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判例時報 No.2045〔判例評論 No.607〕
             平成21年9月1日 号 定価:円 (本体価格:円+10%税)

◆判例特報◆ 一 人格権に基づく原子力発電所の運転差止請求における、原子炉の運転により被控訴人(原告)ら周辺住民が許容限度を超える放射線を被ば-する具体的危険性の主張立証責任 二 原子力発電所の運転差止請求における原子炉 […]


◆判例特報◆

一 人格権に基づく原子力発電所の運転差止請求における、原子炉の運転により被控訴人(原告)ら周辺住民が許容限度を超える放射線を被ば-する具体的危険性の主張立証責任

二 原子力発電所の運転差止請求における原子炉施設の安全性の意義

三 志賀原子力発電所に増設された二号原子炉に安全性に欠ける点があり、これが運転されれば、平常運転時や地震等の異常事象時に環境中に放出される放射線、放射性物質によって被ばくすることにより被控訴人(原告)らの生命、身体、健康が現に侵害され、又は便害される具体的危険性があるものと認めるには足りないとして、本件原子炉の運転差止請求が棄却された事例

――志賀原発運転差止め民事訴訟控訴審判決(名古屋高金沢支判平21・3・18)

◆判決録◆

行政

▽渋谷区情報公開条例(平成元年条例第三九号)に基づいて公開請求された公文書について、当該文書が不存在であることを理由に請求に応じない旨の決定が違法であるとして取り消された事例

(東京地判平21・5・27)

▽柄の浦のある鞆地区住民による、広島県及び福山市から広島県知事に対する公有水面の埋立免許付与申請に対する埋立免許付与処分の仮の差止めを求めた申立てについて、景観利益を有する者に申立人適格を認めつつ、償うことのできない損害を避けるための緊急の必要性があるとはいえないとして、申立てが却下された事例

(広島地決平20・2・29)

民事

◎建物の区分所有等に関する法律七〇条と憲法二九条

(最一判平21・4・23)

◎公立小学校の教員が、女子数人を蹴るなどの悪ふざけをした二年生の男子を追い掛けて捕まえ、胸元をつかんで壁に押し当て大声で叱った行為が、国家賠償法上達法とはいえないとされた事例

(最三判平21・4・28)

○土地の所有者が、その前主である被相続人の遺言執行者の提起した登記簿上の所有名義人に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟の勝訴判決の確定後、移転登記手続を怠っている間に、当該登記名義人から根抵当権設定登記を受けた第三者が生じた場合において、所有者から当該根抵当権設定登記の抹消登記手続を求められ

た第三者の民法九四条二項の類推適用による保護を否定した第一審判決が控訴審において

是認された事例

(名古屋高判平21・2・19)

▽民事再生法一九〇条一項所定の破産手続開始決定がされた場合と再生計画によって変更された再生債権の遡及効(積極)

(東京地判20 ・10 ・30 )

▽交通事故で死亡した五七歳の小規模な会社代表者の逸失利益について、役員報酬年額八四〇万円全額を労務対価部分とし、七〇歳まで稼働可能として算定された事例

(札幌地判平21・2・26)

知的財産権

○特許権侵害訴訟において、相手方が文書提出命令に従わなかった場合に、民訴法二二四条三項により、文書提出命令申立人である特許権者の損害額に係る主張(販売台数)が真実であると認められた事例(知的財産高判平21・1・28)

商事

▽保険契約者の債務者が、火災保険契約の対象となった建物を放火し、保険契約者とその債

務者との共謀が争われたが、保険契約者と債務者との共謀が否定され、保険金請求が認容

された事例

(大阪地判平21・3・27)

◆最高裁判例要旨(平成二一年六月分)

最新判例批評

五一 フランチャイズ。チェーンの運営者の加盟店に対する報告義務(最二判20・7・4) ……野澤正充

五二 オークションにおける「場の提供者」の法的責任(名古屋地判20・3・28)……久保田隆

五三 一 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で、当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき、文書提出命令が申し立てられた場合において、上記文書が民訴法二二〇条四号ハ所定の文書に該当しないとされた事例

二 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で、当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析、評価等に関する情報が記載された文書につき、文書提出命令が申し立てられた場合において、上記情報は金融機関の職業の秘密に当たるが、これが開示されても民事再生手続中にある顧客が受ける不利益は小さく、金融機関の業務に対する影響も軽微と考え、本件訴訟は必ずしも軽微なものではなく、当該文書の証拠価値は高く、これに代わる中立的客観的な証拠の存在はうかがわれないとして保護に値する職業の秘密に該当しないとされた事例

三 事実審である抗告審が民訴法二二三条六項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ、これを閲読した上でした文書の記載内容の認定を法律書である許可抗告審において争うことの許否

(最三決平20・11・25)……松本博之

五四 受贈者が破産者から贈与を受けた新株引受権を行使して新株を取得した後これを第三者に売却している場合において、破産管財人の当該贈与行為に対する否認権行使の時点における当該新株の価額を基準とする価額賠償請求が認容された事例

(名古屋地判平19・11・30)……中西正

五五 株式会社日本長期信用銀行の平成一〇年三月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理につき、これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことが違法とはいえないとして、同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪の成立が否定された事例

――長銀粉飾決算事件上告審判決(最二判平20・7・18)……野村稔

五六 未成年後見人による横領と親族相盗例の準用(最一決平20・2・18)……内田幸隆

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