判例時報 No.2083
平成22年9月21日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆記事◆
最高裁民事破棄判決等の実情(下)――平成二一年度……田中一彦、鎌野真敬
現代型取引をめぐる裁判例(262)……升田純
海外刑法だより(304)イタリアの参審制度……森下忠
◆判例特報◆
一 外国人研修・技能実習制度における外国人研修生につき、労働基準法及び最低賃金法の適用が認められた事例
二 外国人研修制度の第二次受入れ機関が外国人研修生。・技能実習生に対して行った旅券・預金通帳等の強制管理、長時間の過酷な労働の強制等の一連の行為につき、第二次受入れ機関の外国人研修生・技能実習生に対する不法行為責任が認められた事例
三 外国人研修制度の第一次受入れ機関の第二次受入れ機関に対する監査・指導の懈怠につき、第一次受入れ機関の研修生・技能実習生に対する不法行為責任が認められた事例
――天草中国人研修・技能実習生事件第一審判決
(熊本地判平22・1・29)
◆判決録◆
◎政令指定都市である市の議会における定例会等の会議に出席した議員に対し費用弁償として日額一万円を支給する旨の当該市の条例の定めが、地方自治法(平成二〇年法律第六九号による改正前のもの)二〇三条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして違法、無効であるとはいえないとされた事例
(最三判平22・3・30)
◎固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が地方税法四三二条一項本文に基づく審査の申出及び同法四三四条一項に基づく取消訴訟等の手続を経ていない場合における国家賠償請求の許否
(最一判平22・6・3)
◎売買契約の目的物である土地の土壌に、上記売買契約締結後に法令に基づく規制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことが、民法五七〇条にいう瑕疵に当たらないとされた事例
(最三判平22・6・1)
〇銀行口座・証券顧客口座開設、生命保険契約の締結に他人の氏名を無断使用したことが人格的利益を侵害する不法行為に当たるとして三万円の慰謝料が認められた事例
(東京高判平22・4・7)
▽一 満期転換社債型新株予約権付社債の発行に当たって払込金の全額をスワップ契約の当初支払に充てること等を開示しなかった臨時報告書等が、「記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている」ものに当たるとされた事例
二 ほぼ連日株式の取引を繰り返していた株主の損害について、臨時報告書等の虚偽記載等による提出者の損害賠償責任が肯定された事例
三 虚偽記載等の公表日に民事再生手続開始を申し立てた株式会社の株式の価格の下落が、虚偽記載等と別個の事情により生じたものとは認められないとされた事例
四 単に有価証券報告書等の虚偽記載等の公表直前の市場価格が公表日前一か月間の市場価格の平均額若しくは当該有価証券の取得価格を下回り、あるいは当該有価証券の市場価格が継続的な値下りの傾向を示していたというだけでは、損害の額の全部又は一部が虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことの証明があるということはできないとされた事例
(東京地判平22・3・9)
▽耐震偽装のマンションの購入者が販売業者に対し、当該売買契約は要素の錯誤により無効であるとして求めた不当利得返還請求が認容された事例
(札幌地判平22・4・22)
▽競輪場施設を賃借して競輪事業を行っていた自治体が契約の終了を機に事業を廃止したことについて、信義則上貸主に通常生ずべき損害を賠償すべき責任があるとされた事例
(横浜地判平22・5・14)
▽医師が診療情報を患者の事前の同意なくして漏洩した不法行為について損害賠償請求が一部認容された事例
(さいたま地川越支判平22・3・4)
▽自転車運転中に転倒して鎖骨骨折等の傷害を負った者が、救急搬送された病院において血腫の増大により窒息死した場合、病院の医師に検査義務及び経過観察義務違反の過失があったとして病院側の損害賠償責任が認められた事例
(前橋地判平22・4・30)
○相違点に係る容易想到性の判断に関連する理由付けに関して、拒絶理由通知又は拒絶査定の理由付けを審決が付加変更しても、それが、当業者において、周知の事項であり、手続の公正を害さないと認められる事情が存する場合には、違法にはならないと判断された事例
(知的財産高判平22・1・28)
〇「BOUTIQUE 9」の文字を標準文字で表し、指定商品を第一四類「宝飾品、身飾品」、第一八類「ハンドバッグ」及び第二五類「帽子、その他の被服、履物」等とする商標は、商標法三条一項六号に該当する(知的財産高判平22・1・27)
▽一 株式会社の新設分割が詐害行為取消権あ対象となることが肯定された事例
二 新設分割株式会社が新設分割の対価として新設分割設立株式会社の全株式を取得したとしても当該新設分割が新設分割株式会社の債権者を害するものとされた事例
三 詐害行為となる新設分割の目的資産が可分であり、当該新設分割を詐害行為として取り消し得る範囲は債権者の被保全債権の額が限度となるものの、その原状回復の方法としては逸出した資産の現物返還に代えて価格賠償を請求することができるとされた事例
(東京地判平22・5・27)
◎花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について、雑踏警備に関し現場で警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び現場で警備員を統括する立場にあった警備会社支社長に業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例
――明石市花火大会歩道橋事故上告審決定(最一決平22・5・31)