◆記事◆

特集

裁判員裁判における評議の進め方(下)――コミュニケーション論からの提言

より納得できる評議へ―――議論の統合の手法と今後の課題……西條美紀

現代型取引をめぐる裁判例(242)……升田純

海外刑法だより(294)志願囚､あれから六十年……森下忠

◆判例特報◆

公職選挙法一四条､別表第三の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性

(最大判平21・9・30)

◆判決録◆

行政

◎浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者に対してされた浄化槽清掃業不許可処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例

(最二判平21・6・5)

民事

〇特定の動産引渡請求権に基づき、当該動産のみの引渡を求める旨明示した上、債務者が第三債務者である銀行に対して有する貸金庫の内容物引渡請求権を差し押さえることの可否（積極）

（東京高判平21・4・30）

〇幼児同伴の顧客らの入店を容認しているパチンコ店でパチンコ玉搬送用の台車を使って遊んでいた幼児が店外に出て交通事故により死亡した場合において､パチンコ店に顧客のゲーム機使用に伴う付随的な安全配慮義務として監護を補助すべき義務に違反したとして損害賠償責任が認められた事例

(福岡高判平21・4・10)

▽一 放送法三二条及び日本放送協会放送受信規約九条は､自由な意思に基づいて本件各放送受信契約を締結したYらとの関係においては､憲法一九条に違反しないとされた事例

二　放送法三二条及び日本放送協会放送受信規約九条は､憲法二一条一項並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約一九条一項に違反しないとされた事例

三　放送法三二条及び日本放送協会放送受信規約九条は､憲法一三条後段に違反しないとされた事例

四　日本放送協会が負担する｢豊かで良い放送を行う義務｣は､放送受信契約の相手方個々人に対する義務ではないから､放送受信契約の相手方が負担する放送受信料支払義務とは牽連関係にないとされた事例

(東京地判平21・7・28)

▽肖像権に基づき出版物の事前差止めが認められた事例

(東京地決平21・8・13)

▽建物の賃貸人が､賃借人が賃料の支払を怠ったことを理由に建物の玄関の鍵を取り替えて賃借人の立入を禁止した行為は賃借人の居住権を侵害するとして､賃借人の賃貸人に対する不法行為に基づ-損害賠償請求が認容された事例

(大阪簡判平21・5・22)

知的財産権

○包括クロスライセンス契約と自己実施に基づく職務発明の対価の額が算定された事例――キヤノン職務発明事件控訴審判決

(知的財産高判平21・2・26)

商事

▽商品取引員の債務不履行又は不法行為に基づき委託者が取得した債権が商品取引所法三〇六条一項所定の債権に該当しないとされた事例

(東京地判平20・12・26)

労働

○国鉄の分割民営化においてJRに採用されるべき職員の名簿作成にあたり､国鉄が不当労働行為を行ったとして､慰謝料の請求が認容された事例――国労採用差別・鉄建公団訴訟控訴審判決

(東京高判平21・3・25)

刑事

▽一 二つの結論が異なる精神鑑定意見のうち一方を採用し、被告人は､本件犯行当時､妄想性障害にはり患していないなどとして､完全責任能力が認められた事例

二　近隣に居住する親族や隣人らを一挙に殺害した上自宅に放火することを企て､深夜､各居宅内等において､順次八名の被害者に対して骨すき包丁で突き刺すなどして七名を殺害し､一名に重傷を負わせ､更に母と同居していた自宅にガソリンをまくなどして放火してこれを全焼させた被告人に対して､死刑が言い渡された事例

(神戸地判平21・5・29)

◆最高裁判例要旨(平成二一年七月分)