◆記事◆

現代型取引をめぐる裁判例(239)……升田純

◆判決録◆

行政

▽旧軍人として戦病死した亡夫が無断でした協議離婚の届出により亡夫の戸籍から除算されていた妻の旧恩給法七二条一項の｢遺族｣としての恩給の受給権は、離婚無効の判決が確定して戸籍の訂正がされるまでの間､その権利の行使について法律上の障害があり､時効消滅しないとされた事例

(東京地判平21・1・16)

民事

○フランチャイズ契約終了後の競業避止義務違反行為などの差止めを求める仮処分命令の申立てについて保全の必要性を欠くとして却下された事例

(東京高決平20・9・17)

○初年度登録から約四カ月後のポルシェカレラ(購入価格一五九九万円余)につき､修理費(二二二万三二七三円)の約七割に相当する一五〇万円の評価損が認められた事例

(大阪高判平21・1・30)

▽一　互いに主従の関係にない二棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により一棟の建物となった場合には､民法二四四条の類推適用により､工事前にあった二棟の建物は付合し、各建物の所有者が､工事後にできた一棟の建物のうちの右各建物の価格の割合に応じた持分で、右一棟の建物を共有する

二　隣接する二棟の建物が､工事により接続されたことによって､民法二四四条の類推適用により､付合して各建物の所有者が共有する一棟の建物となったとされた事例

三　借地人が借地上に建てた建物とその借地の隣地上にある建物が､工事により接続されたことによって､付合して当該借地人と隣地上にある建物の所有者が共有する一棟の建物となった場合において､当該借地人が､当該工事を認識し認容していたことをもって､隣地上にある建物の所有者に対し､借地権の一郡を譲渡し､又は当該借地の一部を転貸したものといえるとされ､民法六二一条による土地賃貸借契約の解除が認められた事例

(東京地判平21・2・25)

▽携帯電話から接続サービスを利用してインターネットのブログになされた書込によって名誉や信用を穀損されたとする者から携帯電話会社に対する発信者情報開示請求が認められた事例

(東京地判平20・9・9)

知的財産権

〇一　印鑑の製造販売が特許権を侵害するものであると認定され､その製造販売業者から特許権者に対する特許権を侵害するとの告知・流布の不正競争防止法三条一項に基づく差止め､特許権者及び特許権の独占的通常実施権者に対するその告知・流布についての不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事例

二　独占的通常実施権者からの損害賠償請求が認められた事例(知的財産高判平21・3・11)

商事

○税理士が､相続税の期限後納付後に依頼を受けた更正の請求を怠り､依頼者に対して還付を受けられなかった税額に相当する額を損害賠償として支払った場合における､税理士職業賠償責任保険の契約約款に規定する免責条項(平成一六年七月の改訂後のもの)の適用の有無

(東京高判平21・1・29)

▽一 半期報告書及び有価証券報告書の重要な事項に虚偽記載があったとして損害賠償が認められた事例

二　旧証取法二1条の二第二項に基づく損害額の算定方法

(東京地判平21・6・18)

労働

▽コンピュータのソフトウェアの開発等を業とする会社の従業員につき雇用契約上の競業避止義務違反が認められた事例

(東京地判平21・1・19)

刑事

○被告人が､統合失調症にり患してこれによる.幻覚妄想状態にあり､その幻覚妄想の影響下で本件行為に及んだが､その一方で正常な判断能力を備えているように見える事情も多く存在した傷害致死事件について､上告審判決が､犯行当時､本件行為が統合失調症の激しい幻覚妄想状態の直接の影響下で行われたなどとした公判段階の二つの鑑定の意見を信用すべきであり､それを前提とすると､差戻前控訴審の心神耗弱の判断は是認できないとしたのに対して､差戻審において､更に医師作成の意見書を取り調べるなどした上､上告審判決が指摘した検討事項を検討し､両鑑定意見はその信用性に問題があるなどとして､心神耗弱の判断がされた事例

(東京高判平21・5・25)