判例時報 No.1996〔判例評論 No.591〕
平成20年5月1日 号 定価:円
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◆判例特報◆ 一 健康保険法六三条一項の「療養の給付」の意義 二 公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法四条)として、被保険者は、健康保険法上、保険者に対し、インターフェロン療法(保険診療)に活性化自己リンパ […]
◆判例特報◆
一 健康保険法六三条一項の「療養の給付」の意義
二 公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法四条)として、被保険者は、健康保険法上、保険者に対し、インターフェロン療法(保険診療)に活性化自己リンパ球移入療法(自由診療)を併用する混合診療を受けた場合であっても、右保険診療については、同法六三条一項の「療養の給付」を受ける権利を有することが確認された事例
――いわゆる混合診療事件第一審判決(東京地判平19・11・7)
◆判決◆
行政
○取消訴訟で被告を誤り補正をしないまま一審で却下判決がされた後、控訴審において被告の変更が認められた事例
(東京高決平19・11・29)
▽東京都世田谷区が実施する保育ママ制度を利用した幼児が保育ママの虐待により傷害を負った場合につき、世田谷区の国家賠償責任が認められた事例
(東京地判平19・11・27)
民事
◎一 賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物について、借地権設定者が、借地借家法二〇条二項、一九条三項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申し立てをすることの許否(①事件)
二 賃借権の冒的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物について、借地権設定者が、借地借家法一九条三項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることの許否(②事件)
(①最三決平19・12・4、②最三決平19・12・4)
▽消滅時効にかかった不法行為債権を自働債権とする相殺の抗弁が、前訴では同一債権について既判力を生ずる二個の裁判を求めるものであるとして却下されたが、後訴では民法五〇八条の適用により認められた事例(東京地判平18・12・4)
▽自筆遺言証書中の日付の訂正について、変更場所の指示及び変更した旨の附記、署名が欠けていても、同訂正は有効に行われたとされた事例
(東京地判平19・7・12)
▽差押禁止債権である厚生年金が受給者の郵便貯金口座に振り込まれた場合、右貯金債権は差押禁止債権とはならず、債権者はその貯金債権を差し押えることができるとされた事例
(大阪地判平19・9・20)
▽一 産業廃棄物を過剰保管している者がいわゆる「廃棄物処理法」に基づく撤去命令に応じないため、市が、当該廃棄物について適正な処理をする前提として、その実態調査をしたことが、事務管理の成立要件としての「他人のために事務を管理」した場合に該当するとされた事例
二 管理者が他人のために行った事務の管理に公共の利益が認められるが、当該事務の管理が当該他人の意思又は利益に反する場合と事務管理の成否(積極)
(名古屋地岡崎支判平20・1・17)
▽刑務所の医務官が、受刑者の健康診断の際に過失により肺がんに罹患していることを見落としたため治癒不能となったとして、受刑者の求めた国家賠償請求が認容された事例
(仙台地判平19・10・16)
▽不動産売買に基づく所有権移転登記手続につき売主より嘱託を受けた司法書士に売主の所有権移転登記意思の確認を怠った過失がある場合に、買主に対し不法行為に基づく損害賠償責任があるとされた事例
(さいたま地判平19・7・18)
▽土木業者の地方公共団体広域連合及び町に対する事業中止をめぐっての損失補償請求及び
損害賠償請求が棄却された事例
(津地判平19・8・30)
知的財産権
〇 「餃子の王将」(A商標)、「餃子の王将」(B商標)と「王将」等の引用各商標との類似性につき、具体的な取引の実情に照らせば、A商標については出所の混同を生じるおそれがないが、B商標については混同を生じるおそれがあるとして、いずれについての審決も取り消された事例
――餃子の王将事件知的財産高裁判決(知的財産高判平19・7・19)
▽旧著作権法下で製作、公表された映画の著作物について、旧著作権法の規定を適用し、監督の死後三八年が経過するまで保護期間は存続すると認定された事例(東京地判平19・9・14)
商事
▽ゴルフ場経営会社の会社分割により新設会社が営業を承継した場合に商法一七条の類推適用が認められた事例(東京地判平19・9・12)
労働
◎学校法人の理事会が、人事院勧告に準拠して給与規程を改定し、教職員の月例給を引き下げることを決定した上、一二月期の期末勤勉手当に,つき、改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の四月分から二月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた場合において、上記調整をする旨の決定がその効力を否定されることはないとされた事例
(最三判平19・12・18)
▽自動車製造会社の品質検査業務に従事していた労働者の心停止の発症及びこれに続く死亡が業務に起因するものであるとして、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付、遺族補償年金及び葬祭料を不支給とした労働基準監督署長の各処分が取り消された事例
(名古屋地判平19・11・30)
刑事
◎一 刑訴法三一六条の二六第一項の証拠開示命令の対象となる証拠は、検察官が現に保管している証拠に限られるか
二 取調警察官が犯罪捜査規範一三条に基づき作成した備忘録は、刑訴法三一六条の二六第一項の証拠開示命令の対象となり得るか
(最三決平19・12・25)
◆最高裁判例要旨(平成二〇年二月分)
最新判例批評
二六 郵便番号自動読取区分機類に関する入札談合の事案につき公正取引委員会が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成一七年法律第三五号による改正前のもの)五四条二項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するとしてした排除確保措置を命ずる審決が同法五七条一項及び同法五四条二項の規定に違反しないとされた事例
(最一判平19・4・19)……岸井大太郎
二七 外国語会話教室の受講契約の解除に伴う受講料の清算について定める約定が特定商取引に関する法律四九条二項三号に定める額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効であるとされた事例――いわゆる「NOVA解約清算金請求事件」
(最三判平19・4・3)……千葉恵美子
二八 カード基本契約に基づく借入金債務に対し過払金が発生した場合に、同契約が将来債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例
(最一判平19・6・7)……中村肇
二九 猟銃で隣人を殺傷し直後に自殺した事件につき、加害者に銃所持を許可した公安委員会及び警察官の行為に違法かつ過失があるとして、遺族等の県に対する国家賠償請求が認容された事例
(宇都宮地判平19・5・24) ……田井義信
三〇 粉飾決算を続け破産した商工協同組合に対する規制権限の不行使に基づく県の賠償責任(佐賀地判平19・6・2)……池村正道
三一 米国において米国法人らによって、日本国法人らに対して不法行為等に基づく損害賠償等を請求する訴えが提起された後に、米国の訴訟における被告である日本国法人らが、日本の裁判所に当該債務不存在確認の訴えを授起した場合において、日本の裁判所に国際裁判管轄が有るとされた事例
(東京地中間判平19・3・20)……山田恒久
三二 中国人母子から中国人父への扶養料請求を一部認めた事例
(東京高決平18・10・30)……道垣内正人
三三 CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる「MYUTA」という名称のサービスの提供が、音楽著作物の著作権者の複製権及び自動公衆送信権を侵害するとされた事例――MYUTA事件判決
(東京地判平19・5・25)……山神清和
三四 会計帳簿資料閲覧の拒絶事由- 会社と株主及びその完全親会社が「実質的に競争関係にある」の意義
(東京地判平19・9・20)……弥永真生