判例時報 No.1984 〔判例評論 No.587〕
平成20年1月1日 号 定価:円
(本体価格:円+10%税)
判例評論 「懐中電灯」を指定商品とする立体商標の出願につき、当該商標が商標法三条一項三号に該当し、同条二項に該当しないとして商標登録出願を拒絶すべきものとした審決が、商標法三条二項該当性の判断を誤ったものとして取り消され […]
判例評論
「懐中電灯」を指定商品とする立体商標の出願につき、当該商標が商標法三条一項三号に該当し、同条二項に該当しないとして商標登録出願を拒絶すべきものとした審決が、商標法三条二項該当性の判断を誤ったものとして取り消された事例
――マグライト立体商標事件判決(知的財産高判平19・6・27)
行政
▽日本人と婚姻して三人の子をもうけたタイ人女性(原告)が、二度にわたって薬物犯罪を起こし、実刑判決を受けて服役し、その服役中に退去強制令書発付処分を受けたため、この処分及びその前提となる裁決(出入国管理及び難民認定法四九条六項)はいずれも違法であるとしてその取消しを求めたところ、原告については同法二四条四号チ(薬物犯罪有罪判決)及び同号ロ(不法残留)の退去強制事由が存在するものの、婚姻期間が長く服役によっても婚姻関係の実体が失われていないこと、三人の子がいずれも未成熟子であることといった本判決の事実関係の下においては、原告に在留特別許可(同法五〇条一項四号)を与えずにされた右裁決及び退去強制令書発付処分はいずれも違法であるとされ、請求が認容された事例
(東京地判平19・8・28)
民事
◎一 貸金業者が利息制限法一条一項所定の制限を超える利息を受領したことにつき貸金業の規制等に関する法律四三条一項の適用が認められない場合と民法七〇四条の「悪意の受益者」
二 各回の返済金額について一定額の元利金の記載と共に別紙償還表記載のとおりとの記載のある借用証書の写しが借主に交付された場合において、当該償還表の交付がなければ貸金業の規制等に関する法律一七条一項に規定する書面の交付があったとはいえないとされた事例(①事件)
三 利息制限法一条一項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が、判例の正しい理解に反して貸金業の規制等に関する法律一八条一項に規定する書面の交付がなくても同法四三条一項の適用があるとの認識を有していたとしても、民法七〇四条の「悪意の受益者」であるとする推定を覆す特段の事情があるとはいえないとされた事例(②事件)
(①最二判平19・7・13、②最二判平19・7・13、③最三判平19・7・17)
◎建物の設計者、施工者又は工事監理者が、建築された建物の顎痕により生命、身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合(最二判平19・7・6)
〇控訴人が債権者代位権に基づきA社が被控訴人に対して有する債権(B債権)を代位行使して給付判決を得た上、被控訴人に対して強制執行に着手した後に、C社がA社に対する債務名義を得てB債権について差押転付命令を得て、転付命令が確定した場合に、被控訴人は転付命令によりB債権はC社に移転し、控訴人はB債権を喪失したとして請求異議の訴えを提起できるか(消極)(大阪高判平18・12・13)
▽一 マンション建替え決議が再建建物の敷地の特定のない点において区分所有法六二条二項一号の要件を満たさない重大な瑕疵があるとされた事例
二 周辺第三者所有地を含む敷地上に建物を再建する建替え決議が右第三者の再建建物における権利関係の明記のない点において同条項四号の要件を満たさない重大な瑕疵
があるとされた事例
三 一及び二の重大な畷庇のあるマンション建替え決議が無効とされた事例
(東京地判平19・1・24)
▽市立中学の生徒が同級生からいじめを受け統合失調症を発症したとして、加害生徒及びその親、さらに市及び県に対する損害賠償請求が認容された事例
(広島地判平19・5・24)
▽参議院議員の選挙に際し、選挙事務所を隠し撮りされ、選挙活動の自由を侵害されたとして立候補者及びその後輝会がテレビ局に対して求めた損害賠償請求が認容された事例
(新潟地長岡支判平19・2・7)
知的財産権
○特定の種類に限定された有機酸と錯化剤を組み合わせた洗浄処理剤の発明につき、構成物質についての着想を示したにすぎない者は発明者に当たらないとされた事例
(知的財産高判平18・7・19)
▽原画の著作権が期間満了により消滅した後もライセンシーに対して、いわゆる©表示などをライセンス商品に表示させることが、不正競争行為(誤認表示)あるいは不法行為にならないとされた事例(大阪地判平19・1・30)
商事
◎災害補償共済規約が「被共済者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたこと」を補償費の支払事由と定めている場合、補償費の支払を請求する者は、被共済者の傷害が同人の疾病を原因として生じたものではないことの主張立証責任を負うか
(最二判平19・12・13)
◎心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律三三条一項の申立てがあった場合に、医療の必要があり、対象行為を行った際の精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるようにすることが必要な対象者について、措置入院等の医療で足りるとして同法による医療を行わない旨の決定をすることの可否
(最二決平19・7・25)
〇一 政治団体の会長代理であった被告人が、会計責任者と共謀の上、ある業界団体から一億円の寄附を受けながら収支報告書に記載しなかったという政治資金規正法違反の事案に関し、会計責任者との共謀を否定して被告人に無罪が言い渡された事例(①事件)
二 ①事件について、会計責任者との共謀を否定した原判決には事実の誤認があるとして控訴審において破棄された事例(②事件)
(①東京地判平18・3・30、②東京高判平19・5・10)
◆最高裁判例要旨(平成一九年一〇月分)
最新判例批評
一 住基ネットの住民票コードの差止め等の請求は認められるか
(①大阪高判平18・11・30、②名古屋高金沢支判平18・12・11)……内野正幸
二 気管切開手術を受けてカニューレを装着している児童につき、東大和市に対し、保育園への入園を承諾することが義務付けられた事例
――保育園入園承諾に関する仮の義務付け申立事件決定・義務付け及び国家賠償請求事件判決
(①東京地決平18・1・25②東京地判平18・10・25)……神橋一彦
三 いわゆる二項道路につき、道路所有者は近隣地所有者に対し一般的に通行権の不存在確認等を請求することができるか(消極)
(東京地判平19・2・22)……岡本詔治
四 法律上の原因な-代替性のある物を利得した受益者が利得した物を第三者に売却処分した場合に負う不当利得返還義務の内容(最一判平19・3・8)……平田健治
五 国立病院・療養所の独立行政法人化に伴い新たに就業規則が制定された場合には就業規則の不利益変更法理が適用されない等として、従前と同一の労働条件に係る権利の確認等を求める原告らの請求が退けられた例――国立病院機構事件
(東京地判平18・12・27)……小鳥典明
六 職種限定された労働者に対する職種変更の正当性――東京海上日動火災保険事件第一審判決(東京地判平19・3・26)……三井正信