判例時報 No.2021
平成21年1月1日 号 定価:845円
(本体価格:768円+10%税)
◆判例特報◆ 一 放送事業者等から放送番組のための取材を受けた者において、取材担当者の言動等によって当該取材で得られた素材が一定の内容、方法により放送に使用されるものと期待し、信頼したことが、法的保護の対象となるか 二 […]
◆判例特報◆
一 放送事業者等から放送番組のための取材を受けた者において、取材担当者の言動等によって当該取材で得られた素材が一定の内容、方法により放送に使用されるものと期待し、信頼したことが、法的保護の対象となるか
二 放送番組を放送した放送事業者及び同番組の制作、取材に関与した業者が取材を受けた者の期待、信頼を侵害したことを理由とする不法行為責任を負わないとされた事例
――NHK番組期待権訴訟上告審判決(最一判平20・6・21)
◆判決録◆
行政
○市の非常勤の嘱託員の報酬について月「額二七万円又は日額一万二七〇〇円の範囲内で任命権者の定める月額又は日額と定めた条例の規定が給与条例主義に違反しないとされた事例
(大阪高判平19・10・31)
民事
◎Xの友人Aが、Ⅹの運転するXの父親B所有の自動車に同乗してバーに赴き、Xと飲酒をした後、寝込んでいるXを乗せて同自動車を運転し、追突事故を起こした場合において,Bが自賠法三条にいう運行供用者に当たるとされた事例
(最二判平20・9・l)
◎地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され、被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合における同申立てを却下する旨の判断と地方裁判所の裁量
(最二決平20・7・18)
▽大学が市から風力発電事業の調査事業等を受託し、調査を基に風力発電磯が設置された場合において、予測どおりの発電量が達成できなかったことにつき大学の債務不履行責任が肯定された事例
(東京地判平20・9・29)
▽建物売買契約における売買代金の支払日の延期を主な目的とした事務処理の委任を受けた弁護士の報酬について、当該弁護士の事務所に備え置かれた報酬基準に基づき、主な算定要素としての経済的利益の額を当該売買代金額である約五五億円と認めて三億円以上の報酬額が認定された事例(東京地判平20・5・30)
▽消費者金融会社の会社更生手続開始決定前に存した消費者の過払金返還請求権につき、更生会社が更生計画の認可決定により届出がないので失権したと主張することは信義則に反し許されないとされた事例
(大阪地判平20・8・27)
知的財産権
◎「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り、土人形等を指定商品とする登録商標と、いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標が類似しないとされた事例
(最二判平20・9・8)
〇チャールズ・チャップリンの制作した本件九作品が旧著作無法三条の規定の適用を受けるので著作権の存続期間はいまだ満了していないとされた事例
(知的財産高判平20・2・28)
労働
○海外出張が続いた労働者のくも膜下出血による死亡について業務起因性が認められた事例
(東京高判平20・5・22)
刑事
◎強盗致傷の非行事実を認定して少年を中等少年院送致とした家庭裁判所の決定が、抗告審で事実誤認を理由に取り消されて差し戻された場合において、検察官の申し出た証拠を取り調べずに、非行なしとして少年を保護処分に付さなかった受差戻審の決定に法令違反はないとされた事例
(最三決平20・7・11)
◆最高裁判例要旨平(成二〇年一〇月分)
最新判例批評
一 国籍法三条一項が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し後に父から認知された子につき、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍を認めていることと憲法一四条一項
(最大判平20・6・4)……市川正人
二 一 財産の管理を怠る事実が終わった場合における当該怠る事実を対象とする住民監査請求と監査請求期間の制限
二 財産の管理を怠る事実が終わった場合において当該怠る事実が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としこれを対象としてされた住民監査請求期間の制限
(最三判平19・4・24)……垣見隆禎
三 税関検査によるわいせつ表現物の輸入規制につき新たな判断が示され
た事例
(最三判平20・2・19)……南部篤
四 遺留分減殺請求権者と遺言執行者の当事者適格について
(①広島高決平19・9・21、②広島高決平19・9・27)……森田悦史
五 新たに創設された未知の利用方法に対する権利の帰属(東京地判平19・1・19)……山本隆司