判例時報 No.2054 〔判例評論 No.610〕
平成21年12月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
◆判例特報◆ 一 民事再生手続の担保権消滅許可制度における「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことができないもの」であることの意義 二 土地付き戸建分譲を主たる事業とする再生債務者所有の販売用土地について事業継続不可 […]
◆判例特報◆
一 民事再生手続の担保権消滅許可制度における「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことができないもの」であることの意義
二 土地付き戸建分譲を主たる事業とする再生債務者所有の販売用土地について事業継続不可欠要件を充たす財産といえるとされた事例
(東京高決平21・7・7)
◆ 判決録◆
行政
○住民監査請求に基づき特定の政党の政務調査費の使途に関する監査がされた際に当該政党から監査委員に任意提出された文書につき、監査委員事務局長がした非公開決定が、これを公開してもその後の監査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認めることはできないとして取り消された事例
(東京高判平20・7・17)
▽一 放送法三三条一項の規定に基づき総務大臣が日本放送協会(NHK)に対してした国際放送実施要請及び委託協会国際放送業務実施要請の処分性(肯定)
二 総務大臣がNHKに対してした放送法三三条一項に基づく国際放送実施要請及び委託協会国際放送業務実施要請の違法、無効確認を求める訴えが、原告適格又は確認の利益を欠き、不適法として却下された事例
三 総務大臣がNHKに対してした平成一九年法律第二二六号による改正前の放送法三三条一項に基づく国際放送実施命令及び委託協会国際放送業務実施命令並びに同改正後の放送法三三条一項に基づく国際放送実施要請及び委託協会国際放送業務実施要請により、原告らの知る権利が侵害され精神的損害を被ったなどとしてされた、国に対する国家賠償請求及びNHKに対する損害賠償請求が、いずれも棄却された事例
(大阪地判平21・3・31)
民事
◎動産の購入代金を立替払し立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保した者は、第三者の土地上に存在しその土地所有権の行使を妨害している当該動産について、その所有権が担保権の性質を有することを理由として撤去義務や不法行為責任を免れるか
(最三判平21・3・10)
○幼児が割りばしをのどに刺して死亡した事故について、診察した医師には、割りばし片に
よる頭蓋内損傷を予見することは不可能であったとして、その過失が否定された事例
(東京高判平21・4・15)
○産業用ロボット製作会社の製造部長が会社で就労中にくも膜下出血を発症し死亡した事故につき、その遺族の会社に対する安全配慮義務違反による損害賠償請求が認められた事例
(福岡高判平21・1・30)
▽定期建物賃貸借契約の終了に当たり、賃貸人が契約期間満了後に借地借家法三八条四項の通知をした場合でも、通知の日から六か月を経過した後は契約の終了を賃借人に対抗できるとされた事例
(東京地判平21・3・19)
▽飼育犬により飼猫を噛み殺された事故につき、加害犬の飼主に対する損害賠償(慰謝料)請求が認容された事例
(大阪地判平21・2・12)
▽ 一酸化炭素中毒による死亡事故についての損害賠償請求訴訟において、県警警察署長に対する、(1)本件事故に関する供述録取書、(2)死亡者の死体検案書の写、㈲事故現場の写真撮影報告書の文書提出命令の申立が認容された事例
(名古屋地決平20・11・17)
▽耐震強度偽装の構造計算書を看過した指定確認検査機関に対する損害賠償請求が、同機関に審査上の過失が認められないとして棄却された事例
(福岡地小倉支判平21・6・23)
知的財産権
○指定商品を「レーザー光照射型混入異物検査装置」とする「Laser Eye」なる商標は、指定商品に「牛乳殺菌機」を含む「レーザーアイ/LASER EYE」なる登録商標との関係で、商標法四条一項二号に該当する
(知的財産高判平21・6・25)
〇 「スポット溶接ロボット用制御装置」に係る実用新案権侵害を理由とする差止等請求につき、請求を棄却した原判決を維持し控訴を棄却したものの、原判決の構成要件解釈が変更
された事例
(大阪高判平21・3・19)
商事
◎店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に、保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには同保険契約に基づ-保険給付と調整する旨の条項がある場合における’同条項
にいう「他の保険契約」の意義
(最一判平21・6・4)
○交通事故による共済金請求事件について、事故の発生が否定され、共済金の請求が棄却された事例
(大阪高判平21・6・5)
労働
▽会社と業務委託契約を締結し、住宅設備機器の修理業務に従事するカスタマーエンジニア(CE)が労組法上の労働者と認められた事例
(東京地判平21・4・22)
最新判例批評
七一 市の臨時的職員に対する年二回の一時金の支給が条例の根拠を欠く逮法なものであり、いわゆる追認条例の規定によりさかのぼって適法なものとなったということもできないなどとして、市長に対し当該支給を決裁した当時の市長へ損害賠償の請求をすることが命じられた事例(大阪地判平20・1・30)……三浦大介
七二 特許権仮処分事件における秘密保持命令申立ての許否(最三決平21・1・27)……佐藤祐介
七三 発熱セメント体に係る技術情報につき、非公知性又は有用性が否定されて不正競争防止法二条六項の営業秘密にあたらないとされた事例――発熱セメント体営業秘密事件
(大阪地判平20・11・4)……青山紘
七四 「不正の目的」を認めることはできないとして、会社法八条に基づく商号の使用差止等の請求が斥けられた事例(知的財産高判19・6・13)……渋谷達紀
七五 一 責任能力判断の前提となる精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度について、精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合における、裁判所の判断の在り方
二 統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた行為について、正常な判断能力を備えていたとうかがわせる事情があるからといって、そのことのみによって被告人が心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例(最二判平20・4・25)…‥浅田和茂
七六 一 国土交通大臣の自動車製作者等に対する道路運送車両法(平成一四年法律第八九号による改正前のもの)六三条の四第一項に基づく報告要求が補助機関である国土交通省職員の専決により有効に行われたと認められた事例
二 道路運送車両法六三条の四第一項に基づく報告要求に対し自動車製作者の従業者が虚偽の報告を行ったとして、虚偽報告罪の成立が認められた事例(東京高判平20・7・15)……安井哲章
七七 公判前整理手続における捜査メモの証拠開示命令(最三決平20・6・25)……渡辺修