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判例時報 No.2081
             平成22年9月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

 


◆判決録◆

行政

◎市が、職員の福利厚生のための事業を委託している社団法人に支払った補給金のうち退職した職員に対する退会給付金等の給付に充てられた部分につき、同法人に対し不当利得金の返還請求権を有していた場合において、同法人から退会給付金制度の廃止により不要となった補給金を清算する趣旨で支払われた金員を上記不当利得金の返還債務に充当する旨の市と同法人との間の合意により、上記不当利得金の返還請求権が消滅するとされた事例

(最一判平22・3・25)

○区議会議員が自ら提起した住民訴訟のために政務調査費を支出したことが違法ではないとされた事例

(東京高判平21・9・29)

民事

◎固有必要的共同訴訟において合一確定の要請に反する判決がされた場合と不利益変更禁止の原則

(最三判平22・3・16)

〇一 金先物取引において専門的知識を有しない委託者が損失を被った場合において、商

品取引員に取引手法等についての説明義務違反、助言義務違反、過当取引であることから損害賠償義務が認められた事例(過失相殺三割)

二 商品取引員から委託者に対する差損金請求が信義則違反として棄却された事例

(東京高判平22・3・24)

○死刑判決を受けた被告人の手紙の一部を引用する記事を週刊誌に掲載して公表・頒布した場合において当該被告人の宗教的人格権・名誉感情、プライバシー及び著作権の侵害を理由とする当該週刊誌の発行者に対する損害賠償請求に理由がないとされた事例

(名古屋高判平22・3・19)

▽精神に異常のない者を複数の親族が精神病院に入院させる等したことが共同不法行為に当たるとされた事例

(東京地判平22・4・23)

▽海上埋立工事に従事する作業船の漂流事故について作業船の船長の過失を認め、同工事の元請業者と同船長の直接の使用者である第三次下請業者の双方が使用者責任を負うとした上で、同事故の被害者に対して損害の賠償をした元請業者から第三次下請業者に対する求償権の行使につき、求償の前提となる元請業者と第三次下請業者との責任割合を三:七として、その限度で元請業者から第三次下請業者に対する求償が認められた事例

(大阪地判平21・10・21)

▽市立保育所の園児が園内の本棚に入り込み熱中症により死亡した事故につき、保育士の重過失による園児の動静把握義務違反があるとして、市の国家賠償責任が認められた事例

(さいたま地判平21・12・16)

▽車で逃走中の車上荒らしの容疑者を追跡中の警察官が拳銃を発砲し、助手席の容疑者を死亡させた事故につき、拳銃使用はやむを得ない適法行為であるとして、遺族の求めた国家

賠償請求が棄却された事例

(奈良地判平22・1・27)

▽母が前夫と婚姻解消後三〇〇日以内に出生した子が、後夫を父とした出生届を市が不受理処分としたことを違法として、国及び市に対して求めた国家賠償が棄却された事例

(岡山地判平22・1・14)

知的財産権

〇一 「ISO-Mount-Extender」の文字を上段に、「ISOマウントエクステンダー」の文字を下段にそれぞれ配して成る商標が国際標準化機構の著名な略称である「ISO」と類似するとされた事例

二 商標法四条一項六号の規定は、同号の規定に該当する商標については、同号に掲げる団体の権威を損ない、また、出所の混同を生ずるものとみなして、無関係の私人による商標登録を排斥するものである

(知的財産高判平21・5・28)

▽超過売上高が認められないとして、職務発明対価請求が棄却された事例

(東京地判平22・1・18)

▽発明の名称を「モータ」とする日本国特許権の侵害に基づく譲渡の申出の差止請求及び損害賠償請求につき、日本に国際裁判管轄を肯定することはできないとして、訴えが却下された事例

(大阪地判平21・11・26)

商事

▽学校法人に内紛が存在する状況下においてされた理事を解任するとの理事会決議が無効とされたが、無効確認の訴えの利益が否定された事例

(東京地判平22・1・18)

労働

▽飲食店従業員が急性心不全により死亡した事案につき、会社の損害賠償責任が認められたほか、会社の取締役に対し、長時間労働を前提とした勤務・給与体系をとっていたとして会社法四二九条一項に基づく責任が認められた事例

(京都地判平22・5・25)

刑事

◎一 街頭募金詐欺について包括一罪と解することができるとされた事例

二 包括一罪を構成する街頭募金詐欺について、その罪となるべき事実の特定に欠けるところはないとされた事例

(最二決平22・3・17)

◆最高裁判例要旨(平成二二年五・六月分)

判例評論

五四 公務員(農業委員会委員)が議員の解職請求代表者となることを禁止する地方自治法八五条一項に基づく同法施行令を無効とした事例

(最大判平21・11・18)……藤原淳一郎

五五 いわゆるタックス・へイブン対策税制である租税特別措置法六六条の六第一項による課税は、日星租税条約に反するか

(最一判平21・10 ・29)…… 駒宮史博

五六 債権回収等の委託を受けた弁護士が、その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするため当該債権を譲り受ける行為の私法上の効力

(最一決平21・8 ・12)……河野信夫

五七 リゾートマンションの管理規約における継続使用禁止規定及び継続使用者に対する管理費等高額負担規定の設定と建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段にいう「特別の影響を及ぼすべきとき」の解釈

(東京高判平21・9・24)…… 良永和隆

五八 A銀行が、県から要請を受け、県において再建資金の融資を計画していたE社に対し、上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に、E社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で、これをしなければE社が破綻、倒産する可能性が高く、上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で、E社に対して追加融資をした場合において、その追加融資の一部につき、これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例

(最二判平21・11・27)……松井智予

五九 全部取得条項付種類株式の取得における価格決定申立と個別株主通知

(東京高決平22・2 ・18)……弥永真生

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