き融資債権の保全のために管理口座資金の欠損分の補完として預け入れられた預金を対象とする相殺が民事再生法九三条一項二号の相殺禁止に触れるとされた事例

二 同融資債権を被担保債権として補完的に設定された約束手形の譲渡担保契約が同法一二七条の三第一項一号の否認行為に該当するとされた事例

(大阪地判平22・3・15)

▽市立小学校の六年生の児童が組体操の練習中に四段ピラミッドから転落して負傷した場合、担任教員に職務上の過失があったとして、市の損害賠償責任が認められた事例

(名古屋地判平21・12・25)

▽派遣作業員が派遣先会社の工場で機械に挟まれ死亡した労災事故につき、派遣先会社と被害者の保護を怠った組長との間に実質的指揮監督関係があるとして、派遣先会社に使用者としての損害賠償責任が認められた事例

(大津地判平22・6・22)

▽県発注の工事を受注した建設業者の工事騒音等により、附近の酷農業者が飼育する牛等に損害を被ったとして、建設業者及び工事発注者である県に対する損害賠償請求が認容された事例

(福島地いわき支判平22・2・l7)

知的財産権

○特許法三六条六項二号を解釈するに当たって、特許請求の範囲の記載に、発明に係る機能、特性、解決課題ないし作用効果との関係での技術的意味が示されていることを求めることは許されないとされた事例

(知的財産高判平22・8・31)

○指定商品を「医療用腕環」等とする「ATHLETE LABEL」となる商標と、指定商品を「医療用機械器具」とする「ATHLETE」なる登録商標との類否(積極)

(知的財産高判平22・4・28)

商事

▽真の株主でない者を株主として行われた株主総会決議及び招集手続等を欠く取締役会の決議の各不存在が確認された事例

(東京地判平22・6・24)

労働

▽大麻使用を理由としてされた力士の解雇が無効な法律行為とはいえないとされた事例

(東京地判平22・4・19)

◎一 分譲マンションの各住戸にビラ等を投かんする目的で、同マンションの共用部分に立ち入った行為につき、刑法二二〇条前段の罪が成立するとされた事例

二 分譲マンションの各住戸に政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする冒的で、同マンションの共用部分に管理組合の意思に反して立ち入った行為をもって刑法二二〇条前段の罪に問うことが、憲法二一条一項に違反しないとされた事例

(最二判平21・1・30)

◎再審請求を棄却した原決定に審理不尽の違法があるとされた事例―-いわゆる名張毒ぶどう酒殺人事件第七次再審請求特別抗告審決定

(最三決平22・4・5)

◆最高裁判例要旨(平成二二年九月分)

◆判例評論◆

七二 一 市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法八九条、二〇条一項後段に違反するとされた事例(①事件)

二 市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことが憲法二〇条三項、八九条に違反しないとされた事例(②事件)

(①、②最大判平22・1・20) ・・・・・・野坂泰司

七三 仕入れた重油及び灯油を石油精製工場に持ち込み、同工場を設置する会社に委託してこれらを軽油にし、販売先に譲渡する取引を行っていた業者について、上記業者が当該軽油の所有権を原始取得していなかった疑いがあることのみを理由として、上記業者は地方税法(平成二一年法律第九号による改正前のもの)七〇〇条の四第一項五号にいう「軽油の製造」を行ったとはいえないから上記業者を同号に基づく油引取税の納税義務者であると解する余地はないとした原審の判断に違法があるとされた事例

(最三判平22・2・16) ・・・・・・手塚貴大

七四 保証債務の履行を請求することが権利の濫用に当たるとされた事例

(最二判平22・1・29) ・・・・・・鶴井俊吉

七五 私立中学校、高等学校の生徒募集の際に説明、宣伝された教育内容等の一部が変更され、実施されな-なったことが、生徒の親の期待、信頼を損なう違法なものとして不法行為となる場合

(最一判平21・12・10) ・・・・・・和田真一

七六 予備的に届け出られ、再生債権表に記載された請負代金債権等につき、双方末履行双務契約において履行が選択されたことを理由に、共益債権であると主張して提起された、その支払いを求める訴えが不適法なものになるとはいえないとされた事例

(東京地判平21・10・30) ・・・・・・齋藤善人

七七 自社年金における受給者減額の有効性―-早稲田大学(年金減額)事件控訴審判決

(東京高判平21・10・29) ・・・・・・嵩さやか

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